家族的であって家族じゃない
「副店長、お久しぶりです。」
顔を上げると、見慣れた顔が。しかしちょっと痩せただろうか…
「◯山さん!お久しぶりです。」
◯山さんは惣菜コーナーで働いているパートさんだ。ただ先月乳がんが発見され、手術をするということで休職していた。
「今日はどうしたんですか?」
「ええ、ちょっと…今日は店長いますか?」
◯山さんの復帰は来月からと聞いていた。その打ち合わせだろうか…。
私が他の仕事をしている内に、◯山さんは店長と話を済ませ、既に帰っていた。
「副店長、ちょっと」
今度は店長に呼び止められた。
「◯山さんなんだが、手術は成功した。しかしがんがあちこちに転移していたらしい。最低でもあと半年は復帰できない。」
「えっ⁈半年ですか…?」
「会社の規則で休職は半年しか取れない。だから一旦退職という形をとってもらった。復帰できるようになったらまた採用するという形だ。」
「そうですか…」
「まあ、惣菜は××さんが入ったし、なんとかなるよ」
「…」
◯山さんはわかっているだろうか?仮に半年で治療が終わり、復帰できたとしても前と同じポジションで復帰できる可能性はほとんどない。
うちの店は年中無休だ。パートさんが一人抜けたぐらいでは休めない。◯山さんのポジションには早速新しい人を採用し、先々週から働いている。
会社は家族的であるかもしれないが家族ではない。会社は◯山さんにずっと寄り添うことはできない。
うちの店に復帰するにしてもしないにしても、無事治療が成功することを祈るのみだ。