文体の舵をとっている13
〈練習問題⑨〉直接言わない語り
問二:赤の他人になりきる
400~1200文字の語りで、少なくとも二名の人物と何かしらの活動や出来事が関わってくるシーンをひとつ執筆すること。
視点人物はひとり、出来事の関係者となる人物で、使うのは一人称・三人称限定視点のどちらでも可。登場人物の思考と感覚をその人物自身の言葉で読者に伝えること。
視点人物は(実在・架空問わず)、自分の好みでない人物、意見の異なる人物、嫌悪する人物、自分とまったく異なる感覚の人物のいずれかであること。
状況は、隣人同士の口論、親戚の訪問、セルフレジで挙動不審な人物など――視点人物がその人らしい行動やその人らしい考えをしているのがわかるものであれば、何でもいい。
※「自分とまったく異なる感覚の人物」は異生物やアンドロイドのような非人間は禁止とします。
今回の課題も難しく、特に書く側からすると自分の中に異なる感覚の人物を降ろさなければならず、精神的な負荷もかなりのものになる。自分の好みではない人物、思想や感覚が異なる人物を描くということは、逆にその「好ましくなさ」や「異質さ」を表立たせることもできるがそれは控えてできるだけフラットなものを書くことに意義があるものとされている。なので単に嫌なやつや悪人などではなく、認知の歪みを如何に自然に書けるかが課題の肝となりそうという結論になった。
わたし自身も今回の下半身至上主義な軽薄キャラは、今まで創作したことも作中に登場させようと思ったこともない人物なので、書き始める前は唸りながらキーボードに向かっていたが、このタイプに近い後輩が職場にいたことがあり、彼を思い出しながら書いていくと思いのほか筆が進んだ。ごめんねUくん。
講評覚書
・書き出しから嫌な気持ちになった(誉め言葉)
・書こうと思えば書けるキャラクターだが、あまり書きたくないキャラクターを選ぶチャレンジ精神を評価したい。
・ヘイトコントロールの技術に近い。
・リアルな軽薄さ、こういう人間いるよな、という感情移入できる会話劇、二人の腐れ縁感、仲良さ感、BL感、ホモソーシャルの良くない部分を書けている。嫌悪はあれど憎めないキャラクターではある。
・青→二、BLレーベルならBLとして読める。
・『二瓶とは大学からの付き合いで~』からの説明パートは必要な情報ではあるものの、会話劇主体でこの文量だとやや説明的な悪目立ち感がある。細かく小出しにしたり、他の会話の中に散らせる情報を散らすなどの工夫。
ワシ、BLも書けたかもしれん