「センチメンタルな旅・冬の旅」は持っておくべき写真集?
お世話になっております。
写真事務所プリズムライン・専従者のmoeです。
季節はいつの間にか秋。
ずいぶんと前回の投稿から時間が空いてしまいました。。。
実は我々、自宅兼事務所の引越し作業に追われていました。
フリーランスの引越しはなかなか物件探しの段階から困難を極め、1ヶ月ほど様々な体力を使いました。。。(疲れ)
そのへんの記事もまた書けたらいいなと思います!
さて、今回から少しシリーズ化できたら良いなと思っている企画を投稿します。
その名も『写真事務所の本棚より』
先述の引越しの話に少し戻りますが、、、、
まず我々の自宅にはまぁまぁ本がたくさんあります。
引越すにあたって、1冊ずつ本をダンボールにしまって、新居でまた出す。
新しい家の新しい場所に、1冊ずつ本をしまっていると、普段生活している中ではなかなか全部の本を手に取ることってないので、「あ〜こんな本もあったな」とか「これこれ。いい本なんだよな〜」って思うことが多くて、
せっかく語れるほどの思い入れのある本をたくさん持っているのに、このまま本棚に眠らせておくのって勿体ないなと思い、
本当に好きな本をnoteに毎回一冊ずつ投稿しようかなと思った次第です。
なんかちょっとでも趣味が合う方がいたら良いななんて思います。
ちょうど読書の秋ですし。
では最初の投稿はこちらから。
荒木経惟『センチメンタルな旅・冬の旅』
アラーキーが闘病の末に亡くなった愛妻・陽子さんとの日々を写した、名作写真集です。"センチメンタルな旅"と"冬の旅"は、撮影時期が異なっていて、センチメンタルな旅は2人の新婚旅行を写したもので、冬の旅はその約20年後の生活や闘病する妻の姿を写したものです。
1970年代に自費出版されたセンチメンタルな旅は、部数に限りがあったので、今ではかなりの高額で取引されてるみたいです。(GINZA SIXの蔦屋書店で100万円で売ってるの見たことあります)
私が持っているのは、1991年に出版されたものです。
有名な写真集なので、自分の思いを語るのはものすごく恐れ多いですが、
大好きな1冊なのでどうしてもここで書きたくて。
手触りの良い赤のカバーをそっと開くと、なんだか舞台の幕が上がったような気がします。
赤の書き文字から始まるこの写真集。魂が込められていて、一気に私はここから写真の世界に引き込まれます。
新婚旅行だけど、笑って楽しそうにしている写真は一枚もありません。
なんでだろう?と考えたり、色々想像するのが良い。
そこから"センチメンタルな旅"に移り変わります。20年後へ。
さっきまでの新婚旅行の写真とは違って、楽しそうに手を取る姿や愛猫のチロを抱っこする姿があります。
私はいつも、一枚いちまいに写る陽子さんがすごく綺麗だなと思います。
とてもリラックスしていて、写真を撮られているのに撮られていないみたい。夫婦の関係性が変化したような部分を写真でみているような気がしてきます。
闘病の時期が続き、死へ向かっている時の写真は、ついページをめくる手が早くなってしまいます。写真と一緒に短い文章も読みながら進むと、とてつもないアラーキーの叫びの中に取り込まれたような気になります。
何気ない風景の、駅も家も電車の中も、映画の中のワンシーンのようで、胸が締め付けられてしまいます。
もう私は「モノクロの写真が織りなす世界に完全に引き込まれて、どっぷりと浸かっている」とここでふと気がつきます。
写真集と併せて読むのが好きな、愛妻・陽子さんのエッセイ『愛情生活』
(読みながらつけた付箋が、、、、)
この本の中ですごく好きな一文があります。
彼は私の中に眠っていた、私が大好きな私、を掘り起こしてくれた。彼に遭っていなかったら、そんな事には気づかずに過ぎたかもしれない。ごくフツーの感性の男の人と結婚し、寝ぼけ眼のまま一生を送ったかもしれない。
(荒木陽子著『愛情生活』より引用)
これを読んだ時に、写真集やこれまでの写真展などでみてきた画が頭の中でブワーっと駆け巡りました。
写真というひとつの表現方法を通じて、こんなにも豊かな気持ちになったことが初めてのように思えました。
『センチメンタルな旅・冬の旅』と『愛情生活』を併せるのおすすめです。
これからも大切にしたいと思える本です。
それでは今回はこのあたりで。
次回も引き続きよろしくお願いいたします。
写真事務所プリズムライン
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