九州で梨・りんご栽培に挑戦!手間暇かけて、最高の品質を。【かまびと。 #13 博光園・森博行さん】
山道を登ると見えてくる「九州りんご村」の看板。そう、嘉麻市の山間部では、梨やりんごをはじめとした果樹栽培が盛んに行われているんです。収穫時期になると、梨狩り・りんご狩りに来た多くの人で賑わいます。
今回の「かまびと。」でご紹介するのは、梨とりんごの農園「博光園」を経営する森博行さん。森さんのつくる梨とりんごは、たくさんのリピーターがつく人気商品です。この記事では、九州で果樹栽培を行うからこその苦労や、森さんがご自分の育てる梨・りんごにかけるこだわりをお伺いしました。
1. 「手を入れる分だけ木はお返しをしてくれる」手間暇かけた果樹栽培
ー森さんが梨やりんごを栽培する上で、気にかけていることやこだわっていることを教えてください。
とにかく品質の良いものを作るのを第一にしています。そのためのこだわりは主に3つ。水、肥料、そして剪定です。うちの農園は馬見山という山にあるんですが、ここから綺麗な湧き水が湧いてくるんです。その水を使って梨とりんごを育てているので、1つ1つが澄んだ水を吸い込んで、みずみずしくて美味しい実になります。
使う肥料によっても味が変わります。この農園でで使っている肥料は100%有機肥料です。有機肥料は化学肥料と比べると値段は高いですが、土が荒れたり、木の根が焼けて枯れてしまうのを防ぐことができます。最近は有機肥料の値上がりが続いているので四苦八苦していますが、ここは譲れない点だと思っています。また、できるだけ使う農薬の量を減らして安全なものを作るように心がけています。
最後は剪定です。日当たりが良くなるほど梨やりんごは甘くなるので、実の1つ1つにしっかり火が当たるように剪定しています。これは冬の間も行っていますね。あと細かいところだと、梨やりんごには1つの木に対する適正な実の数(結果量)というのが決まっているんです。実が多すぎると栄養が分散してしまうので良くないのはもちろん、少なすぎても栄養の行き場がなくなって実の仕上がりが悪くなってしまうんです。なので剪定と合わせて、適切な結果量を守るために間引きをします。
毎日の積み重ねが収穫した実の味に繋がっていくと思うんです。なので、ほとんど毎日畑に出て木の手入れをしています。「手を入れれば入れるだけ木は返してくれる」という言葉がありますが、まさにその通りなんですね。うちは観光農園で、お客さんへの対面販売を基本にしています。だから、お客さんの反応が直に見られるわけです。リピーターも多くて、その方達は味の感想を遠慮せずにはっきり伝えてくださるので、できるだけ良い反応がもらえるように頑張ろうと思っています。お客さんに直接「美味しい」と喜んでもらえた時は最高ですね。
2. 九州で果樹?この土地だからこその難しさと試行錯誤の成果
ー九州でりんごを栽培するというのはかなり珍しいと思いますが、この土地だからこその栽培の難しさというのはあるのでしょうか。
主要なりんごの産地と比べると、この辺りは気温も高くて降水量も多くなっているので、病気が出やすい環境なんです。今は落ち着いてきましたが、りんご栽培を始めて10年くらい経った頃に病気が入ってきて、その時は対処法も確立していないのでとても大変でした。また、りんごは寒暖差が大きいほうが色がつきやすいんです。この辺りは寒暖差がそれほど大きいわけではないので、色をつけるのが難しいんですね。
ただ、日照時間が長いので、長野や青森などの主要産地のものに比べると熟するのが早く、糖度が高いという良い点もあります。
一方で、この辺りは梨の栽培には適していると言われています。梨の大敵は霜で、花がつく頃に霜が降ると花の雌しべがダメになって、実が付かなくなってしまうんです。この農園があるあたりは傾斜がなだらかになっていて風が吹き下ろすので、霜が降りにくくなっています。また、平地に比べて昼と夜の寒暖差があるので、その点でも梨が育てやすくなっていますね。うちではお客さんの希望に合わせて多くの品種の梨を栽培しています。
3. 労力を惜しまず、品質を追求。
ー森さんのこれからの展望を教えてください。
これ以上規模を拡大することは難しいと思うので、とにかく梨とりんごの品質を上げていきたいですね。最高の品物をお客さんに食べてもらえるようにしたいです。
梨やりんごの栽培は、とにかく手間がかかるんです。草刈りや、病気や害虫を防ぐための農薬散布はもちろん、品種によっては1つ1つの花に花粉をつける「人工交配」という作業もしなければいけません。さらに、良い形と味の実を残すための摘果作業(適切な結果量を守るために、形の悪い実を間引くこと)をしたり、1つ1つの実に袋をかけたりします。交配や摘果などは機械化がほぼ不可能なので自分たちの手でやるしかないんですね。大変ではありますが、それらの作業を手を抜かずに徹底すると必ず味に返ってくると思っています。
それに加えて、今後は梨やりんごのブランド化も進めていきたいと思っています。梨づくり、りんごづくりのプロフェッショナルになることが、当面の目標ですね。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
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