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納得の前史:映画『ライオン・キング:ムファサ』レビュー

 ディズニーの新作『ライオン・キング:ムファサ』をIMAXで鑑賞。舞台版『ライオン・キング』ファンとしては見逃すわけにはいかない。

 前作のリメイク版『ライオン・キング』(2019年)同様、実写と銘打たれたフルCGのアニメーションではあるが、映画ならでは造り込みの素晴らしさにディズニーの底力を体感させられる。IMAXの大画面ならではの圧倒感がストーリーのスピード感と相まって120分があっという間である。
 お馴染みのシンデレラ城オープニングクレジット直後、この9月に93歳で亡くなったジェームズ・アール・ジョーンズへの献辞が大写しされ胸にささる。そうだ、前作ではムファサだったと思い返す間もなく本編開始。狂言回し役のラフィキがシンバとナラの子、キアラにムファサとスカーとの関係の始まりを語る形で物語が進行する。観る側は、二頭が実の兄弟ではなく、ある出会いあって前作に繋がっていたことを知る。聞き役の同伴は、ティモンとプンヴァ。随所に聴き慣れたメロディラインに重なる楽曲が散りばめられ、鑑賞は吹き替え版だったが、ここのところミュージカルでの活躍も目立つ尾上右近のムファサと、のちにスカーとなるタカ役の松田元太の健闘に心浮き立つ。敵役のホワイトライオン、キロスに渡辺謙という重厚な布陣。全容の基本は、世界共通の所謂「貴種流離譚」で、無理筋なく納得の展開である。前作と同じく観ながらオリジナルの音声でも観たくなる。
 聖夜のせいか、映画館の客席まばらだったのが残念。ディズニー、劇団四季ファンばかりでなく、家族で楽しめる必見の一本と、推奨したい。

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