厚かましくも、旅のこと。
「海外旅行で人生観変わるような馬鹿は、渋谷に行っても人生観変わっちゃうコンニャク野郎だよ」
私の考えではないです。笑
お笑い芸人の有吉弘行さんが、バラエティ番組で笑いながら口にしていた言葉。
私は、海外旅行が好きな方だが、この言葉には、何とな〜く、頷ける。
最近、「益田ミリ」さんという方のエッセイにハマり出した。
漫画家、イラストレーターでもある益田さん。
エッセイの所々に挟まれるイラストを見るのも、楽しみの一つ。
益田さんのエッセイに、こんなタイトルの作品がある。
「美しいものを見に行くツアー ひとり参加」
益田さんが、旅行代理店の添乗員付きのツアーに参加したエピソードが、国ごとに描かれている。
益田さんは40代。今まで海外旅行に余り行き慣れてなく、その上独身で時間とお金に融通が利く…となれば、添乗員付きのツアーに参加するというのも頷ける。
(失礼な言い回ししか思い付かず、すみません。)
私の母も、自由旅行なんて行けたもんじゃない。
ところが、私のような海外かぶれの20代は、「添乗員付きのツアーなんてつまらない」等と、ちょっとカッコつけて言ってみたりするのだ。
私は、どちらかと言えば自由な旅行が好きだから、可能な限りは、自分で何でも予約して、自分で調べて行きたい所に行く。
観光客が集まる場所でなく、もっと生活感に溢れた場所を求めて。
だけど、この益田さんのエッセイを読んでいると、「添乗員付きツアーも、それはそれで面白いんだ。」という気持ちにさせられる。
エッセイの中には、有名な観光地の感想だけでなく、例えば、ガイドさんのちょっとした話とか、一瞬にツアーを回る一期一会のメンバーとの笑えるエピソードなど、「旅ってそういうもんだよね。」と共感出来る話が沢山出て来る。
旅の合間、バスから降りると、皆一目散にトイレに並ぶ。
観光バスで、降りやすい位置に席を確保する事を目的に、毎朝ちょっとだけ、皆が早く集まる。
ひとり参加の場合、皆との食事で、どこに座ろうか迷う。
憧れた場所に行ったのに、「ここに来るのは一回でいいな。」と感じる。
益田さんの描くエピソードは、どれも「ありのまま」。
旅は、良い事ばかりじゃないし、逆に、映画みたいなトラブルが、毎回起こる訳でもない。
旅に出ただけでは、自分は変わらない。
変わるのは、周りの景色だけ。
環境を変えたからと言って突然、映画の主人公になれる訳ではない。
だけど、それが良いのだ。
それが面白いのだ。
全く違う環境の中に、いつもの自分が突っ立ってる。
少し、ちぐはぐ。
そのちぐはぐな中に、益田ミリさんが描くような、ドラマチックでないけど面白い、旅のエピソードが浮かんで来る。
益田さんは、あとがきでこう書いていた。
「それが自分の人生にとってどんな意味を持つのかは、まだわからない。」
(「それ」は、旅先でフィヨルドをみた思い出の事。)
冒頭に挙げた、有吉弘行さんの言葉を思い出す。
海外旅行に行って、本当に人生観が変わった人も勿論いると思うし、その人を馬鹿だとは思わない。
だけど、こうは思っている。
旅が自分を変える事はない。
旅を利用して、自分が変わる事はあっても。
余談…
すっかり益田ミリさんの大ファン。
この、日常に潜む面白さや、ほのかな感動、私が大好きな「さくらももこ」さんを思い出す。
これから益田さんのエッセイを見たら、多分必ず買います!!