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ラブドール作りに没頭する高橋一生の狂気/【ネタバレ感想】『ロマンスドール』

※この感想はネタバレとなる箇所に触れています

 ラブドールの製造会社で働き始めた高橋一生は「人間に最も近い最高のラブドールを作るのが夢」と語る工場長のきたろうとともに日夜女体の研究に明け暮れる。ようやく試作品が出来上がるも社長のピエール瀧はドールのおっぱいを揉みまくり一言。
オッパイはデカけりゃイイってもんじゃねえ。大切なのはリアリティ。巨乳より美乳だ。作り直せ!」とありがたい至言をいただく二人。
 高橋一生ときたろうは居酒屋ミーティングである秘策を思いつく。きたろうは呟いた「本物から型を取らねえとダメだ」
果たして医療用として偽って胸の型取りをさせてくれる美術モデル募集する。そして工場に現れたのが蒼井優だった。すったもんだのあげく型取りが終わり、一目惚れした高橋一生はいきなり告ってOKを貰い、結婚(なんだよバカロウ)。
 そして高橋一生はラブドール業界戦国時代を生き抜くため身を粉にしてドールを作り続けるのであった。という話(雑)。

原作小説は未読なんですが、イノベーションの重要性、新規開拓、そして企業スパイなどてんこ盛りでこのままラブドールのお仕事映画の勢いで進んで欲しいなと思ってしまったのですが、メインテーマは結婚生活です。だと思うんです。しかし結婚後数年間にわたり高橋一生はラブドール作りの仕事を妻に隠し続け、また蒼井優も夫の仕事を知らないというのもどうなんでしょうか。夫婦のディスコミュニケーションが、夫が自分の仕事を隠すために生まれてしまう。または妻である蒼井優が置物の人形のように扱われ、夫は人形を本物へと近づけるのに没頭してしまうというそのアイロニーはとても面白かったのですが、そのあたりはもう少しうまく描いて欲しかった。メインである夫婦生活が絵空事のような気がしてしまい、ラブドールというアダルトグッズの存在に内在するファンタジーと現実といったコントラストに本題が引っ張られてしまっている印象を強く持ちました。
 “セックス”という人間の根源的なものを重ねられる映画であったのでその辺りの描き方の温度差がもう少し欲しかったですね。 

蒼井優が死んじゃうことは冒頭で語られるのですが、死んだ蒼井優とそっくりのラブドール作りに没頭する高橋一生の狂気。そこまではいい。そのあとそのラブドールを売りに出し、しかも大ヒットして喜ぶ高橋一生。
いいのかそれで?自分のパートナーとそっくりの人形が全国の男に使用されるんだぞ?
その狂気はいらなかった(笑)

キャストでは高橋一生の飄々とした中に漂う狂気が見えてよかったです。あと社長役のピエール瀧(祝復帰)。ラブドール業界(というのがあるのか?)で商売する善悪入り混じったキャラクターはピエール瀧でないと出せない魅力がありました。

鑑賞日:2020年1月28日

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「百万円と苦虫女」のタナダユキ監督が、自身初のオリジナル小説を自ら監督・脚本を手がけて実写映画化した大人のラブストーリー。美大卒業後、ひょんなことからラブドール製作工場で働き始めた北村哲雄。やがて彼は美人で気立ての良い園子に一目ぼれして結婚するが、自分がラブドール職人であることを園子に隠し続けていた。毎日が平穏に過ぎていく中、哲雄は仕事にのめり込み、園子とは次第にセックスレスになっていく。そんなある日、園子はずっと胸の中に抱えてきた秘密を哲雄に打ち明ける。不器用さと複雑さをあわせ持つ主人公・哲雄を高橋一生、優しさの中に強さを持つ妻・園子を蒼井優が演じる。
公開日:2020年1月24日
2020年製作/123分/PG12/日本
配給:KADOKAWA



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すずきたけし
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