自転車の乗り方
「おーい!ピンクの髪のあんた!両手放しはいつ、身に着けたんだい?」
「おれっちの物語、聞きてえのかい?そうかそうか。」
本来、自転車とは、幾度も転ぶ中で、自分自身の感覚を頼りに、乗り方を体得していくものだ。ゆえに、大人ができることの最良は、
①輪っぱを残酷にも両方外す。
②転んでもあんまり痛くない草原に連れていく。
③練習には口を出さず、折れそうになったらおにぎりで励ます。
泣きたいのなら、思いきり泣けば良いのさ。心にも体にも絆創膏を張ってやれば、子供たちは自分からまた、荒野を必死に駆けていく。
「だけどよ。おれたち兄弟は、ばあちゃんに街中の大通りに連れてかれてよ。『危ない!危ない!』って、池ポチャしそうになる度にばあちゃん叫んでよ。だからおれは、グレるしかなかったのさ。」
「両手放しは、自由の象徴。ピンクのリーゼントで、流線型を全身に感じた瞬間。おれの物語は、走り始めたのさ。」(完)
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