「#第8回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!
こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。
第8回大会は、139作の力作が集まりました。
今大会も皆さんがそれぞれ創意工夫を凝らされた作品ばかりで、楽しく拝読させていただきました。
この大会に「傾向」はありません。
すでにプレ大会を含めると、9回を数えるコンテストですが、今後とも過去の受賞作・講評作にとらわれず、伸び伸びと、書くことを楽しんでいただけますと嬉しく思います。
【大賞】 メィジ さん (Amazonギフト券3000円分贈呈!)
大賞は、メィジさんの作品です。
童話のような柔らかい語り口でありながら、高い描写力で情景が克明に浮き上がらせ、ずっしりとくる読後感を味わわせてくれる物語でした。
常に死と隣り合わせの現場で働く子どもたちの姿、そこで起きたジョンの悲劇。
《きらきら星は、煤まみれの空には見えない》と冒頭にあるように、お星様になったジョンの光は子供たちのもとに届くことは、きっとないのでしょう。
それを知りながらも幼い子供たちを宥め、童歌を口ずさむ少年の姿、そして頬に伝う《灰色の涙》が劣悪な環境を示し、悲壮感を際立たせます。
この物語は決して過去のものではなく、今もどこかで起きているかもしれない出来事でもあります。
あえて時代をぼかしたことでより深く想像させる内容になっていたのもよく、今なお続く「児童労働」の問題を、誰にでも伝わるよう端的に、しかし鮮烈に物語で示した稀有な社会派作品で、まさに大賞にふさわしい作品でした。
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【優秀賞】 たらはかに(田原にか) さん
優秀賞は、たらはかに(田原にか)さんの作品です。
天邪鬼な発言をしてしまうウイルスが流行る世界の中で繰り広げられる物語は、読者も「発言の真意」を探ろうと、思わず何度も読み返したくなるようなものに仕上がっていました。
疑心暗鬼になっていく男の姿には痛ましさがありつつ、最後に訪れた絶望が今まで一つだと信じていた男の中の「家族像」を一気に瓦解させ、読み手に複雑な読後感を催させます。
ひねりとブラックユーモアが満載の、「嘘」で塗り固められたユニークな作品でした。
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【審査員特別賞】 市川 摂 さん
審査員特別賞は、市川 摂さんの作品です。
うまい、の一言に尽きます。
「ジェンダーバイアス」を題材に、《ネイル》《(綺麗な)所作》という言葉に、無意識に女性性を感じとってしまった読者に釘を刺すような、エッヂの利いた物語でした。
ただ「彼」は、果たして「(生物学上の)男性」なのでしょうか。
ここにも、1つのジェンダーバイアスが隠れているような気がしてなりません。
物語の真意は分かりませんが、いい意味でわざとらしい性的なモチーフを散りばめることで読者の想像を大いに煽りつつも、物語の内容は極めて「ジェンダーレス」であることに、市川さんの表現力の高さと、感覚の鋭さが窺える作品でした。
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【Pick Up①】 北野レイ さん
そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。
1作目は、北野レイさんの作品です。
時間の概念をまだ理解しておらず、「パパとたくさん遊びたい」と素直な願望をぶつける娘の無邪気な姿の中に、多忙で子どもと遊ぶ時間も満足に取れないであろう父の姿がじんわりと浮かんで見えて、読み手も思わず鼻の奥がツンとしてしまうような物語に仕上がっていました。
ハートウォーミングな部分がありつつも、社会風刺を孕んだ内容は胸に迫るものがあり、より充実した家族時間がとれる世の中がくることを切に願いたくなるような作品でした。
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【Pick Up②】 もえり さん
2作目は、もえりさんの作品です。
好きな人と思いが通じ合えたのも束の間。
想い人と仮に結婚してしまえば、誰からも突っ込まれる名前になることを恐れ、逃げ出してしまう南ちゃんの姿が可愛らしい作品でした。
ただ、付き合ってもいない状態から結婚にまで思考を飛躍させながらも、彼が婿養子になる選択肢を検討しないまま逃げ出してしまう姿からは、実はそこまで好きではなかったのかも…?とも感じられ、ただ可愛いだけでなく、ちょっとしたブラックユーモアさえも感じられる奥深い作品に仕上がっていました。
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【Pick Up③】 Kiyu Hoshizora さん
3作目は、Kiyu Hoshizoraさんの作品です。
Twitterやインスタグラムなど、SNSを使っている方であれば、一度はこういう想いを抱いた方もいるかもしれません。
日々のよしなしごとを気軽に「呟く」だけの場が、誰もが簡単に見られて、繋がれる環境ゆえに、いつしか大変な意味を持つ場になってきたように思います。
結局、《自然体の君》はどこへ消えてしまったのでしょうか。そして、その自然体を出せる場所はどこにいってしまったのでしょうか。
より多くの他人と知り合える利便性はありながらも、そこに人のさまざまな欲求が絡み、窮屈になってしまいつつある現代を象徴する作品だったように思います。
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【Pick Up④】 びー さん
4作目は、びーさんの作品です。
明るい語り口の中にほのかに広がる虚しさが、読み手の胸を締め付ける物語でした。
自殺はせずとも、病死してしまえば幼い娘が取り残される状況は変わらないことや、そもそも余命宣告どおりに死ねるのか・生きながらえる可能性も含め、なんとも言えない気持ちを催させます。
また、日頃死を考えていた男の《生きててよかった》という最後の一言がより胸に重くのしかかる構造となっており、やるせなさを助長させます。
明暗のコントラストと、構成のうまさが光る作品でした。
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まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!
こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!
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第8回大会連動「私の大賞」企画はこちらから!
応募期間終了後、「第8回書くを楽しむ140字小説コンテスト」応募作の中から、読み手の皆さんのイチオシ作品を選んでもらい「私の大賞」として推薦していただく企画も行っています!
今回は39の推薦があり、大いに企画を盛り上げていただきました。
誠にありがとうございました。
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最後に
以上、結果発表と講評でした。
今回もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。
そして次大会も、引き続き皆さんのご参加をお待ちしております。
第9回大会は2週間遅らせまして、大会概要は2021年10月17日(日)19:00ごろ発表。
そして作品の募集期間は2021年10月23日(土)19:00〜10月31日(日)19:00となっていますので、お気をつけください。
これからも引き続き「#書くを楽しむ小説コンテスト」をよろしくお願いいたします。