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元彼の弟
彼(薄皮つぶあんぱん)と別れて3日が過ぎた。
別れた原因は私。ダイエットするからって一方的に振るなんて、ほんと、勝手な女。
罪悪感と未練を振り切るように仕事に没頭して、気づけばもう22時。帰らなきゃ。
帰り道、洗剤を切らしていることを思い出して、0時まで営業してるドラッグストアに立寄った。私の住んでいる街は田舎で、ほとんどのお店が21時には閉まるから、すっかりこのドラッグストアの常連だ。
いつもの洗剤と、ついでにコーヒーも買おう。このお店、コーヒーだけなぜか飲料のところじゃなくてパン売り場のすぐ傍にあるのよね。変なの。
一番安いコーヒーを手にして、パン売り場の前を通る。レジまで遠回り。やっぱり彼(薄皮つぶあんぱん)のことが、まだ気になる。自分から振ったくせに。
彼(薄皮つぶあんぱん)は売り場の普通の棚じゃなくて、山積みにされたトレーの中にいた。そうだよね。貴方って人気者だから。
遠くから彼を眺めるだけで、レジに向かおうとした。今更、彼に合わせる顔なんてない。早く帰って寝よう。
(…でも彼、あんなに背が高かったけ?)
ちょっとした違和感に気づいて、彼の方を振り返った。やっぱり何かおかしい。気になって、少し近づいてみた。それが間違いだった。
やっぱり彼(薄皮つぶあんぱん)じゃない。でも、そっくり。
呆気にとられて眺めていたら、元彼に瓜二つの男が(私の脳内に)話しかけてきた。
???「へぇ〜、あんたが兄貴の元カノ?かわいいじゃん」
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(…弟!?)
「ね、おねーさん。俺、どう?」
「は!?」
「俺、兄貴と比べてどう?って聞いてんの」
「ちょ…何言ってんの!あんたみたいなガキが一番嫌い!」
何が起きたのか分からなくて、混乱してしまって、その先のやり取りは覚えていない。
でも、確かなことがひとつ。
元彼の弟(しっとり柔らかつぶあんぱん)が、今、私の部屋にいる。棚に座ってくつろいでる。
何してんだろ私。最低。
お願い。今夜、何も(キレ食い)起きませんように。