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年末年始こそ「家族会議」のチャンス。介護の専門家でも、親の介護は難しい#04

今回こそは。

そう、密かな決意を胸に東京から福岡へ飛び立つ。

先日、数年ぶりに実家のある福岡に帰省しました。

目的は、父と「家族会議」をすること。

年末年始も迫る今回は、「家族会議」の話を書くことにします。

「老後の暮らし」について、避けられ続けた4年

コロナの影響も徐々に緩和されたこと、仕事の予定が上手く重なり、鳥取から東京を経由して、福岡へという工程が実現したんです。

父親が脳出血で倒れてから4年。これまで何度か、介護が必要になってからの生活について話をしてきたものの、電話ということもあってかいつもはぐらかされ、納得の行く話し合いは出来ていませんでした。

そんな中実現した、貴重な帰省。せっかく会って話すんだからと、今後の生活についてしっかり話し合っておきたいと思ったんです。

父親は早起きで、朝早くに家を出ていく。当然、寝る時間も早い。

対してわたしは、朝は比較的のんびり起きて、夜遅くに帰ってくる。帰っても仕事をする日も(笑)多いので、そもそも時間帯が合わず、じっくり電話で話す機会も正直あまり作れていませんでした。

さて今回はどうか。

暮らしに何を望むか

実は、帰省する前の週末。父の身近な友人が突然亡くなる、という不幸がありました。

介護業界では「ピンピンコロリ」なんて幻で、そんなこと滅多にないなんて言うんですが、とても身近に起こり驚きました。父もとてもショックだったようで、いつもより元気がないように見えました。

もとから、父と母の今後の生活について家族会議をする予定だったので、この出来事にも触れながら、「今日は逃げないでよね」と前置きをして、話しはじめました。

話をしたかったのは、

・受けたい医療と介護
・資産をどうするか

について。大きくはこの2つでした。

これまでも何度か話をしてきたけど、聞いてははぐらかされの繰り返し。

どちらかというと、隠れ人見知りなタイプ。本当は、他人が家に入ってくることも好きではないし、着替えや入浴の介助で自分の裸を見られるのも嫌なんだろうな、と思います。

案の定、「家にいたい」と頑な父でした。

「自宅なら、ヘルパーさんに来てもらうことになるね」というと、「そんな恥ずかしいことはようやらん」と。

「自分一人でお風呂に入れなくなったらどうするの?体は臭くなるやろうもん」と聞いても、もごもごとはっきりとした返事は返ってこない。

ああ、きっと母親を頼りにしているんだろうなと思い、「お母さんが全てやってくれるならタダかもしれないけど、どっちが先に弱るかわからないでしょ」なんて、畳み掛けてしまったり……(苦笑)

長年一緒の人生を歩んできた両親が、お互いをケアしながら生活する。持ちつ持たれつで素敵かもしれないけど、老々介護はそんなに甘くない。介護が長引けば心身の負担は積み重なっていきますし、そもそも、どちらが先に弱るかも分かりません。

「自宅で過ごすことになるのなら、いずれはヘルパーさんの力が必要になるよ。誰かが家に入ってくる時がいずれ訪れることを、自覚しておいてね」と伝えると、母は「分かったわ」、と理解してくれたような表情を浮かべてくれました。

一方の父は、反応が鈍い。母が父の介護に疲れたら、ショートステイというのがあってね、家族が休むことが出来るのよと紹介するものの、それも嫌らしい。

うーん、困った。

私たちきょうだいは遠くに住んでいるし、働いています。正直、介護の戦力としては当てにしてもらうことはできません。冷たいと感じるかもしれませんが、「わたしたちを当てにしないでね」と伝えました。

それから、見守りカメラの話をしました。「わたしの看護師さん」で訪れるご家庭でも見守りカメラをつけているところは多く、高齢の親御さんだけで生活している場合は、カメラの設置を提案することもあります。

こんな話をするのは、父と母が、必ずしも自分から助けてくれと電話できるわけじゃないということを知っているからなんです。

例えば足腰の機能が衰えた状態で、夜中に手すりを伝いながらトイレへ向かう際に転倒したとします。場合によっては自力で起き上がることができず、手の届く範囲に携帯電話が無ければ誰の助けを呼ぶこともできません。

今のように寒い季節では、そのまま凍死してしまうことも、決して珍しいことではないんです。急に倒れたり、体調が悪くなったとしても、すぐさま連絡ができなければ発見が遅くなり、取り返しがつかなくなることだってあるんです。

あるご家族は、娘さんたちがみんな離れて暮らし、高齢の夫婦2人だけで生活しています。ふたりとも認知症で、ときに徘徊をするんですが、カメラがあれば「今、外に出ていったな」、「さっき帰ってきた」と確認できるので、夫婦2人だけでも生活が出来るんです。と、娘さんが話してくれました。

そんな事例も紹介しながら、見守りカメラがあることに怖さや気味悪さを感じるかもしれないけど、「もしものときに手遅れになってしまうこともある」、どっちを取るかだよ。

そんな話をしました。

最後に、遺産について。古い感覚の人たちは、うちの父親も含めて、土地や家を長男に渡すと思っている人が多いです。長男に自動的に行くものだと思っています。でも今の法律では、自分の遺産の半分は配偶者、残りは子どもで分割という決まりなんです。

長男に渡したければ、公証役場へ行って遺言を作ったり、法務局で手続きをする必要があります。

……とまあ、盛り沢山な話をしてきたのですが、なかなか、思い描いたアジェンダ通りにはいかないもので(笑)

でも、これまでの「家族会議」は、いざ話を持ち出すと、電話を切ったり、急に席を立ったり、話を濁されてきたけど。

今回は流石に観念してくれたのか、身をよじらせながらも最後まで話を聞いてくれました。親と家族のこれからについて、しっかり顔を合わせて話をできたこと。これは大きな前進でした。

わたし自身は、介護サービスの事業を経営しているので、介護制度や老後の暮らしについてある程度想像ができます。情報を知っているから冷静でいられますが、それでも自分の親のこととなるとわたし自身もムカついた瞬間はたくさんあり、感情のコントロールは難しかったです。

だって、何度はぐらかされたことか(笑)

まず、話し合いの席に座ること。そのスタート地点にたどり着くまでがとても大変でした。

今回の家族会議を通して、父はわたしのことを、「冷たい子どもだな」と思ったかもしれません。これを読んでいるあなたも、「わたしたちを当てにしないでね」なんて無責任なことを言うんだと思ったかもしれません。(ぜひ、感想を聞かせてくれるとうれしいです)

でも、介護は突然やってきます。いつか、人生の終わりは必ず訪れます。元気なうちに話しておかないと、親がどんな老後の生活を望むか、家族がどうあると幸せでいられるかなんて、話すことも、考えることもできなくなってしまう。後々知らないではもう遅い。だから、後回しにしていいことなんて一つもないと思っています。

これから年末年始を迎え、久々に親、家族とゆっくりお正月を過ごす人も多いのではないでしょうか。

家族会議を切り出すタイミングは、年末年始のような家族が揃って話が出来るとき、芸能人の訃報に触れた際、法事のあとが切り出しやすいです。

そして、「これからの暮らし、どうしたい?」と医療や介護の希望を聞いてみることから家族会議をはじめてみてください。

「今」しか出来ない家族の話ができることを願って。
みなさま、よいお年を、お迎えくださいね。

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