吉本隆明『源実朝』レビュー
吉本隆明『源実朝』、ちくま日本詩人選再々読、読了。前半部は進行中の大河ドラマ参考文献として興味深く、吾妻鑑と愚管抄との訳文並列に学ぶこと多し。中盤からは「共同幻想論』の筆者にして現代詩を牽引したひとりとしての真骨頂発露の実朝作品論評で読み応え十分。恩師鈴木日出男の「心物対応構造」を思い返しつつ、さまざまに刺激されながら頁を繰った。
実朝がどれほど畠山重忠や和田義盛を深く想っていたか、また、彼らの惨劇をじっと凝視していた北条泰時の思想が「御成敗式目」にどう反映されていたかにも言及され、これまでとは大きく異なる読後感を得たことだった。