<練習問題⑦>視点(POV)
四〇〇〜七〇〇文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。何でも好きなものでいいが、〈複数の人物が何かをしている〉ことが必要だ。(複数というのは三人以上であり、四人以上だと便利である)。出来事は必ずしも大事でなくてよい(別にそうしても構わない)ただし、スーパーマーケットでカートがぶつかるだけにしても、机を囲んで家族の役割分担について口げんかが起こるにしても、ささいな街中のアクシデントにしても、何かしらが起こる必要がある。
今回のPOV用練習問題では、会話文をほとんど(あるいはまったく)使わないようにすること。登場人物が話していると、その会話でPOVが裏に隠れてしまい、練習問題のねらいである声の掘り下げができなくなってしまう。
問一:ふたつの声
①単独のPOVでその短い物語を語ること。視点人物は出来事の関係者で――老人、子ども、ネコ、何でもいい。三人称限定視点を用いよう。
②別の関係者ひとりのPOVで、その物語を語り直すこと。用いるのは再び、三人称限定視点だ。
この問ではひとつの出来事を複数のPOVで描くことが課題となっており、そのPOVの差異やシチュエーションとして書きやすいものを考えた結果、何らかの試合や競技の場面が相応しいと思った。
選手や当事者の視点、両陣営の控え選手や監督、指導者の視点、観客の視点、もしくはただの通りすがりやテレビで中継を見ている者など……。
そんな中で自分が唯一経験しており書けそうな競技として、中高大と弓道をやっていたので弓道の試合シーンを選んだ。
青春部活モノにしたい機運があったので『リズと青い鳥』風味に先輩後輩百合仕立てに。
講評覚書
・通じ合うという描写の中にも、関係性の中の差異や対比となる構造がしっかりしていて良かった。
・弓道を知らなくとも登場人物の視点に入り込んで読めるタームや身体の使い方などの描写にリアリティがあり、未知の人にも興味を持たせられている。
・互いの感情のやり取りに静かさと瑞々しさがあり、弓道というものが持つエモさに寄与している。
・三人称限定視点は、弓道のような『姿形』や『絵面』のイメージが大事なシチェーションにフィットしている。
おそらく百合。
『道』は百合。