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日本人少年が東バイエルン州U13代表メンバーとして初めて公式に試合をした日。




1.三日間の大会


今回の会場はミュンヘン郊外です。

うちから車で二時間半ほどかかるということで、余裕を持って三時間前には出たのですがミュンヘン手前で大渋滞…。結局三時間以上かかってようやく目的地のスポーツシューレ(学校)に到着しました。

今回宿泊、トレーニング、練習と全てが行われるスポーツシューレは普段は学校として使われているそうです。中には宿泊施設はもちろん、グラウンド、体育館、プールなどスポーツ選手にとって最高の環境が整っていました。しかもどれもとても綺麗に整備されていて驚きです。

初日は夕方集合、まずは子供たちを講堂に集めてこのセレクションに入っていることの意味を説明されたといいます。子供達が終わると今度は保護者だけを集め、コーチの方々から年代別の地区選抜、そして来年からはそこからさらにドイツ年代別代表へと繋がっていく流れが丁寧に説明されました。私はもちろん全ては分かりませんので、携帯の同時通訳をフル活用しながらなんとなくの理解です。

今回の大会は年代別の州代表を選ぶ第一歩であり、初日に軽く汗を流したら2日目の朝から一回戦、そして3日目に3位決定戦と決勝が行われます。私は結局近場のホテルを予約して2泊しながら観戦することにしました。


小雨模様


2.一回戦 西vs南、東vs北バイエルン代表


さて一晩あけて次の日の朝。

夏だと思って油断していました、外は雨、風も強いです。こちらは日が出ると強烈に暑くなるのですが、一旦日が隠れると急激に気温が下がります。どうせ夏と思って薄いジャケット一枚以外はTシャツしか持ってきていませんでした。仕方なくジャケットを羽織ってグラウンドへ向かいます。

一回戦の組み合わせは親には知らされていませんでしたので、開始時間の9時に現場に向かうと用意していたのは次男のいる東バイエルンではなく、西バイエルンと南バイエルン代表でした。

西は知り合いが何人かいるので噂は聞いていました。活動が少なく、たまにあったとしてもトレーニングの内容も評判はあまり良くありませんでした。試合の結果は、スコアこそ3−0でしたが内容はそれ以上に南が圧倒する形で終わりました。特に両サイドハーフの爆速ぶりや、ボランチの選手の落ち着いたボール捌きは側から見ていても強烈に印象に残りました。


続いてすぐに我が息子の所属する東バイエルン対北バイエルン代表の試合です。

東バイエルンは白のユニフォーム

息子は6番の背番号を背負って先発出場、ポジションは守備的ミッドフィルダーです。私はコーチから頼まれていますので、いそいそと且つ堂々とフィールドを見渡せる小高い丘に上がって撮影の準備です。

次男のチームはもちろん、北バイエルン代表にも次男が来季から所属するチームの子が何人かいるということでした。そのチームから地区選抜が多く選ばれているため、一つの地区に偏り過ぎないよう配分しているとコーチが話していたことを思い出します。

蓋を開けてみれば東は強かったです。終始DF時には強く早いプレスでボールを奪い、攻撃にはサイドから果敢に駆け上がってくる攻撃陣。30分三本の一本目ですでに3−0になり、次男も攻守のバランスをうまく取っているように見えました。

二本目、さらに攻撃陣を入れ替えて追加点を狙いますが相手ももちろんみすみすやられるわけもなく、決定的チャンスを何度も作る東に対して必死に守り、得点差はそのまま三本目に入りました。

次男の役割はここまで。三本目は真ん中を入れ替えて挑みます。そのせい、と言うわけではないでしょうが東は三本目になってから若干攻め急ぎ、真ん中に空いたスペースをうまく使われてカウンターを受け、北に意地の一点を入れられてしまいました。

それでも結果は堂々の3−1勝利、無事明日の決勝進出です。

そばで応援していた親たちもほっと胸を撫で下ろし、宿舎へ戻る子供たちについて各々歩いて帰って行きました。私もてくてく歩いて帰っていたのですが、選抜のコーディネーターの方に呼び止められます。

「今日の東対北の試合の映像をシェアしてもらえますか?できれば今日中に。コーチに分析の材料として使わせたいのですが。」

一も二もなく了承するとさっさと車に乗ってホテルに帰り、ビデオをパソコンにダウンロード。持っていたUSBにデータをコピーするとまた昼食後から始まる合同練習に間に合うよう会場へ引き返しました。子供達のためならエンヤコラ、です。


3.合同練習・兼セレクション


全員をシャッフル


午後3時から行われたのは合同練習会。16名✖️4地区、計64名をシャッフルして8グループに分け、フィールドの中に作られた四つのエリアにそれぞれが分かれて一対一、二対二、などエリアごとに異なる練習を行います。もちろん各エリアにメモを持ったコーチが数名立っていて評価されています。

後で聞いた話ですが、試合で消耗しきった次男はこの練習会が本当にキツかったそうです。できればやめたかったと。炎天下、練習は延々続きますしどこに行っても対戦形式ですから休める余地はほぼありません。

最後のグループで四対四の対戦をして、ようやく終わりました。流石に練習の後次男は右のお尻を痛めたらしく、ピョコピョコ足を引きずって帰りますし、東の主戦力、次男の友達D君も古傷の膝をやって途中から練習に参加できずピッチ外で悲しそうに座っていました。

さてこれは明日の決勝は大丈夫かいな。と心配になります。D君不在は明らかに攻撃も守備も戦力ダウンが著しく、次男もケツ痛いと明日走れないなあなどと考えながら、その日は終わりました。


4.決勝戦


キックオフ


朝起きたら、また小雨でした。

念の為持ってきたTシャツを2枚重ねてからペラペラのジャケットを着込んで出発です。

この日は3位決定戦が先にあるとわかっていましたので、ちょうど試合が始まる頃に現場に到着、観戦しました。

西バイエルン対北バイエルンの試合は3−0で北の勝利で幕を閉じました。

さて続いてすぐに東バイエルン対南バイエルンの決勝が始まります。小雨のしきりに降り注ぐ中、気合の入った表情の次男は先発出場です。そして前日の練習で膝を痛めていたD君は、膝にテーピングはしているものの次男と同じフィールドに元気に立っていました。一安心。

アップの段階から東の子供たちが
『南のサイドハーフはめちゃくちゃ足が速いからこうこうしよう』
と個人個人で話し合っている様が印象的です。親達、前日の試合の内容から南が有利と言う声が多く、私も緊張してキックオフを待ちました。

一本目、南の早いパス回し、サイド攻撃を封じるため東はとにかく前からプレスに行きます。それも一人が行くと次、またその次と連続で。そのせいもあって南は上手く自分たちのペースに持ち込めません。

東が作ったチャンスを決め損ねたと思ったらあっという間に南のカウンターでゴールキーパーと一対一に。スーパーセーブで防ぎます。そんな感じで一進一退が続く中、思わぬ形で先制点が入ります。

東のチャンス、ストライカーの放ったシュートをハンブルしたキーパーが続いて詰めてきた東のサイドハーフを倒してしまってPK獲得です。それを落ち着いて決めて東が先行します。

次男も積極的にコーチングで周りに指示を出しつつボールに絡みます。一本目が終わり二本目に入ると次男ともう1人のボランチは下がり、メンバーを入れ替えて更なる追加点を狙います。

二本目には東のサイドハーフが速さと上手さを見せ、サイドをえぐるとセンタリング。それを流し込んで二点目です。しかし徐々にハイプレスの疲れが出てくると南のチャンスが増えてきます。やはりダイレクトパスでの繋ぎやスピードあるサイド攻撃は脅威です。

三本目には次男また出るかなと思って期待したのですが、コーチはメンバーそのままでいく判断。幾度となくピンチを迎えますが、DF陣も集中して守り抜き、何よりゴールキーパーが素晴らしかったです。ゴール級のピンチを幾度も防ぎます。結局、終了間際の追加点も合わせて3−0の完全勝利で東バイエルン代表は見事優勝の瞬間を迎えました。

子供達は歓喜に包まれますが、すぐにコーチも入って全員で大きな円陣を作ると長い時間をかけて静かに喜びを分かち合っていました。その円陣に小柄な次男が入っている姿を見れただけでも来た甲斐があったと言うものです。


試合終了

5.次のステップへ

全ての日程が終了したのち、コーディネーターが子供たちを全員集めて最後の挨拶をしたそうです。

まずは、ここまで来れたこと、自分たちの達成したことを誇りに思うこと。そしてさらに何人かは次のステップへ進むと言うこと。7月にはこの日に選ばれた64人の中から半分ほどを招集してバイエルン州U13代表候補の選抜キャンプを始めること。選ばれた子は決してそのことに満足せず、自分の位置を狙ってライバルたちがさらに厳しい練習を乗り越えてくることを肝に銘じて引き続き頑張ること。などが伝えられました。

次男がここからさらに上のステップに上がれるのか、それは本当に分かりません。素人目には次男の試合でのプレー内容は良かったと思うのですが、本人はもっと攻撃に関われれば良かったと渋い顔です。

いづれにせよ、外国人である次男を選んでくださってさらにサポートまでしてくださるバイエルンサッカー協会には感謝です。お陰様で他では得ることのできない貴重な体験、たくさんの同じ夢を持った友人を得ることができています。

この先に進めなくてもまた目に見える新しい目標として来年頑張れますし、もしも選ばれたのならさらに高い場所からまた違った景色が見えることでしょう。どう転んでも学ぶことしかないこの環境に居れることは次男にとって本当に幸運だったと言うしかありません。

ではみなさま、また次の機会に。。

読んでいただいてありがとうございました。



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