『かりあげクン』に見る40年間の文化や価値観の変遷
4コマ漫画界の巨匠・植田まさし先生の代表作品の一つ、サラリーマン4コマ漫画『かりあげクン』が2020年で40周年を迎えました。
子どもの頃から『かりあげクン』のファンだったこともあり、40周年をきっかけに電子書籍版の『かりあげクン』を1巻からちょこちょこ読み直しています。
時事ネタやサラリーマンあるある的なネタを取り扱っているので、むしろ大人になってから読んだ方が楽しめますね。
というか、子ども時代の自分に、このサラリーマン的なネタがどこまで理解できていたのか甚だ疑問ですが・・・
改めて読み返すと、40年という歳月の価値観の変遷に気付きます。
例えば、電卓を使っているかりあげクンに対して上司が苦言を呈すシーン。
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(引用:『かりあげクン 1』 / 双葉社 / 植田まさし / p.48)
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これは1巻の内容なので、2020年現在から見てちょうど40年前。
40年前(1980年)の時点では、「電卓を使用する若者を快く思わない」「電卓よりソロバンの方が良い」という価値観が割と一般的に存在していたのが窺えます。
また、喫煙シーンの描写が多いことにも気付きます。
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(引用:『かりあげクン 4』 / 双葉社 / 植田まさし / p.70)
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路上や社内、会議中や休憩時間・・・
もうとにかく、いろいろな場所でがんがん煙草を吸っている。
サラリーマンの日常のあらゆるシーンで、喫煙が当たり前に存在していた時代であったことが分かります。
他にも、『かりあげクン』初期ではまだ「JR」ではなく「国鉄」で、国鉄のストライキで鉄道がストップして通勤できない、という話があったり。
4巻になって、「会社でポケベルを導入した」という話が出てきたり。
歴史の長い漫画を読んでいると、このような文化や価値観の変遷を読み取れるのが面白いですね。
漫画に限らず、その他の創作物、小説やドラマ・映画等でも、そこで描かれている創作当時の文化が歴史や文化史を紐解くのに役立っていると聞いたことがあります。
最近、江戸時代の文化に関する本を読んでいるのですが、江戸時代の有名な旅物語といえば十返舎一九の『東海道中膝栗毛』。
ご存知”弥次さん喜多さん”のお伊勢参りの珍道中を描いた滑稽本です。
大衆向けの愉快な読み物として親しまれていたようですが、現代ではその珍道中の描写が、当時の庶民の旅行風景、街道の文化や風習を読み解くための貴重な歴史的資料となっています。
当初は単に娯楽作品だったとしても、時間が経過することで歴史的・文化的価値が生じる。
漫画にもそのような側面があるわけです。
『かりあげクン』が連載された40年間で、社会も価値観も大きく変転しました。
その変化を楽しみながら、引き続き『かりあげクン』を読み進めていきます。
余談ですが、子どもの頃に『かりあげクン』を読んだ影響で、サラリーマンは机の上に書類が積み上がっているというイメージがありました。
何やら机上の書類を処理すること=サラリーマンの仕事である、と本気で思っていたものです。
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(引用:『かりあげクン 3』 / 双葉社 / 植田まさし / p.52)
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今のところ、机の上に書類が積み上がる業務に遭遇したことがないのですが、あれは何なんですかね・・・
具体的にかりあげクンが何をしているのか、未だによく分かっていません。
一般的な商社の業務風景は、あんな感じだったのでしょうか・・・
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