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【前編】Life Quest~釜石で〇〇する人たちの多様な生き方~第2歩目「グローカル教育」×細江 絵梨
本記事は、岩手県釜石市で人生を探求し生き方を自分でつくることに挑戦し、様々な活動に取り組むゲストの生き方に迫っていくイベント型オンライン番組『Life Quest』の内容のアーカイブ記事になります。
今回は、第2歩目「グローカル教育」に取り組む細江絵梨さんをご紹介します。実際の放送については、こちらよりご覧ください。
戸塚)本日のテーマは「グローカル教育」です。前半では取り組み内容や、細江さんの視点からみたグローカル教育についてお話ししていただきます。
ゲストプロフィール:細江絵梨/東京都出身。
中学生の頃から国際協力や社会福祉に興味を持ちボランティア活動を行なう。大学時代は途上国・NGOへ学生インターンを送り出す学生インターンを送り出す団体で活動。卒業後、化粧品メーカーで働かれたのち、東日本大震災を契機に2012年に岩手県に移住。2017年からは釜石ローカルベンチャー(起業型地域興し協力隊)として地域内外をつなぐコーディネーターとして活動。
グローカル教育とは?
戸塚)まずグローカルって何でしょうか?
細江)グローバルとローカルを組み合わせた造語です。インターネットなどに載っている定義を参考にしてみると、「地球規模の視野で考え、地域視点で行動し、世界規模の視点と地域性を組み合わせる」ということのようです。
海外の魅力と地域の魅力を組み合わせながら、「橋渡し」をしながら地域にどんどん活かしていきましょうということだと理解しています。
【事例①:根浜海岸海あそびイベント 開始】
細江)では、私が釜石で何をやってきたのかということですが、活動のベースとしていたのが根浜海岸という地域です。釜石の中でも北側に位置していて、大槌との境目にあります。2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた地域です。
震災前は、岩手県で2番目に大きい海水浴場として知られていました。夏にはたくさんの人が来てにぎわっていましたが、震災後、 砂も流されてしまいました。その後、砂浜の再生工事が行われ、2018年に海開きとなりました。
海開きに併せて海遊びのイベントを地域の皆さんと一緒に行い、日本の未来に向けてみんなでがんばりましょう!という士気を高めるイベントを開催しました。
【事例②:APサマースクール(高校生向け教育プログラム)】
細江)APサマースクールというもので、根浜の皆さんがイギリスの団体と一緒に活動しています。
細江)ボートレスキューという、水難事故が起こった時に自分たちで助けにいく取り組みをやっており、イギリスの団体と連携しています。
イギリスには地域住民主体のボートレスキューの仕組みがあり、港ごとにボートが設置されていて多くのボランティアさんがいるそうなんです。
細江)このAP (Atlantic Pacific)という組織の皆さんが釜石の被災地の支援に来た時に、「日本にはレスキューボートがない」ということに驚いたことがきっかけで、スタートしました。
上の写真は、その活動の一部で、県外の高校生に根浜に集まってもらって、この地域で学べること、例えば、ボートレスキューはもちろんのこと、災害が起こった時に、どういうふうに行動すればいいかも学びます。段ボールで作るコンポストトイレを作ってみたり、あとロケットストーブという自分たちで火をつけるものを作ってみたりとか…そんな多くの学びを提供する高校生向けの教育プログラムを行ったりしました。
【事例③:ACEH×防災教育】
細江)次にご紹介するのが、ACEH×防災教育です。インドネシアのアチェは、2004年に起こったスマトラ沖の大津波の時に、亡くなった方が30万人以上という大きな被害が出た地域です。三陸と同じ津波被災地ということで、防災のノウハウや防災教育の仕組みをシェアして、互いに高めていきましょうね!という国際協力のプロジェクトを始めています。
実際に子どもたち、特に高校生同士で学び合いをするための機会を作って、いろんな知恵をシェアしてもらえればいいなということで、そういった機会創出をしています。
~グローカル教育をどのように考えるか~
細江)グローカルというと大きなことのように聞こえますが、実はとってもシンプルだと思っています。
①違いをお互い理解しながらそれぞれが持ちうる正しさを認め合うこと
②自分自身の暮らしを誇りあるものにするために学びを深めること
③地球を守る責任を全うすること
これは、「私たちみんな同じ地球の上に生きていて同じ人間だよね」という価値観を共有していくことだと思っています。
細江)じゃあグローカル教育って何なのか?それは、自分たちの暮らし・自分たちの地域がベースにあると思っています。
(自分の)地域の特色・特性を誇りに想い
暮らしの中で長年培われた文化を
暮らしの中で、交換・共有し合うこと
非日常のことではなくて、日常の中のこと、習慣やノウハウ、いわゆる文化をお互い共有して、共感していくのがグローカル教育だと思っています。特に、三陸の地域は防災のノウハウが特徴的です。生きたノウハウがあるので、世界中の人に知ってもらいたいです。
戸塚)とても分かりやすくまとめて頂き、ありがとうございます。根浜海岸の海遊びがにぎわっている様子が写真から伝わってきました。ここの地域で海水浴場が復活するに至るプロセス、震災後7年間でどういう変遷があったのか、再開当日の雰囲気はどうでしたか?
細江)震災から7年間は海開きができない年が続き、近くにある泳げる海である根浜海岸を知らない子どもたちが増えました。この地域の人たちは、「子どもたちにまず来てほしい。子どもたちがこの美しい海で楽しそうに遊んでいる姿をみたい。」という強い思いがありました。実際に海開きをしたのが2019年で、前年の2018年からイベントを始めました。2018年は天気が悪かったのですが、それでも子どもたちがたくさん来てくれたんです。
細江)2019年にようやくオープンということで、神事などもしっかりやっていただいて、そしたらパーッと天気が良くなりました。子どもから大人までみんなが思い思いの楽しみ方で楽しそうにしていて・・・
SUPをしたり、シーカヤックをしたり、ヨットに乗ったり、それぞれの楽しみ方ができるように私たちもイベントを企画していました。地域の大人たちもとっても嬉しそうでしたし・・・これを待ちわびていたのだなぁというのを外からきた私も感じました。(一番上の海開きの写真を見ながら)
戸塚)この写真とてもいい写真ですよね。とても素敵な写真だと思います!
細江)うんうん。この写真は、同じローカルベンチャーの仲間がとってくれたんです笑
細江)私以外の外から来てくれた人たちも海のプログラムを提供してくれて、ライフセービングの方もそうですし・・・皆さんの力を合わせた結果です。
戸塚)本当にいろんな方が関わっているのですね。ここにこんなにたくさんの人がいるのも 私も見たことがありませんでした。地域の人が集まってくる場所なんだなぁというのを感じます。
平元)このイベントは毎年やっているのですか?
細江)毎年やっていきましょう!ということで話を進めています。しかし、今はコロナの影響があるので、難しい状況ではありますがなんとかやりたいということで、話は進んでいます。白い砂浜と長い松林と美しい海が魅力で、釜石で一番きれいな場所だと思っています!
戸塚)天気がいいと本当にきれいですよね!
戸塚)ローカルをグローバルに、世界に広げていくということで、APサマースクール(高校生教育プログラム)についても気になりました。イギリスの方が来日して高校生にいろいろ教えるのですか?
細江)イギリスの方が実際に釜石に来て、教えてくれています。サマースクールでやったプログラムは大きくわけて4つあります。
1. ボートレスキューを学ぶ
2. 海洋汚染について学ぶ
3. 漁船体験
⇒漁船に乗ってホタテを採る場所を実際に見に行ったり、採れたてのホタテを食べたりしました。
4.サステナブルについて学ぶ
⇒コンポストトイレやロケットストーブの作成など持続可能な社会を目指して、災害が起こった時に逃げた先で可能な対策を考えようという取り組みをしました。
戸塚)プログラムを受講している高校生はどのような方ですか?
細江)だいだい関東圏の高校生が多かったですね。インターナショナルスクールに通っている方もいました。色んな学校からきてくれました。
平元)釜石の高校生に限らないことなんですね!
細江)そうです。釜石の学校はお盆が明けたらすぐに学校が始まってしまうので、関東圏の学生と夏休みの期間が合いにくいです。イギリス側とも調整してお盆明けに実施したので、日程的にも県外の高校生が参加しやすかったと思います。
細江)地域の人たちと触れ合うようなプログラムでした。参加した高校生の中には、人の温かさ・暮らしの美しさに惚れた人もいました。今でもインスタとかで、「また行きたいです!」というコメントをもらって、とても愛を感じました。
戸塚)漁師さんとイギリス人はどうやってコミュニケーションをとるのですか?
細江)ジェスチャーとか・・心がつながっているから大丈夫!みたいな笑
平元)ノンバーバルコミュニケーションですね!
細江)ボートでの単語、例えばロープワークなど世界共通の単語も意外とあるようです。技術を表す
戸塚)なるほど、おもしろいですね。
平元)最先端のことをやっている印象を受けました。都会でもなかなかできない貴重な経験ですね。
細江)高校生自身、マイクロプラスチックを減らすためにどういう行動をすればいいか、海にかかわる生き方をするために今何をやればいいのか、東京に戻った後に、日々の暮らしの中に落とし込んで考えてくれて嬉しかったです。
戸塚)日常の中に取り入れるということですね。
平元)アチェのプロジェクトも気になります。釜石や県外の高校生が参加されているのでしょうか?
細江)高校生向けかどうかはこれからですね。以前、アチェにある津波博物館の館長が釜石に来てくれたことがありました。釜石の小中学生と、防災についてディスカッションする機会を設けました。逆に、私たちがアチェに行ったこともあります。現地の高校生と会って防災について話し合ったこともありました。
細江)実は今日、アチェの高校生と釜石大口の高校生をオンラインで繋いで、防災への取り組みや各々が考えていることを共有しました。楽しくて、いい時間を過ごせました!
終わった後にみんなが「絵で津波を表現するのはみんなすぐわかるから普遍的なんだな」とか学生たちも多くの学びを得たそうです。アチェ側の学生もアイデアを積極的に出してくれて、刺激になりました。今後も続けていく予定です。アイデアをどんどんシェアしてノウハウを高めて続けていけたらいいなと思います。
戸塚)「私のグローカル」で挙げられていた内容はとても大切だと思うのですが、どうすれば実行できるのでしょうか?
細江)自分の価値観を確立させた上で、価値観に良し悪しはないので、自分の価値観を確立させた上で、認め合うことが大切だと思います。
アチェに行って印象的だったのは・・・アチェって、津波が来るまでその前は内戦をしていました。戦争の状況だったのですが、津波によって和平合意が進んで停戦し、平和が戻ってきたんです。
イスラム教ということもあって、自然から来る津波は神様の思し示しだから、逃げられないんだ、という考え方の人もいます。その人たちそれぞれの考え方だから、いい悪いではなく、そういう考え方もあるよねって認めていくのが大事だと思っています。まずは、知ることが第一歩なのかなと思います。
戸塚)ありがとうございました。
細江)自分が単純にこういった活動が好きなんですよねぇ。
平元)イギリスとかインドネシアとか、どこからそういう発想がでてくるのかも気になります。
ー後編では、細江さんご自身の人生について探求していきます!
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