介護の専門家でも、親の介護は難しい。(わたしの遠距離介護#01)

介護の専門家でも、親の介護は難しい。(遠距離介護実録#01)

「お父さんが倒れたの」

母から連絡が入った。

幸い一命は取り留めたものの、病状は、脳出血。

いつか、そろそろかとは思っていたけど。

いざ目の前にすると「突然」だと慌ててしまう。私にも「遠距離介護」が急にやってきた。


「ピンピンコロリたい」
なんて言っていたのに。

看護介護の専門家が家族に代わって病院受診や見守りを行う、『わたしの看護婦さん』を運営するかんべたかこです。

遠距離介護の家族を支えるサービスを提供していて、20代の頃は親戚の介護と子育てのダブルケアを経験しました。ふつうの人以上に「介護」に関わる私ですが、実の親を介護することははじめてです。しかも、遠距離介護。(私は鳥取、父は福岡)

「万が一、倒れたらどうするの?」

年齢を重ねるに連れて動きは鈍くなるけど、飲酒のペースは全く衰えない父。

そんな心配をよそに生粋の九州男児である父は、

「ピンピンコロリたい。そげんなったら死ぬったい。なんもせんでよか」

なんて豪語していた。まったく聞く耳を持たない。

呆れた私たち家族は、真剣に向き合ってなかった。

そんな父が突然、脳出血で倒れた。

まだ60代。若いし、今、死なれては困る。とにかく生きてほしい。

それだけで救命してもらった。

家族だから、
ずっと優しくはいられない。


脳出血の後遺症なのか、更に頑固になった。(もはや、粉落としばりの硬さ)

退院して日常生活に馴れてくると、医師から指示された血圧や体重チェックも怠けてくる。

「お酒はほんの気持ちだけ飲んでもいいですよ」

とお酒が大好きな父を気遣ってか飲酒を許可してくれた医師。その一言を何倍にも誇大解釈して、毎日晩酌しはじめる父。

遠距離だから、何かあったときにすぐ駆けつけることができない。それがもどかしいのに、なんで心配をかけるような行動をするんだろう。

悪びれる素振りもなく振る舞う父に、心配と苛立ちが入り混じり、気持ちが整理できない。

「え、なんで分かんないの?倒れたんだよ?」

電話をすれば、言いたくもないのについつい感情に任せてまくしたててしまう。

終いには、電話を途中でガチャ切りされたり、電話に出なくなる始末(笑)

もう、いったい何なんだ。

せっかく生命を取りとめた父のために、残りの人生は家族のためだけじゃなく、自分が満足するように生きて欲しいと思っているのに。

父に苛立つ気持ちもおさまらないけど、なにより、感情に任せて振る舞う自分が本当にイヤになる。


「家族だけ」で抱え込まない介護

介護相談に乗っていると、「自分の家族だから、ついつい感情がコントロールできなくなるんです」という話を聴くことがある。

うん、すっごくよくわかる。私もその一人だ。

もし、父の健康をサポートしてくれる人が私の他にいたら、きっとケンカもしないで済む。

得意ではないことを他のサポーターに任せて、自分の得意なことで親孝行する。

家族のこと、家の中のことだからと、自分一人だけ、家族内だけで抱え込んでしまう人は多くいます。

どうか、抱え込まないでほしい。

一人だけで、家族内だけで抱え込まない介護は、自分のため、親のためにもとても大切なことなんです。

いい家族関係を維持するために。

今あらためて、身を持って痛感しています。

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