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これまでの色、これからの色
「大槌町がなくしたもの、それは色と音です」
東日本大震災で町が津波で飲みこまれた大槌町の出身の人が、そうつぶやきました。
それまであった青い海、色とりどりの屋根、店の看板ーすべてが失われた土地に見えるのは赤茶けた土と灰色のがれき。
人の声や鳥のさえずりも、がれきを撤去するため動き回るトラックの音だけ。
たしかに2011年5月に、大槌町の町を見渡せる高台に登ってみた風景は、色と音が津波と共にどこかに持っていかれたような。そんな感覚に陥りました。
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先週末(2023年8月26~27日)、久しぶりに岩手県に行きました。
新型コロナウイルス感染症もあり、3年間、遠慮してました。
今回、岩手県陸前高田市にある伊東文具店さんに、本を探しに行きました。
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書店の一角に置いてあった万年筆用のインク「高田のあわい」を見つけました。
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私は家で万年筆を使っています。
黒いインクではなく、青いインクを使っているので、迷わず購入しました。
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岩手県沿岸部の人が感じた「色がなくなった」という世界に生まれた、陸前高田市の色がここにありました。
そして耳をすませば伊東文具店さんが入ったショッピングセンターには学生たちの笑い声が聞こえます。
在りし日と同じではないけど、いまここに、これから生まれた色と音が、この町をつくっていく。
このまちの、いままでの色。
その記憶から生まれた色。
その色で何が生み出されていくのだろう。
これからも、その色を、その時と時のあわいを、一緒に見させてください。
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伊東文具店オリジナルインク「高田のあわい」
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