『ぼくらの』は名作です
水曜日ですね、今日のマンガは『ぼくらの』です。2007年にアニメ化もされて、最近は「完全版 ぼくらの」の発売がはじまりましたよね。
もともとぼくは、レオンチャンネルから教えてもらって読みました。それが5年前くらいだったんですけど、衝撃的すぎて...でもやっぱり、また読みたくなっちゃうのが『ぼくらの』です。
どんなストーリーかというと、まず15人の子どもたちが出てきます。
そこで、彼らはある契約を結ぶことになるんです。この契約は、ジアースというロボットに乗って戦うためのものなんですが、あとになって「戦い終わったら死んでしまう」ことを知らされます。
もちろん、みんな葛藤はあるんですが「地球を救うため」には戦い続けるしかありませんでした。さらに、戦っていくと少しずつ敵のことも分かるようになります。
ここも衝撃的だったんですけど、敵のロボットを操縦していたのは並行世界にある「別の地球の人たち」だったんです。つまり人間同士の戦いだったと。
「もうね、設定が凄すぎるよね」と思います。
しかも、その設定である以上、最終最後は誰も助かる道がないんです。この15人全員ですよ。「そんなことある?」と。
『ぼくらの』は全11巻なんですけど、最初の1・2巻で設定が分かるようになっていて、そのあとは1人ずつの戦闘シーンが始まります。ここで、彼らの抱えている背景が描かれているんです。
15人全員が主人公というのは「それもまた重いな」と。
このマンガって「どこまで人をグチャグチャにするんだ」っていうぐらいにストーリーが研ぎ澄まされていて、「まともな人が読んだら病むんじゃないか」と思ったりもします。
でも、読んじゃうんですけどね(笑)。
話はそれますが、最近出ているマンガの傾向として「1巻はエロだけど、実はミステリーでした」っていう展開が増えていると思うんです。
でも『ぼくらの』は一貫しています。そして、名作ではあるけれど爆発的に売れる作品でもないと思うんです。
ただ、めっちゃいいマンガ。傷つけずには愛せないというか、どう言ったらいいのかよく分からなくなるくらい、いいマンガなんです。
チズの気持ち
15人のなかでも、特に印象に残っている2人の話がありました。
1人目は3巻の17話で主人公になる「本田千鶴」です。
これ、酷い話なんですよ。本当に。
チズが「先生」と声を掛けたのは、通っている中学校の先生です。
こうやって話をするうちに、どんどんどんどん気になっていって
ついに、チズは先生と体を重ねるようになります。
でも、裏切られてしまうんです。
----------------------------------ここからは性暴力の描写を含みます。
そして、チズがジアースに乗るときがきます。
このとき、ジアースに乗ると人の反応が分かることに気づくんです。そしてチズは敵と戦うことよりも先に、個人的な復讐を始めます。
こうして、残るのは先生だけになりました。
避難していた先生の車には、なんと
チズのお姉ちゃんが乗っていたんです。
惨すぎる話ですよね。
3巻はここで終わりなんですが、もっと凄いのはこのあとです。チズと先生とお姉ちゃんがどうなっていくのか、しっかり描かれています。
人間に与えられた最高の娯楽
もう1人は、9巻の第48話で主人公になる「宇白可奈」です。
15人のなかでは珍しく兄妹で、自然学校に参加していました。でも、2人は仲が良いわけではなくて、お兄ちゃんはいつもカナちゃんを虐めていたんです。
それでもカナちゃんは、お兄ちゃんにしてあげたいことがありました。
カナちゃんは、自分たちが血の繋がっていない兄妹だと知っていました。だからこそ、お兄ちゃんが戦闘で死んでしまう前に、お母さんと会わせてあげたいと思っていたんです。
お兄ちゃんのお母さんは、お父さんが先生をしていた中学校でかなりの問題児でした。その人は、中学を卒業するとお父さんのところへ転がり込んできて、最後はお兄ちゃんを残していなくなってしまったんです。
そして、カナちゃんはお兄ちゃんのお母さんを探すために、政府特別事態対策室の田中さんに頼むことにしました。
さらに、カナちゃんが虐められていた理由も分かってきます。
カナちゃんは「それで身内だと感じてもらえるなら」と思って、お兄ちゃんからの虐めに抵抗しなかったんです。
そして、ついに誰がお母さんなのかが分かります。
ここで「そんなに物語って交わります?」って思いましたね。
そのことがきっかけになって、田中さんとカナちゃんのお父さんは思い出話に浸るんですが、この会話もすごくいいんです。
ここ。
もうね、最高です。
あと、ぼくが好きなのは6巻のシーンです。
そういうのすげー好きっす。ぼくの好きな高次元に関するところ、全部好き。ただ1回読んだだけじゃ、全然理解できなかったっす(笑)。
こうやって1人1人が戦っていくんですが、最後に地球が救われるのかどうか、そこはぜひ『ぼくらの』を読んで確かめてほしいです。
・・・
── いいマンガですね、紹介していただけてよかったです。その一方で、鎌田さんがこういった読後感を好まれていたことを、少し意外に思いました。(聞き手:Erina)
そもそも、いいマンガがハッピーエンドとは限らないですよね。「溺れるナイフ」でも書きましたが、ぼくは「爪痕を残すのがいいマンガだ」と思っています。
そういった意味では、ぼくは性善説を信じている一方で、選ぶマンガは誰もが幸せになるストーリーではないこともあります。でも、そういったことを越えて読みたくなってしまうのが『ぼくらの』だと思うんですよね。
少し話がそれますが、Mr.Children「CROSS ROAD」のなかに「傷つけずには愛せない」という歌詞があります。あとは、「溺れるナイフ」のときに話した「好きの反対は無関心」ですね。こういったことも、近い感覚なんじゃないかな。
例えば、梅干しって酸っぱいけど食べちゃうじゃないですか(笑)。
『ぼくらの』も決して、読み終わったあとにハッピーにはならないけど、読んでから微妙な気持ちになるところまで含めて作品だと思っているんです。
だから、そういう気分も味わえるような大人に背伸びしたい人は、絶対読んだほうがいいですよ(笑)。正直、普段はジェケ買い感覚でマンガを選んでいたりするので、いつもの好みとは違うんですけど
『ぼくらの』は人にすすめたいマンガであることは間違いないです。
もともと、ぼくは定期的に「読んで幸せじゃなくなるマンガ」を読みたくなるときがあります。そういうときも決まって、マンガは夜寝る前に読むので眠れなくなるんですけど(笑)。
でも、それもまた良しなんです。
『溺れるナイフ』もいずれ読み直すと思うんですけど、こういった作品って読むときのコンディション次第で、明らかに「どう捉えるか」が違うと思います。だからなのかな、「今読んだらどういう気持ちになれるんだろうな」っていう気持ちを抱きながら読み返すことが多いですね。
普段はマンガを読んでいても、登場人物の名前を覚えることもないし、シーンによってはさらっと読み飛ばしちゃったりします。でも、そういうときは「今回は名前を覚えてみようかな」とか「今日は全部ちゃんと読んでみようかな」と思ったりするんです。
それから、今の気持ちに合わせてマンガを読み返すことってありますよね。
ぼくの場合は「BANANA FISH」「イヴの眠り」「YASHA -夜叉-」、あとは「I’ll〜アイル〜」、 「雪女は蟹を食う」もそういう作品なんです。ただ、その感情でも読むのには「まじで勇気がいるな」っていう作品もあって、それが「7SEEDS」ですね。ちょっとすぐにはいけない。気持ちの整理がつかないんですよ。
こうやっていろいろ考えてみると、もしかしたら『ぼくらの』は読んでいる人と共感できるのが楽しい作品だから紹介したくなるのかもしれないですね(笑)。
(ヘッダー画像引用元: 完全版 ぼくらの【公式】)
それではまた明日!
最後に。
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