Uターンで就農、自らのブランド米で農業のロールモデルに!【かまびと。#01 EAT-Plus・打田健人さん】
嘉麻市の山道を登って、登って、また登って... そうしてたどり着いた福岡の水源「遠賀川」源流。そのすぐ近くでつくられているのが「極源流米」です。清流をそのまま水田に注ぎ入れられる環境は、全国でもかなり珍しいといいます。
今回の「かまびと。」でご紹介するのは、EAT-Plusを経営し、米の生産から販売まで担う打田健人さん。どうしても「お金にならない」イメージがあり、高齢化と担い手の減少が続く農業。もともと関西で営業職のサラリーマンをしていた打田さんが、Uターンをし「農業」という道を選んだ理由、そして、ご自身のブランド米「極源流米」にかける思いを伺いました。
1, 源流に近い山奥での米栽培。水に徹底的にこだわった「極源流米」
ー打田さんは「極源流米」というご自身のブランド米をつくられていますが、「極源流米」の特徴は何ですか?
「極源流米」は、水に徹底的にこだわっています。
「極源流米」を育てているのは、遠賀川の源流のすぐ近くの水田です。この辺りには人家がほとんどなく、生活排水で水が汚れることがありません。なので、清流をそのまま田んぼに引き入れることができるんです。このような条件が整っているところは、日本中を見ても珍しいと思います。
お米の美味しさは水と寒暖差で決まると言われています。僕たちがお米を育てているのは中山間地域と言われるところなので、水も綺麗で寒暖差もある。だから、美味しくて健康なお米が作れるんです。同じ品種のお米でも、平野で作ったものと源流に近い地域で作ったものでは味が全く違います。
ー山奥にある水田だと、田植えや稲刈り、日々の手入れは大変じゃないですか?
もちろん大変です。田んぼが1つ1つ小さいので、決して米を作りやすい環境とはいえません。機械を入れることはできるんですが、草刈りは自分達の手でやらないといけません。また、この辺りでは獣害もあります。それはかなり手がかかりますね。
2, 脱サラ、Uターン、農業。その選択の裏側に迫る。
ー打田さんは嘉麻市にUターンして農業を始めたと伺いました。農業を始める前は何をされていましたか?
以前は関西の繊維メーカーの営業をしていました。過去には設備関係の会社や理化学機器メーカーの営業をしていました。
ー嘉麻市にUターンしようと思ったのはなぜですか?
以前の仕事は、「求められたことをこなす」という仕事でした。でも、仕事をしていて、「これはずっと自分がやっていきたい仕事じゃない」という思いがずっとあったんです。そこでサラリーマンには見切りをつけました。僕はまだ独身で動きやすい状態だったので、動くなら今しかないと思って。
そこで、いつか農業をやりたいという思いを持っていたので、地元である嘉麻市で農業を始めようと思ったんです。
ー「農業はお金にならない」と言われていますが、それでもあえて農業を選んだ理由を教えてください。
実家が兼業農家だったこともあり、農業自体は身近なことだったんです。また、嘉麻市のこの環境で育っているお米が、他の地域のものに比べてとてもおいしいということも感じていて「これは売れるんじゃないかな」と思っていました。
でも、周りを見ていると、農業の担い手はだんだん高齢化していて、やめていく人も多い。これじゃあ10年後、農業は持たないだろうと思ったんです。
その状況の中で、自分のような若手が農業をやっていかないと、その後が続かないだろうと。だから、自分自身が農業のモデルケースになればいいなと思って農業を始めました。
実際に、農業って将来性があると思うんです。今まではJAさんの一強状態でしたが、米は何年も前に自由化されましたし、販売方法にも制限がないんですよね。この環境を農家がうまく使って、消費者の方との接点を見つけていけば、販路を拡大していくことは十分に可能だと思っています。
ー若者が農業を生業にできるようにするために、打田さんが考えていることを教えてください。
先ほどの話にもあったように、「米農家は稼げない」というイメージは非常に強いんです。それはなぜかというと、お米を作ることができる農家はたくさんある一方で、販売までできる農家がほとんどいないんです。JAさんにお米を買い取ってもらうという方法が主流になっているからですね。
JAさんに買い取ってもらうときの米の値段はだんだん下がっていっているんですが、生産のために必要な機械にかかる値段は高い。これでは採算が取れません。その結果、「米作をするには、10町(およそ10ha)以上の農地がないと生計が立てられない」と言われるようになったんです。
でも、その原因は米農家にもあると思うんです。農家が自分達でお米のブランディングや販路開拓をやってきていれば、こんなことは起こっていなかったんじゃないかと。
だから、ちゃんと自分達のお米を、自分達がつけた価格で売っていくことが大事なんじゃないかと思っています。そこで、私たちは自分達が作ったお米を「極源流米」としてブランド化し、自分達で販路を見つけていくという活動をしています。
その結果、実際に嘉麻市で農業をしたいという女性がいらっしゃったので、その就農支援もしています。
3, 農業の負のイメージを払拭!借金無しで挑んだ試行錯誤の1年
ー農業を始めるには、田植え機や稲刈り機など、買い揃えないといけない機械がたくさんあると思います。当然初期投資が高くなると思いますが、そのハードルはどのように乗り越えられたのですか?
そこは、我々も非常に頭を悩ませました(苦笑)
実際、私たちは無借金で事業を始めて、運営をしています。嘉麻市には小規模農家が多くいます。その中には、機械も農地も持っているのに、高齢化によって農業を続けることができない方もいます。そのような方達から農地や機械を借りてメンテナンスを行い、農地を保全するとともに初期経費を抑えることができています。
また、私たちは直売所も持っているのですが、直売所はEAT-Plusのメンバーが持っている土地を使っていて、直売所の内装も自分たちで整えています。そこでもコストを抑える努力をしていますね。
ーEAT-Plusさんが事業を始めてから1年が経ちますが、この1年でどのような試行錯誤を重ねてきたのでしょうか。
毎日が試行錯誤の連続で、ほとんど休むことがありません。昨日もシフト上は「休日」だったのですが、実際は地域の方から借りた農地の整備をしていました。雨が降らない限り、休日にも作業をしていますね(笑)
米の裏作としてパクチーを作る、という取り組みもこれから進めていく予定です。米の裏作は麦が主流ですが、米と麦は必要とする栄養素が同じなので、どうしても土地が痩せていってしまいます。パクチーが必要とする栄養素は米とは違うので、土が肥えていって、どちらも美味しく育てることができるんです。収益も上げながら、美味しい農作物を作っていく取り組みを考えています。
4, 地域あっての事業。嘉麻市とともに発展したい。
ーこれからの展望を教えてください。
僕たちが売り出している「極源流米」が、嘉麻市の名前と一緒に広まっていけば一番嬉しいですね。「嘉麻市といえば極源流米」だね、と言われるまでになれば嬉しいし、それが嘉麻市を知るきっかけになってくれるといいなと思っています。
あとは、僕たちのお米を食べてもらった人に「おいしくて健康的なお米」と認識してもらえるようにしたいですね。一時的なブームではなく、少しずつでもファンになってくれる方を増やして、長期的に「極源流米」の知名度を高めていきたいです。
ー嘉麻市の活性化のために、という思いもあるのでしょうか。
そうですね、最初はあまり深く考えていなかったのですが(笑)、地域が盛り上がっていかないと、僕らも生きていけないな、と思うようになったんです。
先程の話にもありましたが、地域のみなさんの協力があってこそ僕たちの事業が成り立っています。僕たちは農業において、ブランディングと雇用の創出を行い、他地域からの参入者や地元の継承者を増やして、地元を強くできるよう取り組んでいきたいと考えています。
僕らがこの活動をやっていても、「誰かのため、地域のため」という大義名分ができるとモチベーションもさらに上がりますね。
ー打田さんをはじめとしたEAT-Plusさんのビジョンや地域への思いが本当に素敵だなと感じました。EAT-Plusさんのこれからがすごく楽しみです!
※追記:クラウドファンディング、はじめました。
「極源流米」の美味しさを全国に広げるべく、打田さんがクラウドファンディングを行っています。なんと打田さんが実際にお米を届けに来てくれるリターンもあるのだとか!「極源流米」を食べてみたい人、打田さんと会ってみたい人必見です👀
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