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授業内容(2年目)

授業開始から1か月が経過した。今年度の様子がだいたい見えてきたので、まとめてみる。

KHSにはレベル別で100, 200, 300という名前の3つのクラスがある。要するに、1年目、2年目、3年目のこと。全くヒンディー語ができない人は100クラスから開始。ある程度勉強して来た人は、入学試験を受けて、結果次第でいずれかのクラスから開始。アグラ本社には400クラスもあるらしい。

私は昨年、200クラスを受講して、年度末のテストをPASSしたので今年は300クラスを受講。PASSしなければ、同じクラスをもう一度受講することになる。学生ビザが目当てであれば、成績不良でテストFAILを続けて何年も在籍することは理論的には可能だが、遵法精神的、人生設計的、善良な魂の醸成的に、ほどほどにしておくのが吉でしょう。

授業科目は7つ。それぞれに科目番号がついていて、頭一桁はクラスレベルを表す。昨年から始まったヨガクラスには、科目番号がついておらず、100~300クラス合同実施。

301 スピーキング मौखिक अभिव्यक्ति 
新校長が担当。「このクラスは、ただのおしゃべりではなくてよ。自信を持って、心を込めて、正しく美しく人前で話す訓練です」というお言葉のもと、昨年に比べると遥かにまともな授業になっている。

302 ライティング लिखित अभिव्यक्ति
短い文章を書く、公式非公式の手紙の書き方、短い文章を読んで質問の回答を書く、要約を書く、などの「書く」授業。新任の講師が担当しているが、KHS系統のバックグラウンドではない人なので、何をどう教えるべきか全く理解していない様子で、非常に心もとない。

303 グラマー भाषा की संरचना और प्रयोग 
また別の新任講師が担当。若いし、JNUで言語学を専攻していたそうで、いろいろかなりまとも。いわゆる文法のクラス…なのだが、KHS方式をガン無視なので、試験対応が不安。

304 リーディング पाठवली गद्य और पद्य 
昨年、文学史でタイトルと概要だけを勉強した14世紀以降の文学作品を、さわり程度ではあるが内容を購読。カビールとか、スールダースとか、ミーラーバーイーとか。カビールは本当に以前から勉強したくて、日本でインド人に教えてもらおうとしたこともあったが、さっぱり要領を得なくて、ついに学ぶことができて、とてもありがたい。

305 ヒンディー言語史及びヒンディー語文学史 हिंदी भाषा और साहित्य का ऐतिहासिक विकास 
3人目の新任講師が担当するはずだったが、学外の仕事があるとかで、馴染みのKHS講師に交代。「ヒンディー語の発展」から、なかなか話が進まない。

ヨガ実践、ヨガ理論 
昨年と同じ講師。昨年は、年度末に急きょ無理やり開講されたので、訳の分からないまま終わり、試験も全く勉強していない内容が出題され、惨憺たるものだった。今年は最初から開講されたので、そこそこ学べるのではなかろうか。しかし、未だにシラバスが入手できていない。

さて、以前の記事にも書いたことがあるが、KHSという学校の性質についてもまとめておく。

KHSは、第二言語及び外国語としてのヒンディー語の研究、教育推進を行うインド国政府教育省傘下の組織だ。つまり、講師陣は国家公務員なので、仕事に対する情熱は無い。公務員なので待遇が良いこと、英語ができなくても大学進学ができて教員という頭脳職につけるということから、なかなか良いポジションだと思う。定年まで勤める人が多いようだ。

昨今のインドは、IITのようにコンピュータサイエンス分野など、グローバル経済視点で目覚ましい発展を遂げているが、正直なところ、人文科学分野、社会科学分野における調査研究領域においては恐ろしく未発達なのではないかと感じざるを得ない。
KHSは、大学ではないものの、外国人留学生を数十年に渡って受け入れている訳だし、「外国語としてのヒンディー語教育」の教育メソッドとか論文とか存在してもおかしくないのに、まったくそんな気配がない。「xx語話者のヒンディー語におけるyyの誤用例の考察から開発した外国人学習者向け文法」的な論文なんていくらでも書けるんじゃないかと思うのだけれど…。KHSの講師はドクターやプロフェッサーを名乗っているが、とても博士論文を書いているように思えない。単なる年功序列なんではなかろうか。

授業内容も、基本的にインド人小中学生の教科書を流用していて、「外国人への教育」ということはまったく考慮されていない。そして、おそらく、インドの伝統的な学問=サンスクリット語の学習が基盤にあるので、延々と「サンディ」(連声)などを暗記することこそ(だけ)が学問の真骨頂である、というベクトルを感じる。もしかすると、パーニニ(紀元前5世紀のサンスクリット文法学者)の理論をそのまんま踏襲してるんではなかろうか。

先だって、日本の大使館、領事館からICCR主催のヒンディー語講座についてお知らせがあった。オンライン開催で、世界各国の学習者が対象のプログラムだが、講義を担当するのは Indira Gandhi National University(IGNOU)。あれ…? こういうヒンディー語推進イベントって、KHSが担当すべきポジションなんじゃナイデスカネ…?  
実は前年度、どういう経緯か知らないが、IGNOUの教授がKHSに外国人留学生への聞き取りにやって来たことがある。多少お話を聞いただけでも英語が普通に堪能で、知的で大学教授然としていた。さらにIGNOUの外国人学生がヒンディー語をしゃべっているYoutubeを見せてもらったのだが恐ろしく流暢で驚愕だった。もちろん、IGNOUだけの功績ではなく、本人の努力や才能の結果だろうけども…。少なくとも、学究環境は悪くなさそうだ。これからインドでヒンディー語を学びたいと考えている方は、KHS、JNU、DUだけではなくIGNOUも検討されてもよいのではなかろうか。ウェブサイトも分かりやすいし。



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