折り紙作家の口癖「いや、手先が器用ってわけではないんですけど…」
「こんなすごい作品が折れるなんて、ほんとに手先が器用なんですね!」
「いや、手先が器用ってわけではないんですけど…」
この会話、7万回はしました(嘘です。でも30回以上はしてます)。友人の折り紙作家も大体この会話を経験しています。サークルで折り紙展示なんてしようもんなら一日に3回はします。
「いや器用だろ」
「謙遜すんなよ」
ごめんなさい違うんですよ!
ほんとに、手先が器用ってわけではないと思っているんですよ!!
1. 折り紙作家は手先が器用
(しょっぱなから否定!)
冷静に考えてあんなに細かく折り紙を折れる人たちが手先が器用じゃないわけないです。15cmしかない小さい紙をmm単位で折ってるんですよ、みんな。狂気の沙汰です。
客観的に見て、折り紙作家は手先が器用です。事実。
ひどい人なんて15cmの紙を48等分し始めますからね。約0.3mm幅で折ってるんですよ。等間隔に、黙々と、延々と。
もうそんなの紙がかわいそう!!謝れ!!(私の先輩の話です)
2. でも、折り紙作家は手先が器用だと思ってない
ほんとなんですよ。私も含めて、知る限りほとんどの折り紙作家は「自分は手先が器用だ」と思っていないんですよ。
(ちなみに私の折り紙作品はこんな感じです。私も、自分が手先が器用だとは思ってないです。あと、使う紙がめっちゃでかいです(畳くらい))
嘘をついているわけでも、謙遜してるわけでもないんです。
なんでこんな認識の差が生まれちゃうのか、大体以下のパターンに分けられるんじゃないかと思います。
パターンA「いや、コインとか積めないし…」
昔、TVチャンピオンで放送されていた『手先が器用選手権』を覚えている人はいますでしょうか?(いたとしたら多分同年代です)
コインを縦に積んだり、小さい穴に糸を通したり、トランプタワーを作ったり、人間離れしたことをやってのける選手権です。あれはほんとにすごかった。自分だったら手が震えて絶対にできない。
なので、
「それと比べると、私なんて全然…」
と折り紙作家は思っています。
でも、ちっちゃい鶴は折れます。じゃあ器用じゃねーか!矛盾!
パターンB「いや、見た通りに順番に折ってるだけだし…」
折り紙を折るときは大抵、折り図(こう折っていくと作品ができるよ、という手順の図)の本を見て、手元の紙と図を見比べながら一つ一つ折り進めていきます。時には数時間かけて数百工程も折ります。ほんとどうかしてます。
集中力や根気が必要なのは確かですが、懇切丁寧に作り方を説明してくれるので、ただ見た通りに順番に折るだけです。自分の力で完成した感が薄いんですよね。受け身な感じ。
だから、
「いや、見た通りに順番に折ってるだけだし…」
です。
「こいつめんどくせぇな」と思ったあなた。その通りです。
しかも、手順通りに折るのって全然簡単じゃないですからね。
パターンC「いや、手先が器用だから作品が完成するわけじゃないし…」
パターンBと違ってパターンCは創作折り紙をする人に多いです。
自分オリジナルの作品を創り出すには、それ専用の設計をしたり、紙をいじくりまわして徐々にパーツを決めていったり、折るのに最適な紙を探しに行ったり、本番の”折る”作業以外の作業がてんこ盛りです。
なので、そもそも手先が器用なことが作品創りにそんなに大きな影響を与えないと思っています。それ以外のことの方がよっぽど大事、という考え方ですね。
建設業界では「段取り八分、仕事二分」なんて言うそうですが、同じ感じだと思います。
でも実際は、手先の器用さ(というか折りの精度)は作品の完成度に超超超影響します。しまくります。実力差が如実に出ますからね。上手い人は本当に上手いです。
パターンD「いや、私の作品はシンプル寄りなので…」
(否定ばっかりでめんどくせぇなぁ、もう!)
折り紙作品と一口に言っても、シンプル目な作品から、指の先まで作りこむような超複雑な作品まで幅広く存在しています。当然、複雑な作品の方が手先の器用さが求められます(シンプル作品の方が誤差の影響が大きいとかはあるので、実は一概には言えないんですけどね)。
なので、
「私はシンプル系の作風なので、複雑系の作品を折る方々と比べると私なんて…」
となります。
いや、知らんて。
パターンX 複合型
上記が混ざってきます。めんどくささとめんどくささのコラボレーションです。地獄です。
私の場合はパターンA×パターンCみたいな感じでしょうか?
「いや、私より手先が器用な人いっぱいいるし、アイデア出すのが一番難しいというか…」
知らんよ!もっと自分に自信を持て、私!!
折り紙作家はなぜか自己肯定感が低い人が多い気がします。ほんとなんでなんでしょうか??
謙虚さ、ともなんか違うんですよね。卑屈さ?(失礼)
3. じゃあどうすればいいんだよ!
まず、折り紙作家の皆さん、自分は手先が器用であると認めるところから始めましょう!大丈夫、自信持って!普通の人は紙を何時間も細か~~~くいじったりなんてできません(しません)。
あなたは十分、手先が器用な人です!!
素直に「ありがとう」って言おう?スーパービーバーもこう言ってるし。
次に、折り紙作家に会って「なんか褒めたいな」と思った皆さん、褒めるのは”手先が器用なこと”ではありません!残念ながらその先にはめんどくさい応対しか待ってません。
折り紙作家が求めているのは、”その作品がいかに素晴らしいか”褒められることです。折り紙作家のことはいつも紙をいじくっている身体の弱いボディビルダーだと思ってください。折り紙は筋肉。
求められているのは、
「キレてるよ!!」
「腹筋6LDKかい!!」
「肩にちっちゃい重機乗せてんのかい!!」
です。
つまり、
「この犬の作品、めっちゃトイプードルですね!!」
「後ろ脚の関節の折りがきまってますね!!」
「このカブトムシ、跗節まで折られててすごい!!」
です。(多分)
「いやいや、そんなの難しいって」というあなた。大丈夫。多数派です。
わからない時は「かわいい」か「かっこいい」と言いましょう。
それも判断つかない場合は、とりあえず「すごい」と言っときましょう。
ちなみに、下手に「リアル!」とか言うとめんどくさいことになるのでやめておきましょう(実体験に基づくアドバイス)。
さて、ここまで長々書きましたが、折り紙作家は褒められたら大体なんでも喜びます。「いや、私なんてそんな……」などと言ったからといって、喜んでいないわけではないのです。ゴニョゴニョ言いながら内心ニヨニヨしてるんです。気にしないでください。ただめんどくさい人達なだけなんです(私含めて)。気軽に褒めてくださいよろしくお願いします。
以上、折り紙作家の変な口癖「いや、手先が器用ってわけではないんですけど…」でした。
いい加減直さないとなぁ…。
いやでも、ほんとに手先が器用ってわけじゃないんだよなぁ…(まだ言う)