見出し画像

【読書記録】まちづくり幻想

木下斉さん著の「まちづくり幻想」を読みました。学んだ8つのポイントを紹介します。

本書の概要はこちら

アフターコロナで、地方移住が盛り上がる中、地方人気に脚光が当たっています。しかし、ほんとうに地方からの流出は止まったのか。それはまさに「幻想」だと、著者の木下さんは断言します。地方・まちづくりをめぐるニュースの数々は、本質をとらえない、思い込みが蔓延しています。

なぜ、地方が衰退するのか。地域再生は挫折するのか。

本書は、地方の最前線で長年地域おこしを見続けてきた著者による、幻想を打ち破り、ほんとうに地域が立ち直るための「本音の」まちづくり論です。

Amazonより

1. まちづくりの答えは自分で探す

同じまちはないので、まちづくりの正解もそのまちによって異なります。

他の地域の成功事例を真似すれば成功するというのは、幻想です。

「まちづくりは何をすればいいか?」という質問も、そこには正解があると勘違いしているわけです。

「これをすればうまいく」なんてものはなく、何度も失敗しながら答えを自分で見つけるしかありません。

2. 時間は資産である

そもそも何十年もかけて衰退してきたわけです。それを短期間で改善できるわけないし、狙っても大失敗するだけです。

日々の地道な努力を積み上げるしかないし、それには時間がかかります。

時間はコストではなく資産と考え、長期間をかけて「まちづくり」という大きな課題を解決していく必要があります。

3. 企業誘致には罠がある

企業誘致はあくまで手段であって、目的は内需のはずです。

雇用条件や生産内容などを細かくみていかないと、企業誘致が地域に貢献するかは分かりません。

たとえば、本社と異なる給与体系で非正規雇用なら内需にはつながらないわけです。

そもそも生産人口が減少している地方では、企業を誘致しても働き手が確保できない可能性が高いです。

4. 人口は関係がない

その地域だからできる独自の産業と生活スタイルがあれば、地域を豊かにすることができます。

そこに人口は関係ありません。

北海道の江丹別(人口250人)でチーズを生産している農家がいます。

  1. 元々は牛乳の生産がメイン

  2. 相場がリッター80円のため大規模酪農ではないと継続できないと判断

  3. グラスフェッドで独自のブルーチーズを生産し、少量かつ高付加価値の生産に切り替える

  4. 少量かつ高付加価値の生産によって、リッター換算で1,000円の売上になる

  5. このライフスタイルに共感した移住者がレストランやセラピーを始めるといった動きにもつながる

工業化しなくても、ローテクでも地域は豊かになるわけです。

5. 求職者に「やりたい」と思ってもらえる仕事をつくる

若者が減り、採用難の情勢では、いかに「その仕事をやりたい」と思ってもらえるかどうかです。

そして、そういう仕事は事業内容も職種名も見直してでも作る必要があります。

宮崎県日南市では、人材が流出する理由をデータで分析しました。

その結果、若者が希望する「企画・事務職」の求人が圧倒的に少ないことが発覚。商店街の空き店舗をリノベし、「企画・事務職」を募集してくれるIT企業のサテライトオフィスにしたところ成功しました。

このように、働き手不足の社会では若者や女性の希望に合わせて事業体制を変える必要があります。

6. 外圧を利用する

何かと批判の多いまちづくり事業では、いかに説得するかが重要です。そして、説得は内容よりもキャスティングです。

何を言うかよりも、誰が言うかを徹底した方が効果が高まります。

  • 同じ組織属性の人(成功している同業他社の人)

  • 同じ階級の人(部長相手には、部長以上を用意)

  • 外部評価を持つ人(分かりやすい実績)

相手に合わせた発言者の用意が大切です。

7. 商売は儲けるため

繁盛するエリアは、「ここに出店すれば儲かる」とみんなが思っている地域です。

そこに、空き店舗対策なんてありません。

空き店舗を埋めたくて出店する事業者なんていないわけですから。

事業は儲けるためにやるもので、地域の人は地元の事業を全力で応援・協力すべきです。

  • 地域の店を積極的に利用する

  • 口コミを広める

誰かが繁盛したら新たなお客さんが地元に来てくれて、集積メリットが生まれます。

8. 関係人口は引き寄せる

関係人口とは、「消費力」と「労働力」という2軸で地域に貢献してくれる人のことです。

都市部のクリエイティブ人材が副業で付加価値を生み出す(労働力)

それによって生まれた商品・サービスを地元またはECで購入してくれる(消費力)

その人気企画に携わりたい新たなクリエイティブ人材が集まる

という好循環こそが、関係人口のメリットです。

お祭りなどの無料イベントで注目を集めても意味がありません。

関係人口は追いかけるのではなく、そのまちの産業やライフスタイルに引き寄せるものです。

そのためには、まずは地元の人たちが仕事や産業に自然体でプライドを持つことです。


いいなと思ったら応援しよう!