バイエルン州地区選抜別対抗戦、苦い結果。
選抜されるということ
その日から随分と時間が経ったような気がします。
次男はドイツへの帰国後順調にサッカースケジュールと学校をこなし、昨年度と同様バイエルン州東地区代表の16人に名前を連ねることとなりました。
東地区は例年4地区の中でも強いと言われ、去年に続き今年もU13の年代は東バイエルンの優勝で終わったと聞きました。
それだけに、やはり注目される選手も多く存在したというわけでして、去年一年だけで複数の学年を跨いでですが東バイエルン選抜からアカデミーへの移籍を果たした選手の数は30人を超えたそうです。
去年までは選ばれるかな、どうかなという姿勢だった次男も、今年は周りの主力が抜けている中での選抜。自分の実力をアピールする立場へと変わってきます。
自分への期待もかなり高かったと思います。
地区対抗戦 当日
今年は昨年と違い、ミュンヘンでの開催では無いですし宿泊もなし。うちからは二時間ほど離れたとあるクラブのフィールドに4地区代表が集まって、1日で総当たり戦で試合をしました。
昨年はイベント感が非常に強かったのですが、今年はどちらかといえば見られている感が強い印象で、直接そのままバイエルン州選抜、そしてその先の州対抗戦を見越した大きな流れの中の通過点という印象でした。
朝9時からスタート、そして二時間以上かかる道のりということで早めに寝る準備をしていると東地区のコーディネーターから電話がかかってきました。
「大変言いにくいのだが、1人の少年がお母さんは仕事で車が出せず、足がなくて困っている。彼の住んでいるところから一番近いのはあなた方なのですが。。。」
その彼は今年から次男のいるチームへと移籍してきたT君、次男とも普通に仲はいいですしじゃあ一緒に連れて行きますよ、と快諾しました。
次男はいつも行きの車の中では爆睡が通常ですが、そのリズムが変わるのを少し懸念しましたが、嫌ですっていうわけにも行きません。翌日その彼を連れて会場へと向かいました。
一試合目、 vs南バイエルン選抜
試合時間は30分一回のみ、非常に短い中でのパフォーマンスが見られます。
対戦相手は南バイエルン、昨年の決勝の相手です。相手も同様にアカデミーに移籍した主力選手を欠くとはいえ気を抜けばやられる強敵です。
試合内容は開始後からチャンスを作り続ける東に対してカウンター一発の南という構図が続きましたが、東の思い切ったシュートが突き刺さり先制。
次男は15分から出場でしたが、南のカウンターを防ぎきれず相手に同点に追いつかれたところで試合終了となりました。
目立ったミスもなく、まずまずの出来。
二試合目、 vs北バイエルン選抜
北選抜にはチームメイトが複数選出されています。
次男のチームは選抜される選手が多いため、ふた地区にまたがって選手を振り分ける形になっているからなのですが、次男は早いうちから仲の良い友達と勝負するのを楽しみにしていました。
北はコーディネーターが今年は打倒東に情熱を燃やし、例年になく合同練習を何度も開催し、そのほとんどは今年次男の戦ったリーグで優勝したWに所属する選手で固めてきていました。
Wは元々アカデミーのリーグにいたのですが去年次男のいるリーグへと降格の形で入ってきたチーム、強豪です。
そこに次男のチームメイトが3人加わり、一回戦目の西バイエルンを圧倒して勢いづいていました。
次男は先発出場。
最初から思わぬ展開を迎えました。
次男のサイドには次男と一緒に車で連れてきたT君がサイドハーフ。次男は通常であればサイドハーフとコミュニケーションをとりながら相手をはめていってボールを奪いに行くのですが、T君はどうやらその辺の戦術がよくわかっていないらしく、詰めるべきところを詰めない、逆に行かなくていいところに突っ込んでしまう、を繰り返します。
次男も必死にコントロールしようとしますが、新しいサイドバックの選手とも噛み合わず、相手がスピードを持ってサイドから内に切り込んできたところへの対応が明らかに遅れ、ボランチが真ん中を抜かれる形で相手に早々に先制されてしまいました。
その後の試合展開も終始改善されず、絶妙に噛み合わない前からのプレス、余裕を持って中盤を支配できる相手に対して後手後手の守備しかできない厳しい状況の次男。真ん中を切り裂かれる、その後もついていけないという悪い印象だけが焼きつきます。次男は15分を待たずに交代になりました。
結果は北の勝利。実に見事なリベンジとなったのでした。
三試合目; vs西バイエルン選抜
西は4地区の中でも最弱として知られており、これ以前の試合でも全て黒星でした。親としてはここで次男に一発名誉挽回してもらい、次へのステップの切符を手にしてほしいと願うところです。
試合内容は、1−0で辛くも東が逃げ切る形となり、見事に勝利を収めました。
次男抜きですが。
前の試合の結果そうなったのか、次男、サイドバック、サイドハーフを含めた4人はベンチスタートでした。最初は座って見ていたのですが、15分を過ぎ、20分を過ぎてもコーチに呼ばれることはありません。
ピッチサイドで4人でボールを回したりダッシュをしてアップを繰り返していたのですが、30分を過ぎても結局次男がコーチに呼ばれることはありませんでした。
選抜のコーチはガッツのあるプレーを好み、前からどんどんプレスをかけて全員守備、全員攻撃のサッカーをします。
そんな中、試合中のスプリントが少ない代わりに常に動きながらスペースを探している次男のプレースタイルはあまり好みではない、とは次男本人の評。
それが原因とは思いませんが、北との試合で思い切り次男のスピードのなさを露呈され、守備が売りだった次男が守備で役立たずの烙印を一時的とはいえ押されてしまったのだと思います。
次男の代わりのボランチの選手たちは、技術的には大差はないかもしれませんが、抜かれたらファールしてでも飛び込んででもなんとか止める、という気迫が見られました。
正直ショックでした。
いつの間にか、カメラを構えていた手は汗まみれでした。本人はもっとショックだったと思います。
この大会にかけていた思いもあったであろうに、仲間たちの喜ぶ姿をピッチ脇で見つめる姿を見るのは辛いものがありました。
また次に向けて
北の優勝で幕を下ろした大会終了後、ボケーっと座っていた私の横に珍しく次男が自分から座ってきました。
「全然ダメだった」
とだけ告げて。
今までなんとなくテクニックがある、と言われて誤魔化していた大切な部分を痛烈に突きつけられた気がしました。シンプルに。
『走れないやつはいらない』
本当にいらないんだな、と痛感したと思います。
無口になる次男とは対照的に今年初めて地区選抜に呼ばれたことで陽気に次男に話しかけ続けるT君を乗せて帰りの二時間を走り、T君とバイバイしてから改めて話をしました。
この結果ではおそらく今年はバイエルン州選抜は絶望的。またアカデミーに行った友達との差は拡がったと感じているでしょう。
でもこれを機会に、本当にプロフェッショナルになりたいのなら自分の考え方を改めなければならない。自分の役割が終わったから、失点は他の誰かのせい、では勝負事は終わらない。
フィールドの中にはボールは一つしかない。自分の目の前で点を取られることが死ぬほど悔しくないやつはフィールドには残れない。
どれだけサッカーボールをこねるのがうまくても、試合には勝てない。チームを勝たせる選手にならなければ、今更どのチームも興味を持ってはくれない。
今回の失敗はとてもいい教訓だったと思います。
その日から、次男の練習に対する姿勢が変わり始めました。
そんな中、チームは夏休みを迎え、9月からは新しくリーグが始まります。
新しいチームの中では味方を引っ張る立場が期待される次男。
この一年、どこまで成長できるのか。
期待しながら見守りたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。
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