【企業分析】西本Wismettacホールディングス/日本橋室町三井タワー
BCGや三井不動産などと共に日本橋三井室町タワーに入居する西本Wismettacホールディングスという企業をご存じだろうか?今回はこの企業にスポットを当ててそのビジネスモデルや戦略について深掘りしていく。
歴史
西本Wismettacホールディングスは、1912年に神戸で貿易会社として設立されたことから始まる。創業当初からの理念は、「世界の食を日本へ、日本の食を世界へ」というもので、この理念のもと、主に北米を中心に日本食とアジア食品の輸出事業を開始した。
20年代には、アメリカのシアトル市に支店を開設。さらに1921年には、海外市場向けのプライベートブランド「Shirakiku®」を商標登録し、これが今日も米国で広く親しまれる日本食ブランドとして知られている。
戦後、西本貿易会社は新たなステージへと進化する。1947年には法人化を実現し、その後1950年代初頭にはアメリカのロサンゼルスに現地法人を設立し、米国市場への再進出を果たす。
カリフォルニア州では、米の栽培流通の基盤を築き、地域の米ビジネスの発展に大きく寄与。1968年には、サンキスト・グロワーズ社の日本輸入総代理店となり、米国産柑橘類の輸入商社として成功を収め、日本市場に新鮮な果物を供給することに貢献した。
また、米国内での日本企業の進出が増加するにつれて、同社はハワイ、ニューヨーク、サンフランシスコに支店網を拡張し、北米市場でのプレゼンスをさらに強化した。これらの戦略的な動きは、同社がグローバルカンパニーとしての地位を確立する助けとなっている。
平成時代に入ると、西本Wismettacホールディングスは新たな課題と機会に直面する。
この時期には、海外での日本食ブームが盛り上がりを見せ、海外製食品や食品原料の輸入が増大した。これに伴い、輸出入食品の価値基準も多様化し、高度化が求められるようになった。西本Wismettacホールディングスはこれらの変化に対して、事業の国際化に注力し、製造から販売に至るまでの一貫した取り組みを推進した。これにより、企業は世界中の市場でのプレゼンスを強化し、製品とサービスの品質をさらに向上させることが可能となった
2017年には、東京証券取引所第一部に上場する。
現在、西本Wismettacホールディングスは世界約50の拠点でビジネスを展開しており、特に海外拠点の社員数が多いグローバル企業としての地位を確立している。そのうちの半分は北米に集中しており、この地域での強い影響力を示している。
会社全体の業績
会社全体の業績は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年を除いて年々上昇している。2022年には売上高が2,752億、経常利益は107億にのぼる。
また時価総額はおよそ852億となっている。
事業内容
事業としては『日本の食を世界に』と『世界の食を日本へ』の二つが挙げられる。
『日本の食を世界に』はアジア食グローバル事業と呼ばれ、日本食を中心としたアジア食品・食材などを米国、カナダをはじめ、欧州、アジア、豪州など30カ国を超える海外の日本食レストランやスーパーなどに販売している。
商品の企画・開発・仕入れから現地生産、輸入通関、在庫管理、分荷・配送、販売に至るまでの食の流通を一貫してオペレーションできるプラットフォームが最大の強みとなっている。
一方の『世界の食を日本へ』は農水産商社事業と呼ばれ、今日、米国サンキスト社の総輸入元として、また様々な青果物の輸入元最大手の一角として成長している。
またこの2大事業の他に、アメニティフード事業やサプリメント事業も手掛ける。
さらに2023年9月には、ふるさと納税サイト「もぐふる™」を開設した。
事業ごとの業績
現在の事業別の業績としては、
アジア食グローバル事業がおよそ8割を担い、2,161億。
農水産商社事業が残りの約2割を担い、551億となっている。
ここで注目すべきことは農水産商社事業はほぼ横ばいなのに対し、アジア食グローバル事業は5年で2倍に成長していることである。
これは近年、日本食ブームが北米を中心に広がる中、当初は主に日系人を中心とした顧客層が、現地の一般消費者にまで拡大してきたことによる。(一般消費者は外食として日本食を消費することが一般的である。)
実際に事業全体の地域別売上構成比率はこのようになる
このうちアジア食グローバル事業は日本を除く地域での売上であるので、表より北米市場が大半を占め、また欧州での売上が年々上昇傾向にあることが読み取れる。
農林水産省の資料によると日本食レストランの数は2006年から2023年までの15年余りで8倍へと数を伸ばし続けている。
その一方で北米における日本食レストランの数は、直近2年で約一割減少しており、日本食レストラン数の伸びは鈍化していることが観察できる。よってこれまでのように需要が伸び続けるということは期待しずらい。そのため潜在成長性が高く、かつ、マーケット全体に占める割合の大きい欧州及びアジアにおいて市場の開拓が進んでいる。
また事業別の利益に関しては、アジア食グローバル事業は利益率が5%を超えている一方で、農水産商社事業は数量優先策で価格を引き下げ、利益率が0%を推移している。