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スタートアップ経営10年目の気持ち


1. はじめに:10年目の節目に寄せて

私が創業者であり、代表をしているカクトク株式会社は、今年の2月から設立10年目に入ります。
ベンチャー企業が10年生存する確率は「6.3%」とも言われていますが、さらに創業事業を継続できるスタートアップはもっと少ないと思います。そんな稀有な挑戦や経験を続けてこられたのは、カクトク社の社員やパートナー様はもちろん、多くの方が力を貸してくださったおかげです。心から感謝するとともに、今後はこの節目を次の大きな成長へとつなげていく責任を強く感じています。
本noteでは、なぜ約10年前にカクトクをはじめたのか、そしてその歩みの中で培った経営者としての想いや学び、今後のビジョンを綴ります。社員のみなさんにはこれまで以上に「自分たちの挑戦」に誇りを持ってもらいたいですし、同時にこれからカクトクへ関わることを検討いただく皆様方にも、この会社が取り組む世界観や大きな可能性を感じていただきたいと思っています。

〈簡単な自己紹介〉
当社は、1.6万人の営業フリーランスと約600社の営業代行会社をネットワーク化した国内最大級の営業支援プラットフォーム「カクトク」を提供しております。https://client.kakutoku.jp

現在までで、累計で5,000社を超える企業様に活用いただいており、コニカミノルタ様や日清様などの上場企業からスタートアップ、従業員10名未満の中小企業など幅広い企業様にご利用いただくサービスに成長しております。

2. 創業当初の想いとこれまでの道のり

創業の原点:営業が“世の中を進歩させるラストワンマイル”だと気づいた日

もともと私が起業を意識しはじめたのは、高校時代からでした。
「起業」へのぼんやりした憧れから、同じ意思を持つ友人と起業につながりそうなイベントへ参加や主催活動をはじめ、様々な経営者に会う機会が増えました。その過程で、本当に自身のやりたいことが「自分がこの世にいなかったら、生まれなかったかもしれない仕組みや文化をつくり、それをどこまで広げられるかに挑戦したい」と言語化できていきました。それが高校の卒業時期の頃で、大学在学中にそのテーマと重なる起業機会を探そうと考えました。
その機会は早々にやってくることになります。高校卒業間際に参加したStartup Weekendをきっかけに、18歳で創業初期のスタートアップだったシタテルにインターンとして参画することになります。
シタテルでの飛び込み営業からはじまった経験が僕の人生の大きな転機となりました。初期の顧客開拓に向けて、営業の「え」の字も知らないまま、1人でトークスクリプトとターゲットリストを作成し、アパレルセレクトショップへの飛び込み営業をはじめました。
初日の1件目は、営業先のオーナーさんに「ごめん。ちょっと何を言ってるかわからない。」と言われて撤退しました。笑
なんとか初日に成果を出すべく、1店舗回る度に道端でトークスクリプトを改善しました。結果、初日の飛び込み10店舗目で「成約見込み」を得ることができました。後日、当初私が入る前にとある営業代行会社に依頼し、見込み含めて成果0だったことを聞き、倍嬉しかったことを鮮明に覚えてます。
その後、成果が安定しはじめたタイミングで、他エリアでの営業チーム立ち上げやマネジメントを経験させてもらいました。このシタテルでの経験からたどり着いたのは「営業職の本質的な価値」。営業は単に売上を作るだけではなく、顧客が価値に気づいていない新しいソリューションを提案し、背中を押すことで世の中を少し前進させる――営業はイノベーションのラストワンマイルを担う役割だとという気づきです。

カクトク設立の1年前(19歳)にスタートアップイベントで飛び込みピッチしたときの写真です。笑

「営業の働き方」を変えるプラットフォームへの挑戦

しかし、一方で私自身の恵まれた体験とは異なり、営業職のイメージは当時から決して良いものではありませんでした。残業が多い、属人的、非効率なテレアポや飛び込みが当たり前など、「仕事として魅力的に見えない」理由がいくつも存在していました。
「そんな営業の働き方を変えたい」という想いと、「企業にとって売上に直結する分野は、イノベーティブな変化を起こせれば大きなインパクトが生まれるかもしれない」という考えが芽生えはじめました。また、これはまさに「世の中の仕組みや文化を変えること」につながりそうでした。そうして「営業×働き方」に起業テーマのスコープを絞りました。
19歳頃から事業構想を描きはじめ、20歳のときにカクトク株式会社(当時:株式会社Nitlon)を設立しました。
創業初期はまさに手探り状態。副業やフリーランスという概念すらほとんど知られていない中で「副業・フリーランスの営業マッチングプラットフォーム」の立ち上げ。
初期は意外にも反響があり、企業と営業職の方のマッチングも生まれ、幸先よく感じました。それも一瞬で、なかなかプロジェクトが成功に結びつかない。原因は様々ありましたが、副業の営業は日中の時間が動けない点、企業も丸投げになりやすい点などが主要因でした。
そこから社内でいろいろな試行錯誤を重ねていきました。
徐々に「営業活動量の担保」や「マネジメントしやすい仕組み」など成功に向けて、クリアすべき要所がいくつかわかってきました。そこからフリーランスの営業人材を案件ごとにチーム組成して支援する”Pro director” をリリース。エンプラ企業をメインターゲットに成長軌道に乗りはじめました。その最中、コロナ禍で状況が一転、窮地の中で生存可能性を模索する過程で、現場の社員を中心に生まれたのが、「カクトクconnect」でした。
これを転機にコロナ禍における死地からの単月黒字化の達成、短期間で過去最高売上の数倍の規模への成長を遂げ、現在では中小企業から大企業まで年間1,500社以上が利用するサービスに育ちました。
(詳しくは、以前のnoteに書いてます。)

カクトクの設立前(2015年頃)のピッチブックに記載していた初期の事業ビジョン

3. 経営者としての学びと反省点

「何を成すか」にこだわって走り続けた10年間

この10年を振り返ると、私は経営者というよりも“事業責任者”でした。常に「事業としてどう成立させるか」「どう価値を提供するか」を優先してきたため、組織設計よりもサービスやプロダクト改善に時間を割くことが圧倒的に多かったと思います。
当時から周りのスタートアップの中には、組織にしっかりリソース割きながら会社を作っていく起業家もいたり、「経営者のしごとは採用だ」「人事制度を初期からつくるべき」などのアドバイスをもらうことも少なくありませんでした。
しかしながら、僕の起業の原点も相まって、「何を成すかが重要でビジネスモデルや成長ドライバーが見えない中で、どれだけ組織を作り込んでも意味がないのではないか」という疑念もありました。また、国内に360万社も会社がある中で、わざわざゼロからスタートアップやるからには、創業の大義を見失うくらいなら解散したほうがいい――そのくらいの考えでやるべきだと思っており、とにかく事業を前に前に進めることを優先しました。
結果として今、カクトクは営業の外注市場における新しい価値やムーブメントを少しは生み出せる存在になってきているのではないかと思います。また、他社が類似サービスに挑戦しては撤退していく中、僕たちがなんとか生き残ってこれたのは「可能性を信じ続け、大義を優先にして走った」からなのではないかと思います。

組織強化が次のステージを切り開く

一方で、これから先の高い成長率を維持していくためには、組織や採用がもっと重要になってくると痛感しています。カクトクは保守的に見てもかなり強いビジネスモデルの種にはなってきていると思います。 今後は、多方面における“挑戦の量と精度”が必要だと考えています。 個人的な仮説として、IPO後に成長が停滞したり、一定の事業規模で踊り場から抜け出せなくなる会社の多くは、この“挑戦の量と精度” のいずれかが維持できず、レバレッジがかかりづらくなってくることにあるのではないかと考えています。創業からの「イケイケドンドン」で赤字を掘りながら突き進み、コロナ禍における死地を乗り越え、単月黒字を達成し、現在では戦略的に先行投資をして更なる成長を目指すというフェーズを辿ってきている身として改めて痛感するのは、アグレッシブな投資をし続けることの難しさです。
小並感のある例えではありますが、一定の成長率を維持するためには、例えば年間1億の成長投資で300%の効果は3億ですが、10億の場合は30億、100億の場合300億になります。仮に1施策の予算を1億使うと仮定しても、100億の場合、施策精度が百発百中でも100個の施策が必要です。
しかも、実際には1億使える施策は想像以上に少ないです。つまり、元手の規模に応じて、”挑戦の数”を増やす必要があり、高い投資対効果を実現するにはそれぞれの”挑戦の精度”が求められます。
カクトクは、今後この”挑戦の数と精度”の壁を乗り越える必要があります。幸いカクトク自体のポテンシャルとしては、まだまだ期待できる成長ポテンシャルはあり、この壁を乗り越えさえすればまだまだ果てしなく高い天井だと捉えています。
そのために私を含めて現在のメンバーは、各人が担える戦略や施策の規模と精度を引きあげるべく各々が自己成長し、加えて会社として新規戦略や施策を担えるリーダーをもっと迎え入れる必要があります。
また、会社としても優秀なリーダーやプレイヤーが活躍できるフィールドを整備し、スケール感のある挑戦を多方面で仕掛けられる組織に進化させなければ、ポテンシャルを引き出しきれない――そこが完全に積み残しになってしまったことが僕自身、9年間を振り返っての大きな反省点でもあります。


4. これからのビジョンと成長方針

「営業労働市場」を変革する

私たちが向き合っている「営業の労働市場」を取り巻く領域は、これからますます大きな変化が求められると考えています。

  • 正社員中心の営業組織が、環境の急変や多様な働き方の要望に対応しきれない

  • 労働人口減少のなかで、営業人材の不足が深刻化

  • 副業やフリーランスの選択肢が広がり、優秀な人材が個人で動き出す流れが加速

  • AI活用を中心としたセールステックの発展による業務変化

こうした市場背景から、これまでの正社員・契約社員・派遣・業務委託などの既存の契約形態の枠組みに収まらず、企業の「営業組織の持ち方」や「営業職個人の働き方」が大きく塗り変わっていくと考えています。
既にカクトクの創業初期と比べものにならないほど、副業やフリーランス、営業代行事業者の市場内には正社員市場に見劣りしない優秀層の母集団が形成されてきており、これは今後さらに加速すると思います。

「カクトクconnect」を軸にした成長戦略

現在、年間1,000社を超える企業が利用する「カクトクconnect」を軸に、私たちは次の10年で「営業労働市場を支えるプラットフォーム」をつくり上げることを目指します。
単純なマッチングでは終わらせず、企業は革新的で良質な製品やサービスをより多くの顧客にすばやく提案できる強力なもう一つの営業組織を構築できる仕組みを提供し、営業職個人は、個々人の求める理想的な生き方を具現化できるワークインフラを確立し、業界全体の貢献に尽力したいと考えています。
既に、多くの営業職の方が独立後、カクトクを活用し年商数千万〜1億円クラスを稼ぐチームに成長したり、営業代行業界を代表する会社に成長したり、地方や海外へ移住したりと、さまざまな生き方やキャリアが生まれています。企業側も従来の営業外注では実現できない活用方法によって、中小企業や大企業関係なく、様々な営業成果につながる事例が出てきています。
私たちは、この流れを一過性で終わらせず、営業における「売れる仕組み」と「理想の生き方」を両立させる仕組みの磨き込みを続けていきます。
特にここから数年かけて以下などに取り組んでいきます。

  • 正社員雇用を上回る営業外注クオリティの追求

    • 営業外注における理想的な品質基準や評価モデルの確立(プロダクト・仕組み)

    • カクトク独自の営業プロフェッショナル審査プロセスのアップデート

    • 営業プロフェッショナルの意味のある活躍データベースの充実化

  • 営業プロフェッショナルにとってのさらなる収入手段の拡充

    • 既存市場の奪い合いではなく、市場拡大に向けた成長戦略推進

    • 営業関連市場の変化を見据えた、新たな営業支援モデルの提案

    • プロ営業活動の持続可能性の向上に向けた生産性改善サポート

    • 営業フリーランス市場のあり方の再定義と新規サービスリリース


5. 次の10年に向けた抱負と営業労働市場の変革に興味のある未来の仲間へ

痛みを伴う変化や挑戦を恐れずに、さらなるステージを目指す

営業という領域がこれから迎える構造変化の中心で、私たちは「本質的な価値」をとことん追求し続ける。そうすることで、営業の在り方はもちろん、働き方や企業文化を根本から変えられるポテンシャルがカクトクにはあると信じています。
10年目は、これまで以上に大きな意思決定を迫られるタイミングになると思います。痛みを伴う変化や挑戦を恐れずに、私たちは「何を成すか」を見失わず、さらなるステージを目指していきます。
社員のみなさんが胸を張って誇れる会社にし、そしてこれからカクトクへ転職等を検討する方が「この挑戦に参加したい」と思える場所にし続けるために、私個人としても一経営者として一層挑戦していく所存です。

営業労働市場の変革に興味のある未来の仲間を求む!

前述した通り、カクトクは非常に展開性のある事業アセットとビジネスモデルの土台ができてきています。今後はより多方面での精度の高い挑戦を推し進めていくべく、より多くの優秀な経営層やマネジメント層の方々と共に大きな勝負を仕掛けていきたいと思っています。
現在、カクトクは特に少数精鋭のメンバーで活動しており、様々なポストを用意できる余地があります。 そのため、私たちの世界観や営業労働市場の変革にともに挑戦に興味を持っていただける方は、ぜひ下記SNSにご連絡をお待ちしております。
Facebook:https://www.facebook.com/seiya.mitsuta/
X(Twitter):https://x.com/19_ks

現在のカクトクのVision・Mission


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