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なんだかこのジレンマが、僕は”まさに人間だ”と感じました|漫画『東独にいた』

今日の漫画は『東独にいた』です。

めちゃくちゃ面白いですよね。設定が上手いなと、正直思いました。

ベルリンの壁で一つの国が真っ二つに裂かれた世界。 東ドイツ。 社会主義が支配するその国に住むアナベルは、 古本屋を営む青年・ユキロウに密かな恋心を抱いていた。 そして、国家の陰謀が絡む明かせない秘密を。 時代が、思想が、抗争が、二人を別つ壁となる――。 東ドイツに生きた人々を描く本格派歴史劇。

コミックDAYSより引用

東西冷戦に触れられる

最初の数ページからメッセージを感じました。実際に経験はしていないのでバイアスはかかってしまいますが、当時のドイツにおける資本主義と社会主義について、漫画を通して少しでも触れることができるのはいいなと思います。

『東独にいた』(宮下暁/講談社)1巻より引用

例えば「東独と西独どちらが正しいのか」と聞かれた場合、今は「戦争の勝敗」という、事象を振り返った回答の仕方もありますよね。

ただ、当時の人たちからすれば、自分の命をかけていることです。それぞれの正しさ、重みを、作品を通して垣間見ることができると思います。

ジレンマを通して人間を描いている

信じているものが違う、その葛藤が本作を面白くしていると思います。

具体的には、主人公で軍人のアナと、反政府勢力の元締フレンダーが対峙するシーンです。ここに至る過程でアナは、誰がフレンダーなのか心当たりがあることを、同僚たちに悟られていました。

そして核心をつかれます。

『東独にいた』(宮下暁/講談社)1巻より引用
『東独にいた』(宮下暁/講談社)1巻より引用

でも、はっきり「ためらいなく殺すわ」と答える。

それでも実際にその時を迎えると、お互い0コンマ何秒の世界の中で、いつもとは違う行動を取ってしまう。

なんだかこのジレンマが、僕は”まさに人間だ”と感じました。

『東独にいた』(宮下暁/講談社)3巻より引用

突然ですが、どうして人間はジレンマに陥るのかというと、環境がセットになっているからだと思うんです。

ただ人間が集まっているだけでは、そんなに難しいことは起きないはずなのに、環境の違いが葛藤を生んでしまう。それがこんなにも苦しいものになっていくのか、ということを巧みに描いた漫画だと思いました。

ここ最近読んだなかで、見事にヒットしましたね。

細かい設定に気合が入っている

戦闘シーンも面白い。身体改造を施された超人MSGの存在と、頭脳戦の要素もありながらも、テンポよく楽しめる情報量になっているんです。

『東独にいた』(宮下暁/講談社)1巻より引用

そのなかでも、僕は最強の殺し屋「違う顔」のエピソードが実はめっちゃ好きだったりします。

『東独にいた』(宮下暁/講談社)4巻より引用

「違う顔」の出生について、数ページをかけて紹介しているんですよね。

同じ顔だけの民族がいて、はじめて「違う顔」が生まれたこと、整形手術をしても顔が元に戻ったこと、他にも都市伝説のような内容が書かれています。

『東独にいた』(宮下暁/講談社)4巻より引用

細かいところにすごい気合入ってますよね。その設定でそんなする必要ある?みたいな。こういうところも、めっちゃ好きですね。

まだまだ書き足りないくらい面白いので、ぜひ読んでみてください!

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