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会社員・教員を経て独立、前例のないマスクメロン栽培に挑む【かまびと。#09 ヤマオカサンチ・山岡翔平さん】

🌱かまびと。
嘉麻市のふるさと納税に関わる「ひと」にクローズアップ。こだわり抜いた返礼品を提供している事業者さん、嘉麻市のために頑張る市職員さんなどなどの紹介をしています。

「甘味だけじゃなくて、バランスの取れたうまいメロンを作りたい。」

人懐っこい笑顔とともにそう語るのは、嘉麻市で農家「ヤマオカサンチ」を営む山岡翔平さん。山岡さんが栽培するマスクメロン「よかメロン」は、甘さと酸味のバランスが取れた爽やかな味が特徴です。最近はANAクラウンプラザホテル福岡でも提供されるほどの人気ぶり。ですが、メロン栽培は嘉麻市では前例がなかったそうです。農業法人の従業員と農業系高校の教員を経て独立した山岡さんが、なぜ福岡では珍しいメロン栽培に取り組むのか。その理由と、山岡さんが「よかメロン」に持つこだわりを伺いました。

1, 水と土を徹底的に管理し、必要なものを1つの実に集中

ー山岡さんは「よかメロン」というマスクメロンを作られていますが、メロン作りで一番こだわっているところは何ですか?

こだわっているのは土と水ですね。
うちはハウスでメロンを育てていて、メロンの生育状況に応じて水の量を変えています。メロンを大きくするためには水が必要なのですが、甘くするためには今度は水を切らないといけない。水の管理がうまくできないと、メロンを美味しく育てることはできないと思います。

教科書通りに水をやっていても、普通の味のメロンにしかなりません。メロン自体の様子を見て、「まだ水をやらなくても大丈夫かな」「そろそろ水やらないと枯れそうだな」というのをこれまでの経験や天気から判断しています。

取材時にメロン栽培のための土づくりについて教えてくださる山岡さん

土づくりに関しては、メロンに必要な肥料を必要な分だけ入れるようにしています。メロンを収穫した後も、メロンのために入れた肥料は残ってしまうんですよね。肥料を残したままにすると、肥料の無駄遣いにもなってしまいますし、土のpHが変わってきてしまったり、メロンの根が焼けてしまったりすることもあります。なので、うちではメロンを作っていない時期にその土で野菜を作って肥料を吸わせています。

僕は甘さだけじゃなくて、酸味などのバランスの取れたうまさを追求しているので、そんな味が作れるような肥料を与えています。

実は、今メロンを栽培している土地は数年前まで田んぼと同じような土だったんです。田んぼに使われるような土地は水はけが悪いので、それをメロン栽培に適した水はけの良い土に改良しました。土によってメロンの味も変わるので、1年目に作ったメロンと3年目に作ったメロンでは全く味が違いますね。「水はけは良いけれどある程度の保水力があって、肥料は保ってくれる」というバランスの取れた土を目指しています。

ふるさと納税でも提供されている「よかメロン」
この食べ方、誰しも一度は憧れたことがあるはず…

ー山岡さんは6月から8月、10月から11月にメロンを栽培されているとのことですが、季節によって育て方は変えたりするのでしょうか?

夏場は湿気が多いので、あまり経験がなくてもメロンを育てやすいと思います。秋は乾燥しているので、収穫間際はちょっとの雨で実が割れてしまいます。そうなったら売り物にならない。冬近くになるとどうしても栽培が難しくなりますね。

ー山岡さんは「一木一果(1つの苗に1つだけ実を残す)」で栽培をされているとのことですが、この方法をとっている理由を教えてください。

まずは1玉だけ残すと、実を大きく育てやすいというのがあります。栄養がその実に集中するので、メロンに味をのせやすいというのも理由の1つですね。また、メロンのつるを上に伸ばして、吊るして育てることができるのでメロンが管理しやすくなっています。

ただ、実は大変なことの方が多い方法でもあります。1本の木に1つしか実らないと、それがダメになってしまったら木が無駄になってしまうってことじゃないですか。ハウスに植えられる本数は限られているので、リスクが高い方法でもあります。また、上に吊るして栽培していると、実が大きくなる収穫間際にメロンの重みでハウスの骨組みが変形することもあります。メロンのつるが重さでちぎれてしまって、実が下に落ちてしまう時もあるんです。そういうものは落ちた衝撃で中身が腐りやすくなってしまうので、絶対にそのままでは出さずに加工に回します。

ー摘果した実はどうされているんですか?

これまでは全部捨てていました。でも、近くのキムチ屋さんや味噌屋さんに摘果した実を欲しいって言われて。これを使って摘果キムチを作ったりとか、酵素ドリンクにしたりとか加工をしてもらっています。それが人気になってきているので、最近は捨てるところがなくなってきてますね。

夏になるとハウス4棟が全てメロンで埋め尽くされます。
1棟あたり約650本植えているそうです。

2, 農業法人・教員を経て独立。あえて「手のかかる」メロンを選んだ理由

ー山岡さんがそもそも農業に携わろうと思ったきっかけを教えてください。

高校が農業系の学校だったので、3年間で学んだことを無駄にしたくないと思ったからですね。あとは、高校3年の頃に学校でメロンを作っていたんですけど、校舎移転でメロンを作っていたハウスが収穫1ヶ月前に解体されてしまって。せっかく作ったものを収穫できなかった悔しさも農業に関わるきっかけになっています。

あと、農業がやっぱり楽しかったんです。自分は種まきから栽培をスタートさせるのですが、種をまく作業が収穫の作業に変わる、という楽しさはどんなモノを作っていても共通する楽しさだと思います。

あと、農業以外の仕事は自分には向かない!(笑)
農業は自分のペースで進められるのでいいですね。「今日は何しようかな〜」って毎日考えて、「今日は二日酔いだからやめよう」って作業量を減らすこともあります。その分他の日に多めに作業をするなどの工夫をしています。

僕は「引き算農業」のスタイルなんです。10の労力をかけて良いものができるとわかっていたら、労力を8や7に減らして同じものができないかと考えるタイプで。できるだけ無駄なことはせずに、効率よく作業をすることを心がけています。

ーたくさんの作物がある中で、なぜメロンを中心に栽培しようと思ったのですか?

メロンが一番手間がかかるからですね。
自分は暇が嫌いなので、メロンだと毎日作業ができて楽しいですね。他の野菜だと、植えて1~2週間はそのままで、また肥料を入れて1ヶ月放置、ということもあるんですよ。一方でメロンは、特に夏場に生育が早くなるので2日に1回は必ず畑に入らないといけません。

畑に入ると、いらない葉っぱをとったり、摘果をしたり、メロンのツルを紐に巻き付けていく「誘引」という作業をしたりしています。ハウス1棟で大体650本のメロンを栽培しているのですが、この作業を1日に最低1ハウス分、多い時は3棟一気に行います。これを基本的には2人、多くても4人で回しています。人が多すぎると自分の仕事が無くなっちゃうので、これくらいがちょうどいいんですよね。


メロンの世話をする山岡さん。
取材中も楽しそうに栽培のお話をしているのが印象的でした。

ーメロン以外にも栽培されているものはありますか?

メロン以外にも70種類くらい野菜を作っています。ただし、1種類ごとの量はそんなに多くありません。近所のおばちゃんたちが、スーパーが無くなったからといってうちに来てくれることが多いので、日頃使える野菜をメインに揃えています。あとは気分で変わり種を植えて遊んだりしています。

ー独立してから一番大変だったことを教えてください。

大変なのはやっぱり天候ですね。毎回ハウス4棟分植えるんですけど、1回の作付けで毎回1棟は潰しているんです。大雨でやられたり、植え付けが遅すぎて寒波にやられたり、自分の計算ミスで収穫日がずれてしまって中が腐ってしまったりしました。そういう時はハウス1棟の規模でメロンがダメになってしまうので、要は博打みたいなものですね。天候は予測できないし、予測したところでもうメロンは植えてしまっているので対応できないという。

ハウスは二重ばりにしているのですが、それでも寒波の時は耐えられません。暖房をつけられると良いのですが、そうするとメロンの単価が上がってしまうので悩みどころだなと思っています。

ーでは、この仕事のやりがいは何ですか?

やっぱり「うまい」って言われることです。それだけですね。
だからこそ、お客さんに面と向かって売りたいなと思っています。メロンの出来は、収穫した時に8割、お客さんの手元で追熟させるときに最後の2割が決まると思っています。この2割がめちゃくちゃ重要なんです。収穫してすぐに食べるとまだ硬かったり、味が十分にのっていなかったりします。メロンは腐ってしまう前が一番美味しいので、そのタイミングで食べてもらえるようにきちんと説明したいんですよね。

3, 子供に「農業」という選択肢を

ー山岡さんは「地域農業の活性化」にも取り組まれているとのことですが、具体的にどのようなことをされているのですか?

具体的には収穫体験をやっています。子ども向けのものを中心にやっていて、子供たちが来たら「遊べ〜!収穫せえ〜〜!!」って言って自由に収穫をしてもらいます(笑)どうせやるなら楽しい方がいいですしね。

あとはせっかく地元にいるので、草取りをしたり溝掃除をしたり、そういう小さなところでも地域貢献というのは考えています。

ーなぜ子供の農業体験を始められたのですか?

自分の子供2人を農家にしたいという思いがあるんです。自分の子供を畑で遊ばせていたのが最初で、「どうせなら友達も呼ぼうや」となって、それがだんだん広がっていって。子供たちの収穫体験はほぼ無料にして、親御さんの分だけお金をいただいたり、収穫した作物の分だけお金をいただいたりしています。

同じ話題で話せる人が増えたら嬉しいなと思っているので、農業をする人を増やしたいという思いもありますね。要はそういう人と一緒に酒を飲みたいんですけど(笑)

子供の頃にやったことって案外記憶に残っていると思うので、それがつながって農業をする人の輪が広がっていけばいいなと思っています。

冬の間はほうれん草などの野菜を中心に育てています。
取材の少し前にも子供の収穫体験をされていたそうです

4, 自分の手の届く範囲で、作物をつくりつづけたい

ー山岡さんの今後の展望について教えてください。

事業を大きくしようと思えばできるけど、やっぱり自分がメインで作業したいと思っているので、規模自体はそれほど大きくするつもりはありません。自分の手の届く範囲で規模を広げて、それを維持しようと思っています。

大きな目標としては「1年中メロンを作りたい」というのがあります。来年からはハウスを2棟増やして、6月から12月まで月に1回は収穫ができるようにしたいなと思っています。11月にメロンの生育はほぼ止まるのですが、寒い中でそれを枯らさないように1ヶ月以上維持しないといけないので、12月にメロンを収穫するのはかなりチャレンジになるかなと思っています。


ここまで読んでくださりありがとうございました!
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