北海道ツーリング9日目|2022.7.21
目覚めると稚内は曇天だった。
もう、この記事は朝の天気から書き始めるのが恒例になってしまったが、
予報では晴れ。それを信じたい。
早々に撤収し、キャンプ場を出た。
ハートランドフェリーのターミナルで6:30発礼文島行きのチケットを購入。バイクを乗船待機場へ停める。
すでにバイクが一台停まっていた。
熟年のベテランらしいライダーは島巡りをしていて、礼文は30年ぶりという。待機している車のドライバーにも声をかけ続け、フェリーの係員にも話しかけていた。久ぶりの渡島の興奮がこちらにも伝わってくる。年齢が幾つになっても離島へ渡る朝というのはなぜかテンションが高まるものなのだ。
離島への旅はこれまで意識することはなかった。バイクで走るには閉じられている世界であると感じていたためだ。
しかし灯台を巡るようになってから離島へ行く理由ができたのだ。航路標識である灯台は、島には必ずあるといっていい。西日本ツーリングの際に離島に渡った際、その新鮮さにハマった。山口県にある小さな六連島では車ににはナンバーがなく、三重県の菅島ではスクーターでヘルメットをしている島民はいなかった。このおおらかさがいい。
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フェリーは稚内港を出港し甲板から礼文のある方向の空を見やると、雲がすこし明るくなっていた。
しばらくすると稚内灯台が見えてくる。5日前に訪れた際には強風と寒さに震えながら撮影した灯台を沖から眺める。乗船時にもってきた望遠レンズで写真を撮る。晴れていれば素晴らしい構図になったものの、バックの利尻島に雲が垂れ込めているのが悔しい。
しかし礼文島が見えてくると、雲が消え、青空が広がっていた。
島は晴れていた。
礼文島は最北の離島で、南北26km、東西8kmの細長い島で、北部は二つの岬が東西に突き出している特徴的な形をしている。
今回は最北端のスコトン岬(アイヌ語で「夏の集落」の意)の先にある小島「海驢島(とどじま)」にある海驢島灯台を始め、同じ北部の金田ノ岬灯台、南の奮部灯台と元地灯台の四灯台がお目当てである。
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2時間弱でフェリーは礼文島に接岸。
8:30、礼文島上陸。
まずは北に向かい、金田ノ岬、そしてスコトン岬へと向かう。
海沿いの道を走る。雲がまだあるものの青空が広がるが、風は冷たい。右手には雲が晴れた利尻島がそびえていた。なんどもその美しさにバイクを止めては写真を撮ってしまう。
利尻富士とも呼ばれる美しい姿は北海道銘菓「白い恋人」のパッケージで見たことがある人もいるだろう。
北海道の天塩から礼文島まで、ライディング中の視界には必ずこの利尻富士があるのだ。そして明日はこの利尻島にも渡る予定である。
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金田ノ岬に到着。草原のなかにたたずむ灯台は北海道の灯台の風景としては定番だが、何度見ても美しい。晴れていれば特に。
そしてスコトン岬に。海驢島灯台を撮影するためだけにもってきた3kgもある望遠レンズがようやく役に立つ時がきた。
緯度としては最北端の灯台は宗谷岬灯台だが、“最北感”としては海驢島灯台が上だろう。この最果てな風景は来てみないと感じられない。
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さて、今回は島の北にある久種湖畔キャンプ場に先にテントを張り、バイクの荷物をおろして身軽で島内を目一杯巡ろうという魂胆である。早々にキャンプ場で受付すると、すぐさま今度は南にむかった。
2012年の吉永小百合主演の映画『北のカナリアたち』のロケセットを残した「北のカナリアパーク」に。しかし目的はここではなく、ここから徒歩で向かう奮部灯台である。カナリアパークの見学者の「あのひとどこいくの?」「あの先行けるの?」という奇異な目を背中に浴びながら一人灯台につづく続く畦道を灯台に向かって歩いた。
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その後、今回の最大の難関、元地灯台に向かった。
「元地灯台15km」という看板に目を疑ったが、どうやら「・」が消えていただけだった。びっくりさせやがって。
桃岩歩道を灯台まで登る40分の行程だが、息を切らしながら休み休み登る。自分は絶対登山はしないと誓う。途中、休憩中に登ってきた道を振り返る。
そこには素晴らしい景色が広がっていた。登山もいいものかもしれないと思った。
ようやく元地灯台まで辿り着いた。
灯台周囲の眺望は感動的で、今回の北海道ツーリングではもっとも素晴らしい眺望である。これは感動的だ。汗だくになり、1リットル用意したポカリスエットが空になるほど苦労した甲斐があるというもの。
まあ、本当は礼文岳の8時間コースや、礼文林道などはもっと素晴らしい絶景が期待できるのだろうが、不十分な装備や時間的にもお預けである。
装備といえば、バイクツーリングであるが灯台巡りではこうしたちょっとした高台の畦道を登ったりすることが多いのでトレッキングシューズを履いている。今回ほど履いてきてよかったと実感したことはない。ソールが平らなライディングシューズであったなら足を滑らす危険もあり、ここまででも登ってこられなかったかもしれない。
しかし下りはあっという間であった。
時間はすでに2時を過ぎていた、上陸してからすでに5時間以上が経っていた。どこかで記憶を失っていたのか?時間を忘れるというのはまさにこういうことなのだろう。
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島の最南端のカランナイ岬、あつもりロードの終点「知床駐車場」に。礼文島にも知床があるが、こちらはただの駐車場である。いたって普通の、なんの変哲もない駐車場だ。皆ここに訪れ、しばし波の音色に耳を傾けUターンして戻っていくのである。
利尻富士と羽を休めるウミネコたちを眺めながら、島の西側、桃台猫台展望台へ。桃に似ている岩と猫に見える岩から桃台猫台。シンプルである。
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北に戻りゴロタ岬展望へ向かう。
またハイキングである。登ること30分。先ほどよりは傾斜が緩やかで足取りも軽い。
ゴロタ岬展望台からの眺めは今回の北海道ツーリングでもっとも最高な景色であった。(あっという間に更新)
すでに17:00。あっという間に時間が溶けていく。本当はここで夕陽まで居座りたかったが、気温が下り風も出てきた。(気温20℃)、そして日の入りは高緯度のため本州よりも遅く19:16である(同日の東京は18:54)。
朝に訪れたスコトン岬に立ち寄り、キャンプ場に戻った。
あっというまに雲が青空を覆い隠し、フェリーが一緒だったライダーは夕焼けが見られなくて残念がっていた。しかし日が暮れると空には星が見え始めた。どうやら雲が晴れたようだ。肉眼でもはっきりと天の河が見えるほどに鮮明に星がみえる。
急ぎカメラと三脚を担ぎ、久種湖沿いから星空を撮った。
周囲に町など大きな光を発するものがないからだが、礼文島は夜も凄かった。
今思えばバイクでまたゴロタ岬まで行って星空を撮ってもよかったのだが、それはまた次回の楽しみに取っておこう。
こうして礼文島の1日が終わった。振り返ってもそれほど忙しいことはしていない。「島時間」というゆったりした時間感覚というのがあるが、そんなものはなかった。絶景に足を止める時間が無数にあったからだろう。
小さな島だから1日もあれば十分と思っていたが、最低2、3日は滞在したい島であった。
そして今日一日なにも食べてないことに気がついた。
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