〈練習問題⑨〉直接言わない語り
追加問題①:幻想のダマ
作り物の歴史であり、でっち上げの情報であるこの記述を、熟知するまで勉強すること。そのあと、これを物語や情景の土台として活用しよう。情景を書きながら、この情報を肥料とするわけだ。細かくつぶして撒き散らし、会話やアクションの語りなど、どこでも使えそうなところになじませてみよう。そうすれば、ダマに見えることはない。ほのめかし、ふとした言及、暗示など好きな手段を用いて、そのことを語ってみよう。何か勉強していることを読者が気づかないように語るわけだ。妃の置かれている状況が読者に全部把握できるよう、じゅうぶん内容を入れ込むこと。
ここから題材を採ろう。(p198を参照してください)物語全体を執筆する必要はない。この情報を元にしつつ、この情報を読んだことのない読者でもちゃんと分かるくらい内容を詰め込んで、情景をひとつふたつ書くだけでいい。妃が囚われている塔が、開始地点としてはうってつけだ。好きな視点人物を選んで構わない。妃にも名前をつけること。
突然なんのこっちゃ? と思われるだろうけれど、この課題はル=グウィン先生が用意したファンタジーの設定を使い”二次創作”しなさい、というものなのだ。
二十年前に消息を絶ったハラス国王ペル、塔に幽閉された妃、それを先導したジュッサ卿、禁じられた魔術、迫る隣国からの脅威……などなど。
これらの設定を使って独自のストーリーを物語る。
ファンタジー作品をあまり読んでこなかったので引き出しがあまりに浅く、今回はかなりきつい課題で、使った経験のないような筋肉を酷使しまくった。
国の設定や歴史ががっつり提示を語るのに、現代の王と王妃の話を書くのがあまりに難しく、”全てを知る”過去の人物を無理矢理に登場させるパワープレイを存分に活かせる設定で書き上げた。過去の女王と現在の妃のミスリード狙いや破壊と再生の物語、開放のダブルミーニングなどの工夫を凝らした。
講評覚書
・地の文で語ってしまっている設定を、視点人物に寄せて語り直すなどの工夫が必要→ファンタジー筋力
・破壊と再生と塔のモチーフ使いが良い。ドラマチックで前後が読みたくなる。塔の破壊というインパクトある出来事が牽引力となり、過去パート、設定語りの読み易さの一助になっている。
・二世代の重なりからなるオチが良い。カタルシスがある。
・塔の破壊をより演出できるように二人の会話や、関係性の変化などの描写、異なる時代の対比や世代間のギャップなどの描写が欲しかった。視点を変えるなどの工夫もアリ。
・長いタイムラインを描くのに過去の人物、全てを知る人物を登場させるのは正しいアプローチ。設定語りのための人物ではない役回り、オチも良い。
・ファンタジー読みではないこその工夫が感じられて良い。
文舵挑戦者皆さまのこの課題が見たいです。
文舵9章アンソロジー
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