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「#第14回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!
こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。
第14回大会は、120作の力作が集まりました。
今大会は、恋人や家族を題材にした微笑ましい作品が特に多かったように思います。また、世界情勢を鑑み「戦争」を題材にした作品が多かったのも、印象的でした。みなさんの思い思いの作品、毎度楽しく拝読させていただいております!
それでは以下、結果発表です!
【大賞】 夏見 有 さん(Amazonギフト券3000円分贈呈!)
夕焼け色の教室の隅で、ボロボロにされた自由帳に涙を落としていると、居残っていたクラスメイトが黒板を指さしながら声をかけてきた。
— 夏見 有 (@you_natsumi) April 25, 2022
「ドラゴン、描いてよ」
断れずに描いたら、ちょうど下校のチャイムが響く。黒板消しに手を伸ばしたが、先を越された。
「消さないで。明日みんなに自慢するから」
大賞は、夏見 有 さん の作品です。
主人公の宝物の「自由帳」、そこには主人公の「好き」がたくさん詰まっていたことでしょう。それをボロボロにされ、否定された主人公の沈痛な胸の内にギュッと胸が締め付けられます。
しかし、その憂いを晴らすようなクラスメイトの言動が頼もしく、強いカタルシスを与えてくれます。
「好き」を認めてくれる人との出会いで、主人公の人生はどう変わっていくのでしょうか。
さまざまな思いや想像を引き起こさせる物語力の高さに魅了され、今回の対象に選ばせていただきました。
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【優秀賞】 幸 さん(Amazonギフト券1000円分贈呈!)
待合所で夜を明かし、始発のバスに乗り込んだ。眩しい朝日と共に峠道へと差し掛かる。すっかり明るい窓の外には初夏の風が吹いている。
— 幸 140字小説 (@megumi_140moji) May 6, 2022
抱えた鞄にそっと手を添える。バスを降りたら花屋へ行こう。カーネーションを添えて手渡す場面を思い頬が弛む。
到着まではまだ長い。心地よい微睡みに身を任せた。
優秀賞は、幸 さん の作品です。
清涼感あふれる緻密な情景描写が美しく、読み進めるごとに、どんどん作品世界にのめり込んで、初夏ならではの「青々しい空気感」を肌で感じられるような、素敵な物語でした。
また、その瑞々しく弾むような文章からは、里帰りできること、またそれによって久々に母親に会えることへの主人公の高揚感が垣間見えます。
人物・情景それぞれを余すことなく描写しきった、幸さんの類稀な表現力が光る作品でした。
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【審査員特別賞】 れんが さん
俺は魔界の入り口近くに冒険者向けの飯屋を開いている。が、メインの客層は魔物たちだ。
— れんが (@xLEZ7vRmyC82HvW) April 26, 2022
どうやら魔界には料理の習慣がなく、俺の料理にいたく感動したそうな。
常連の魔王は、人間を貪り食う生活はやめようと真剣な顔で言っていた。脱サラならぬ脱勇者して店を開いたが料理で世界を救えるとは僥倖だ。
審査員特別賞は、れんが さんの作品です。
「脱サラ」という文言から、彼はきっと現世から異世界に転生・転移してきたのだと推察しますが、現世の食事がとある世界を救うとは…、ましてやこれから魔物たちに挑んでいく冒険者向けの食堂が、魔物たちの溜まり場になり、世界を救うことになるとは…、主人公も思っていなかったことでしょう。
脱勇者したつもりが、また勇者になってしまった主人公の奇妙な人生が垣間見える、ファンタジー物語でした。
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【Pick Up①】 太陽と月など さん
お世話になりました。皆様の教えを成果に結ぶのが恩返しだと…。パソコンに向かって挨拶している。オンライン会議に慣れたはずだが、転勤の送別会は覚束ない。しかも突然のインターホンが邪魔をする。慌てて受け取った荷物は大きな花束。大歓声が沸き起こってスピーカーが震えた。心なしか画面が滲む。
— 太陽や月など (@as1mind1soul) April 23, 2022
そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。
1作目は、 太陽と月など さん の作品です。
仕方がない部分ではあるのですが、どこかリモートでの別れとなると形式ばった印象や直接顔を合わせて話せない寂しさを感じてしまうものの、リモートならではのサプライズに思わずほっこりと心が温まってしまう素敵な作品でした。
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【Pick Up②】 太陽と月など さん
ランドセルを置き、お小遣いだけ持って私は家を飛び出した
— ☁️☁️☁️ (@wank0nyank0) April 25, 2022
15分後家に帰ると、母は玄関で待っていた
それはもうカンカンに怒って
駄菓子屋行くならそう言いなさい
私は沈黙を貫いた
しかし、突然母は怒るのを辞め、涙目になって私を抱き寄せた
私は後ろ手に持つ、1本のカーネーションを必死に隠した
2作目は、 ☁️☁️☁️ さん の作品です。
母親がやや過保護な気もしなくはないのですが(笑)、母が子を思う気持ちと、子が母を思う気持ち、その両方が心地よく、140字の中で見事にまとめられています。
怒られながらも母親から必死でカーネーションを隠す子供の様子もリアルで可愛らしいですし、その花が渡された途端、涙目だった母親が号泣してしまうのだろうなというところも想像でき、ほっこりする物語でした。
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【Pick Up③】花鳥めいび さん
ある園児のクレヨンは、一色だけ減りが異常に早い。
— 花鳥めいび (@kacho_meibi1220) May 4, 2022
「何を描いてるの?」
「これは文化包丁でー、こっちは果物ナイフ。ナタ。ノコギリ。サバイバルナイフだよ」
目を輝かせ、見せてくれたのは灰色のクレヨンで特徴を捉えた、鋭い刃物。
戦く私に、先輩が笑って言った。
「この子の家は、金物屋よ」
3作目は、花鳥めいび さん の作品です。
刃物ばかり描いている園児を見て、少し心配になってしまう主人公の気持ちには共感しつつ、その背景には園児の家業に対する憧れや誇りがあったことが分かり、微笑ましい気持ちになる物語でした。
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まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!
こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!
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最後に
以上、結果発表と講評でした。
今回もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。
第15回大会は、私情で申し訳ないのですが、少し大会期間をずらしまして、大会概要2022年6月26日(日)19:00ごろ発表。
そして作品の募集期間は2022年7月2日(土)19:00〜7月17日(日)19:00の2週間募集いたします。
結果発表は2022年7月24日(日)予定です。
次回もみなさまの素敵な作品をお待ちしております!
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