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「#第5回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!
こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。
第5回大会は、155作の力作が集まりました。
全体の講評として、今回は新規参加の方が多く増えたこともあり、さらにバリエーションに富み、個性光る大会となったように感じております。
いつもご参加くださる方々におきましても、さまざまな趣向を凝らしていただき、毎度楽しんで拝読しております。
その中でも今回は既存の題材・物語に対して、作者それぞれのオリジナリティーを足して、ユニークに仕立て上げられた作品が多かったように感じます。
その中でもきらりと光るエッヂのきいた作品を、今大会の大賞に選ばせていただきました。
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【大賞】 暇十朗 さん (Amazonギフト券3000円分贈呈!)
親父が家族に隠れてなにをしていたのか、それを知ったのは葬儀も済んだ頃だった。泣き崩れる母、あまりの衝撃で固まる妹。代理人を名乗る男は、沈痛な面持ちで俺に語りかける。
— 暇十朗#140字小説 (@himazyuro) June 20, 2021
「息子に継いでほしいと、遺言書にはそう書かれています」
無茶だ。正気の沙汰ではない。
「俺に魔法少女をやれと……?」
大賞は、暇十朗さんの作品です。
父の死とともに現れた《代理人》、そして彼の口から告げられた父の秘密。
その事実を知って各々の家族がとるリアクションと、ただならぬ空気感に、読者側も不倫?借金?などと、不穏な想像を掻き立たせます。
しかし、最後に知らされる事実は「父が《魔法少女》」であったこと、そして後継ぎとして「息子」が指名されたこと、と予想外の展開に読者も呆気に取られてしまいます。
その衝撃のオチもさることながら、母親と妹は魔法少女になれないのか、そもそも魔法少女は世襲制なのか等々、ツッコミどころの多い内容がTwitter利用層にもガッツリとハマり、現時点で「3.4万いいね」と、大変なバズを起こした作品でもありました。
また、漫画新連載でいえば見開きカラーページ、アニメ1話でいえば最初のCM前の数分を思わせる引きの強さもあり、これから始まる壮大な冒険譚の一幕を感じさせる面もあり、読者の高揚感を掻き立てます。
たかだ140字、されど140字。
140字小説の底力をいかんなく発揮し、また大きな可能性を見せつけてくれた素敵な作品として、今大会の大賞に選ばせていただきました。
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【優秀賞】 ビター さん
数年ぶりに人里にやってきた。なんだこれは、皆マスクをしている。口裂け女は非常に戸惑っていた。しかしやってきた以上、いつもの作業をしなくては気が済まない。暗い路地にたち、歩いてきた男に「私、きれい?」と裂けた口を見せる。男は一瞥し、汚物をみるような目で言った。「マスクしてください」
— ビター🦜インコ探しています (@yabuko_inthebox) June 20, 2021
優秀賞は、ビターさんの作品です。
《口裂け女》が久々に市中に姿を表すと、皆がマスクをしている状況。
戸惑いながらも、《私、きれい?》と決まり文句を吐いて口元をあらわにすれば、裂けた口に驚くよりも先に示された不快感。
コロナ禍であることを逆手にとって、有名都市伝説を一味違うテイストに仕立て上げられていたのが面白く、発想力の豊かさが光る作品でした。
オチ方も綺麗ですが、きれいと言うでもなく、ポマードと唱えるでもない彼は、このあとどうなってしまうのか、こちらも先を想像する楽しみがありました。
既存ホラーの題材にコメディーと世相を融合したユニークさ、そしてちょっぴり皮肉まじりで社会風刺の要素を盛り込んだ深い内容に光るものを感じ、優秀賞に選ばせていただきました。
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【審査員特別賞①】 ミックジャギー さん
私は数日前から、人が纏う色が視える様になった。
— ミックジャギー (@22ou812) June 19, 2021
十人十色。色の意味は判らないけど、色の濃さは心の重さだろうか?
会社の同僚はかなり色が濃い。気になって休憩中に声を掛けてみた。
同僚は私をじっと見つめている。
「え..なに?」
「いや..心配そうな顔もいいなって」
彼の桜色、また濃くなった。
審査員特別賞1作目は、ミックジャギーさんの作品です。
突然、人のオーラが色で見えるようになった主人公。
その色の特性も分からぬまま、どんどんそのオーラが桜色に染まっていく同僚の姿を描かれています。
主人公に関心を寄せる同僚の色が特に濃いことから、その人の性格が色として現れるというよりも、他者から主人公に向けられる感情のみが「色」として表出するのかもしれません。
《桜色》がプラスの意味を持つ色なのか、もしかするとちょっとしたマイナス因子を孕んだ色なのかははっきりと描かれていませんが、少し解釈に幅を持たせたのもよく感じました。
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【審査員特別賞②】 (@kachaka8) さん
トラ転したわけでも不思議な生き物に出会ったわけでも光り輝くアイテムを拾ったわけでもない。なのに扉を開けて家を出た瞬間に世界は私を主人公にした乙女ゲーの世界になっていた!同級生もバイト先の先輩も会えば鳴り響く好感度上昇音なのに、気になる幼なじみだけが対象じゃないなんてひどくない!?
— 👾 (@kachaka8) June 21, 2021
(※お名前について、絵文字は文字化けする可能性がありますので、アカウント名で表記させていただきます)
審査員特別賞2作目は、(@kachaka8) さんの作品です。
急に現実世界に乙女ゲームシステムが適用されてしまった主人公。
思いを寄せるのは幼馴染のみなのに、肝心の彼・彼女の好感度はいつまでも上がらず対象外のまま、他者の好感度だけが上がっていくことに戸惑いを隠せません。
実際のゲームにおいて、攻略対象外のキャラに強く惹かれることはあるかと思いますが、それをファンタジーテイストの物語に置き換えてユニークに書き上げられており、面白いです。
これから主人公と、一生好感度の上がらない幼馴染の恋愛模様はどうなっていくのでしょうか。主人公の奮闘が気になる物語でした。
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【Pick Up①】 花鳥めいび さん
「この黒縁眼鏡の似合う殿方はおらぬか」
— 花鳥めいび (@kacho_meibi1220) June 19, 2021
「何やってんの?」「昨日の誕生会で姫様が給仕役の男を気に入ったんだとさ。その男が去り際に落としたのがあれで、持ち主を探してるってわけ」「ふーん」
あぁ…昨夜姫様と過ごした甘い時間は夢じゃなかった。ぼやけた視界のまま壇上へ進む。次は……俺の番。
そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。
1作目は、花鳥めいびさんの作品です。
「シンデレラ」を思わせる設定を下地に、姫が《眼鏡》を落とした給仕係を捜すという、アレンジの利いた物語になっていました。
ぼやけた視界が眼鏡をかけると同時に、鮮明にその先にいる姫の顔を捉える映像が文を読んで想像できますし、ぼんやりと夢見ごごちであったものがしっかりと輪郭を持って浮かび上がっていくさまもよく、二重の情景の美しさが感じられる素敵な作品でした。
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【Pick Up②】 いちじく さん
狸は人間の教師になりたかった。 父の狸に化け方を教わり、教師に化けられた。父の狸は「晴れている間しか人間に化けられない」と忠告。
— いちじく (@2KpSznsr9Dr4OMf) June 19, 2021
教師に化けた狸は教室へ。生徒の前で黒板に文字を書く。
快晴が一転、にわか雨に。
元の姿に戻る狸。
生徒に謝ろうと振り返ると、教室の全部の机に狸、狸、狸…。
2作目は、いちじくさんの作品です。
なぜたぬきたちが人間の教師や生徒に憧れたのか、その詳細は不明ですが、何か大きな契機があったのでしょう。
教師に化けたたぬきがうまく授業を終えられるのかハラハラし、しかし正体がばれてしまったことで謝ろうとする主人公たぬきの真摯さに胸を打たれ、そして雨が降ると同時に教室全体がたぬきに変わってしまうところに絵面のかわいらしさを感じ…と感情がフルに揺さぶられる物語でした。
絵本のような緩い空気感も好印象で、癒された人も多かったのではないでしょうか。
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【Pick Up③】 きよっち さん
本日はお足元の悪い中ご来店誠にありがとうございます。
— きよっち🐈🐾 (@kiyoxxx921) June 20, 2021
お客様に迷子のご案内を申し上げます。
青いパーカーに白いシャツ、緑色の半ズボンをお召しの「たっくん」とおっしゃる4歳の男の子をお預かりしております。
お心あたりのお客様は1000万円ご用意の上後ほど指定の場所にお越しくださいませ。
3作目は、きよっちさんの作品です。
ショッピングモールなどでよく流れる迷子のアナウンスと思いきや、終盤で状況が一変。身代金要求の館内放送であったことが分かり、一気に緊張が走る物語となっていました。
一文目にある《足元の悪い中》という水を使った演出も、この先起きる不穏さを予感させるもので、効果的に機能していたように思います。
これから幼児の救出劇がいかにして行われていくのか、サスペンスアクション映画の触りを思わせるような鬼気迫る作品でした。
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【Pick Up④】 パティシエ田中 さん
寂しくて眠れない夜、決まって私は祖父に会いに行きます。祖父に会うには手順があって、まずパスワードを入れるんです。そうしたら四角いボタンを押して、住所を打ち込みます。祖父の家の住所です。これで完了。あぁ、ほら、祖父がいました。ここはGoogleの作った地球。あの日の祖父と会える場所。
— パティシエ田中 (@tabetai_keeki) June 24, 2021
4作目は、パティシエ田中さんの作品です。
自身の話で大変恐縮ですが、実は私もこの主人公と似た経験をしている一人で、実家をGoogleで調べると、タイミングがいいのか・わざと見計らって出ているのか、最新版になっても、いつも実家のそばには父の姿があります。笑
静止画ではあるものの、少し道を先に進めてみると人のほうも微妙に動いていたりして、妙な生感が感じられるものです。
おそらくこの物語の主人公も(もしかすると田中さんも?)、その生活感あふれる祖父の姿を見て、生きていたころのリアルな生活の息遣いを感じ取り、安堵しているのかもしれません。亡くなっているうえに、生前離れて暮らしていたとなれば、そのさまを眺める感慨もひとしおでしょう。
プライバシーなど難しい問題もありますが、先進技術も悪いことばかりではないと、ポジティブに捉えた作品だったように感じます。
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まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!
こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!
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第5回大会連動「私の大賞」企画はこちらから!
応募期間終了後、「第5回書くを楽しむ140字小説コンテスト」応募作の中から、読み手の皆さんのイチオシ作品を選んでもらい「私の大賞」として推薦していただく企画も行っています!
今回は10作の推薦があり、大いに企画を盛り上げていただきました。
誠にありがとうございました。
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最後に
以上、結果発表と講評でした。
今回もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。
そして次大会でも、引き続き皆さんのご参加をお待ちしております。
次回は少し日程に変更がありますので、ご注意ください。
毎度各月2週目が概要発表、3〜4週目が作品募集となっておりますが、第6回大会は1週間遅らせまして、大会概要は2021年7月18日(日)19:00ごろ発表。
そして作品の募集期間は2021年7月24日(土)19:00〜8月1日(日)19:00となっていますので、お気をつけください。
これからも引き続き「#書くを楽しむ小説コンテスト」をよろしくお願いいたします。
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