問四:潜入型の作者
潜入型の作者のPOVを用いて、同じ物語か新しい物語を綴ること。(文字数:700~2000文字)
問四では、全体を二〜三ページ(二〇〇〇文字ほどに)に引き延ばす必要が出てくるかもしれない。文脈を作って、引き延ばせるものを見つけ、そのあとを続けないといけなくなる場合もあるだろう。遠隔型の作者は最小限の量に抑えられても、潜入型の作者には、なかを動き回るだけの時間と空間が必要になってくる。
元の物語のままではその声に不向きである場合、感情面・道徳面でも入り込める語りたい物語を見つけることだ。事実に基づいた真実でなければならない、ということではない(事実なら、わざわざ自伝の形式から出た上で、仮構の様式である潜入型作者の声に入りこむことになってしまう)。また、自分の物語を用いて、くどくどと語れということでもない。真意としては、自分の惹かれるものについての物語であるべきだ、ということである。
これまで7章で書いてきた文章を「潜入型」の視点で描きなおす。潜入型視点は聞きなれない表現だと思うが、いわゆる神の視点・全知の視点のことになる。
誰の心情にも入り込めるし、誰も観測する者がいない事象の描写もすることができる。自由度が高いはずなのに個人的にはすごく苦戦した。登場人物の視点に入り込むのが書きやすいのだが、問3の傍観者の視点で人称は違えども、内面描写をかなりしたのでそれと差別化させたかった意図もある。合評会で出された潜入型の視点は登場人物に感情移入させたり、人物にフォーカスをあてる語りには不向きで、ファンタジーやSFのように背景や設定を披露する必要がある語りには向いている、という意見はその通りだと思った。
過去や背景にボリュームがさけない現代劇ので、今作では弓道のルーリングや登場人物のスタンス等をその代用としたため、全体的に前回までに比べ固い印象を与えてしまっていると思う。前半部分が特にその傾向にあるので、後半から徐々に感情面を押し出して、”エモーショナル”な味付けで締めた。
講評覚書
・良し悪しはともかく固くなった。人物から距離を取った描写。実況的な雰囲気。ニュートラルな語り。
・本来なら会話などで語られがちな、登場人物たちのコミュニティ内での立ち位置等を課題文で語るならこう描くのか、という新鮮味。
・キャラクターに寄った話から弓道に寄った話になったな、という印象。百合モノ→青春スポーツジャンルの中に百合がでてきた印象。
・視点の切り替えと場面の切り替えを同時にこなすのが面白い。設定が読みやすさを呼び込んでいる。
・『無人の世界に~』潜入型視点ならではの詩的な表現、自覚していない感情や無意識を言語化できる”エモ”さ。
・最後の二文、二人で同一の視点を描くのは関係性を描けている。
棚ぼた百合がいちばん嬉しい。