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「#第0回書くを楽しむ140字コンテスト」大賞発表+講評!
こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。
「#第0回書くを楽しむ140字コンテスト」は、皆さんの協力の甲斐あって大きな盛り上がりを見せ、165作の素敵な作品が集まりました。
全体の講評としては、ジャンル不問とはいえ、ある程度偏りが出るかな…と思っていましたが、恋愛・SF・ホラーとバランスよく集まり、一読者としても非常に楽しませていただきました。
しかし、その中でも今回は「死」や「老い」を扱った作品が多かった印象です。
これは140字の中に「何か衝撃な展開を」「時の経過で濃いドラマ演出を」と模索する書き手心理の現れなのかなと、個人的には推察しています。
また、謎解き要素があったり、読者に解釈を委ねたりするような作品も数多く、読み手としての手腕を試された大会でもありました。
優れた作品ばかりでしたが、今回は140字という字数の枠を超えて想像をフルに掻き立たせてくれた作品を、大賞に選ばせていただきました。
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【大賞】 kota さん (Amazonギフト券2000円分贈呈!)
幾月も日照りが続き、田畑は枯れ果てた。老いた龍神に力はなく、最早この地に未来はない。だが人とは愚かなもので。命を懸ければ願いが叶うと信じているらしい。また今年も、人柱として谷に幼子が放り込まれた。
— kota(一次創作用垢) (@kotakaritsu) January 23, 2021
力を振り絞り、龍神は子を背に乗せ天へと駆け昇る。
恵みの雨は、龍神の最後の涙だった。
大賞は、kotaさんの作品です。
不変的な人の世の虚しさや愚かさを憂い、その営みを見守ってきた龍神が呆れと僅かな希望を込めて、最後に涙(雨)を流すというエッヂのきいた物語でした。
シンプルで研ぎ澄まされた文章は情景も浮かびやすく、深い没入感が得られます。
そして余分な書き込みがないからこそ、飢えと焦りで盲目的になる人間たち、肉親を差し出す親たち、人柱となった子供たち、それをただ受け止めるしかない龍神と、それぞれの「心のありよう」に想いを馳せられる部分もあり、無限の広がりを感じさせてくれました。
本作は投稿直後からリアクションも多く、そのセンセーショナルな作風に衝撃を受けるとともに、悲哀に満ちた物語が読者の心を大いに動かしたのではないかと思います。もちろん私自身も、その1人です。
まさに大賞にふさわしい作品でした。
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【優秀賞】 村崎樹 さん
男子生徒のネクタイには白縞が、女子には赤縞が入っている。
— 村崎樹🦊❄️1/29 清らかな雪は白金の狐の愛にとける (@murasakitatsuru) January 24, 2021
「夏海、彼ネクだ」
秋穂がニヤニヤ指摘する。カレカノはネクタイ交換をするものらしい。
「性別で色変とか時代錯誤」
一蹴する雪菜の赤縞ネクタイの裏に小さなシミがあるのを、わたしだけが知っている。四人分のスカートが揺れる三年の春。
ここからは勝手に創設した賞です。笑
大賞だけでは味気ないと思い、いくつか作ってみました。
優秀賞は、村崎樹さんの作品です。
実はこの作品を最初に読んだとき、物語の「真意」が全く分からず…。笑
しかし【わたしだけが知っている】の意味を咀嚼していくと、ある解釈にたどりつき、なるほどと感銘を受けました。
情報量の多い作品ですが140字の中で見事にまとめられていますし、その秘密を知った途端「恋」の甘酸っぱさが胸に押し寄せ、深いカタルシスを得ることができます。
また、唯一物語に登場しない、「春」を冠するであろう主人公の名を想像するのも面白く(雪菜がいるので春菜ではなく、春子?と)。笑
「読む楽しみ」を存分に味わわせてくれる、素敵な青春物語でした。
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【最多リアクション賞】 繚光 さん
朝、下駄箱を空けると、シューズに画鋲と泥が入れてあった。僕は笑った。教室へ行くと、机にいわれのない罵詈雑言が書いてあった。僕は笑った。放課後、校舎裏で水を大量に飲まされた。皆で笑った。
— 繚光【リョウコウ】@140字小説 (@ryoukou07) January 29, 2021
夜、寝る前に歴史の本を読んだ。昔は「泣く」や「怒る」という感情があったらしい。
僕は笑った。
今大会で最も多くのリアクションを獲得されたのが、繚光さんの作品です。
前後半で物語の印象がガラリと変わる作品で、そのユニークな発想に引き込まれました。
予想外のSF展開が面白いですし、いじめ描写はオーソドックスながらも【僕は笑った】という5文字を連続させることで「違和感(フック)」を作り読ませ、最後のオチにまでつなげている構成面のうまさも光ります。
また、「笑う」というポジティブな感情表現しかできなくなった未来という世界観設定は、同調的かつ画一的な現代社会への風刺もきいており、考えさせられるものがありました。
その訴求力ある作風が、多くの方に支持される所以だと感じます。
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【審査員特別賞】 名南奈美 さん
小五の夏休み、「嘘みたいだ」と言えば嘘にできる力を得た。失敗しても嘘にすれば成功になる。その力で私は幸せな大人になった。娘ができた。健康に育って、結婚をした。美しい花嫁になった娘を見て、幸せすぎて泣いてしまった。「あぁ、夢みたいだ」次の瞬間、私は目を覚ました。窓の外から、蝉の声。
— 名南奈美@長編読んでください (@Na_mi_naminami) January 25, 2021
審査員特別賞(笑)は、名南奈美さんの作品です。
この物語の面白さは、読む人によって解釈が分かれるところかなと。
少女が特殊な力を手に入れ理想の人生を送って…というファンタジー作品、はたまた最初から夢だった…という夢オチ作品のようにも読めます。
もしかすると名南さんの中に確固とした答えがあるのかもしれませんが、そこをあえて読者に委ねるところが純文学のようでもあり、読み応えがありました。
【窓の外から、蝉の声】の一文で、【小五の夏休み】に場面が戻ったことを表現し、さらに最後のみ文末を体言止めにすることで余韻を演出する高い筆力にも脱帽です。
物悲しさがありつつも、これから少女はどのような人生を送っていくのか。
そこを想像する楽しみがあるのも、魅力でした。
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【Pick Up①】 Rakkasei さん
袋麺1つ分けて食べるのが楽しみだった。兄が調理、弟は洗い物。母が仕事から戻るまで、兄弟はそれで空腹を凌いだ。
— Rakkasei@字書きLv.1 (@Rakkase49081461) January 23, 2021
「久々にやるか」「いいね」「高級割烹より旨いぜ」「食ったのバレたら嫁から処刑だよ」「帰るか」「兄貴、また寄るよ」
仏壇の線香の煙が揺らめき、写真の母が笑った気がした。
そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。
まず1作目は、Rakkaseiさんの作品です。
育ち盛りの子ども2人に袋麺1つ。きっと幼少時の彼らの生活は貧しく、つらいものだったでしょう。
しかし、すっかり大人になり、歳を重ねた兄弟たちは【高級割烹より旨い】【食ったのバレたら…】と以前と違い、食うに困らぬ生活を送っている様子が分かります。
昔を懐かしみ袋麺を仲良く分け合う兄弟を、幼いころそばにいてあげられなかった母親が、今度は常に見守ってくれている。
時が流れ、環境が変わっても、家族の絆は変わらないことを感じさせてくれる作品でした。
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【Pick Up②】 東 さん
今まで、ひとりで目覚める朝が当たり前だった。それなのに、すっかりこの温もりから離れられなくなったのは、君と出会い、君が教えてくれたものだ。
— 東🍶🍫 (@ay3slw) January 29, 2021
カーテンの隙間から差し込む光が、君と一緒にいることを祝福してくれているようで幸せな気持ちになれる。
「おはよう」
今日も君が好きだ。
2作目は、東さんの作品です。
付き合いたてのカップルの物語かと思われますが、場面の切り取り方がうまいですし、素朴な筆致で書かれることで「好きな人が隣にいる喜び」が読み手側の心にもじんわりと広がっていきます。
また、【(人肌の)温もり】という言葉のあとに、さらに【光(朝日)】という温かみを連想させる言葉を重ねることで、「温度」を感じられる作品になっているのもひとえに素晴らしく。
とても生感ある物語に仕上がっていたように感じます。
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【Pick Up③】 億命綴セカイ さん
#140字小説 太陽が嫌いだ。朝陽は吐き気がするし、昼の光は目眩がする。学校にも行けず暗い部屋で過ごしていると、家族から「暗い」「気持ち悪い」「そろそろ社会に適応しろ」と怒鳴られた。僕は泣きながら一人で病院に行った。血液検査が終わる。「君は吸血鬼です。今まで辛かったね」僕はまた泣いた
— 億命綴セカイ🧬140字小説 (@Sekai_Okumei) January 30, 2021
3作目は、億命綴セカイさんの作品です。
なぜ自分は大勢の他者と違うのか。
何かどうにもできない因子が絡んでいるのではないか。
そんな現代に通ずる内容を、あえてファンタジー調にすることでキャッチーな物語に仕立て上げ、題材を取っ付きやすいものにされていたのがよかったです。
だからといって読者が軽く受け流す内容になることもなく、家族の罵倒・主人公の泣く描写・医師の言葉を入れることで、感情移入がしやすく考えさせられる物語になっていました。
題材の扱い方や読ませ方に長けた書き手さんだと思います。
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【Pick Up④】 深月凛音 さん
揺れる電車。人ごみに押し潰されそうな私をあなたの手が守ってくれている。清潔なシャツの下の力強いその鼓動。あなたを見上げると「ん?」って顔をして、私を見返してくる。「私たち、恋人に見えるかな」「かもね」あなたはくすくす笑う。「さっきからもう、夫婦なのにね」区役所の帰り、揺れる電車。
— 深月凛音 / RiNNE (@rinne_midzuki) January 30, 2021
4作目は、深月凛音さんの作品です。
一言で言うと、とにかく眩しい。笑
新たな関係性・ライフステージに進んだ2人の様子を、微笑ましく書いてあるのが印象的でした。
夫婦になったことを、あえて再確認しあうことで喜びを噛みしめると同時に、【守る】【力強い鼓動】という表現、そして彼に身を任せている主人公の姿からは、共に信頼しあい、支え合って生きることへの強い意志も感じられます。
読んでいるこちらまでドキドキして、2人を応援したくなってしまう。
そんな素敵な作品でした。
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【Pick Up⑤】 いちじく さん
無職で金もない俺。
— いちじく (@2KpSznsr9Dr4OMf) January 31, 2021
質屋に『時間、買い取ります』の看板。質屋の主人は
「成功者ほど1日、24時間で足りない」と。
20代無職の俺は暇。1時間を売ったら1万円札をくれた。
セット料金で一日を売れば30万円。
俺は金を酒と博打で全部、使う。
また時間を売る。繰り返し、
残ったのは札束と老いぼれた俺。
5作目は、いちじくさんの作品です。
「一時の快楽(金)」と「二度と戻ってこない時間」を天秤にかけた男の話ですが、設定のユニークさだけでなく、「男」の捉え方が読者によって両極端に分かれそうなところが面白く感じました。
若い男は時間を浪費してしまったことを後悔しているのか、時間を持て余していたからこそ欲望を満たせて満足しているのか。
読み手側がそれまで培ってきた価値観に照らし合わせながら読ませるところがよかったです。
また、「人生は一瞬だからこそ、有意義な時間を」というメッセージ性をも感じられ、非常に奥が深い作品となっていました。
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まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!
こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読まれてみてください。
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最後に
以上、大賞発表と講評でした。
今回はテスト大会にもかかわらず、たくさんの方が参加して、盛り上げていただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
この勢いをそのままに次大会へつなげていきたいと思いますので、引き続き皆さんのご参加をお待ちしております。
次回、記念すべき第1回目の大会概要は2021年2月14日(日)発表
そして作品の募集期間は2021年2月21日(日)〜2月28日(日)となっています。
これからも「#書くを楽しむ小説コンテスト」を何卒よろしくお願いいたします。
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