北海道ツーリング13日目|2022.7.25
本日が北海道ツーリング最終日である。
今日の夕方には苫小牧からフェリーで大洗に帰る。
で、晴天である。
苫小牧までそんなに距離ないし、今日は10:00くらいまでキャンプ場でダラダラしようかなーなんつって朝8:00にのんびりと目覚めたが、この晴天である。
この晴天を眺めながらキャンプ場でダラダラするだと?
冗談ではない。
走るぞ。
思い出せ。
今までどれだけ青空を渇望しながらこの北海道を走ってきたと思ってんだ。
ということで荒々しく撤収。
朝露でビショビショのテントとフライシートはそのまま丸めて絞って水切ってビニール袋に入れる。昨晩の夕飯の道具も適当にボックスに放り込み(こういう時のボックスは大変便利です)、30分で撤収完了。
普段なら4:00の日の出と共に走り出しているのに、最終日で堕落した。普段のツーリングならあった4時間を失ってしまったのだ。これを痛恨と言わずしてなんと言おう。
キャンプ場から海沿いに坂を下ると、眼前には青い空、青い海が広がる。
人はあまりの絶景を目にすると「ひょーーーー!」っと声が出るのである。
ひょー!なのだ。
まさにこれが北海道ツーリングである。
海では昆布漁が最盛期。小船で昆布を引き上げ、陸一面には昆布が敷き詰められる。ちなみに昆布干しのバイトは日給1万円とけっこうな額である。長期北海道滞在の若人はぜひ(何者だ)。
そんな海沿いの道を快走。
ほのかに磯の香りと昆布のミネラル臭(そんなものはない)がヘルメット越しに鼻をくすぐるのであった。
浦河から静内は馬のメッカ。昆布の匂いに別れを告げ内陸の道道に進路を取る。
「時間よりも楽しそうな道を選べ」
僕のツーリングのモットーである。
馬、馬、馬である。
そういえばゆうきまさみの漫画『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』の舞台はここ静内で、主人公の駿平が牧場に厄介になるのも北海道ツーリングでのトラブルからであった。
競馬ファンではないが、馬というのは生き物の中でもとても美しいと実感する。
🏍
そしてこんなに天気が良かったらなら釣りしかあるまい。
なんか今までの分を取り返そうとするかの如く楽しんでいるが、釣りである。昨日と違って川の濁りも落ち着き、釣れる気がする。
GoogleMapの航空写真で川に降りられる道を見つけバイクを走らせた。もう軽いダートくらいならXSR700は気にしないのである。買って1ヶ月、その半分を北海道ツーリングで毎日乗り続けているのである。慣れないわけがない。深い砂利道もジャリジャリとリアを滑らせて前へと進むバイク。最高である。
湿度は低い北海道といえどもやはり日差しは暑いくらいで、川に入ると北海道の川らしい緩やかな流れに優しく揉まれ、涼が足元を包みとても気持ち良い。普段はウェーダーという、まあ、簡単に言えば防水のズボンみたいなものを履いて川を歩いているのだが、今回は荷物の容積を若干減らせるゲーターと呼ばれる、簡単に言えば足の部分だけを保護するサポーターみたいなものを初めて持ってきている。こちらは防水というよりも、濡れるが川歩きには支障のないよう作られているものである。雪解けも終わった盛夏の渓流で使用するもので、ウェーダーと違って濡れるが水の感触がダイレクトに伝わりこれはこれで新鮮である。
気持ち良くフライ(毛鉤)をキャストしながら川を歩いているとトラブル発生。
なんとウェーダーシューズ(川を歩くための靴)のソールが剥がれたではないか。これまでそんなこと一度もなかったのに…。よりによってこんなベストコンディション、ベストシチュエーションで開始10分でトラブルとは…。
ブーツカバーといい、壊れるタイミングが北海道ツーリングになってしまう「あるある」なのである。
ということでまたも雰囲気写真だけ撮って釣り終了。
これが北海道ツーリング最後の釣りとなった。
次回はもっと釣り目的の比重を増やして北海道に来るぞと誓ったすずきたけしであった。
🏍
道の両脇に馬の牧場が広がるサラブレッド銀座を抜けて再び海沿いへ出る。
2015年の高波で被災し、その後復旧せずに2021年に4月に廃線となった日高本線。僕は鉄道ファンではないが、役目を失った静内川に架かる鉄橋は儚くもその姿はあまりに美しかった。
そして門別灯台に立ち寄る。
1970年点灯の何気ない沿岸灯台だが晴天時の灯台の美しさは格別である。
素晴らしいのは灯台だけじゃない。この灯台の脇の道路が、ああ、もうなんちゅうかこう、まさにアレなのである。ほら、夏のアレ、坂道を下る先に海が見えるっちゅう、アレ。アレである。
晴れって本当にいいもんですね。
🏍
さて、ここまでくるとあとは味気ない苫小牧までの道のりが続いちゃうのでである。
しかし、まだ時間は12:00。
この天気である。そして室蘭まで2時間ほどの距離。
苫小牧のフェリーターミナルには16:00には着けばよいのである。
そう、北海道上陸初日で曇天だったチキウ岬灯台への晴天時のリベンジである。
計画はこうである。
苫小牧を高速道路でとび越え、室蘭のチキウ岬灯台に14:00着。写真を撮って引き返して1時間半で苫小牧に戻る。そこでだいたい15:30。そして30分で寿司を食う。で、16:00フェリーターミナル着。
完璧だ。
ということで晴天のチキウ岬灯台がこちら。
ひょーーーーーー!
どうですかコレ。
ちなみに上陸初日の7月14日に訪れたのがこちら
うーん…てな感じである。晴天の圧倒的な勝者感はハンパない。
ちなみにチキウとはアイヌ語で「ポケ・チケップ」(親である断崖)が、チケウエ→チキウと転訛し「地球岬」という字が当てられたという。
🏍
さあ、寿司だ。北海道最後の目的地、寿司だ。
いつも北海道ツーリングの最終日、苫小牧のフェリーターミナルに向かう際には必ず立ち寄る回転寿司がある(といっても回転せずにオーダーするのであるが)。思い起こせば2017年、北海道ツーリング初日で温泉のロビーで転んで手首を折り(誕生日であった)、失意の帰路に就いたすずきたけしは、深夜便の大洗へのフェリー(もちろんバイクは無く、我が身ひとつであった)に乗るため、ギプス姿で夜の苫小牧駅に降り立った。もはや失うものはなく、2週間以上北海道を走る予定で持参した予算が宙に浮いたままであった。心はぽっかり空洞であったが、財布の中身はいっぱいだった。こんなことはなかなかない。孤独な金持ちってこんな気持ちなのだろうか。と夕闇にそびえる煙突から流れ出る煙を見つめながらたけしは思った。
苫小牧のフェリーターミナルまで行こうとタクシーを拾い、タクシーの運転手「美智子」さんに「近くの美味しいお寿司屋さんに連れてっておくんなまし」とお願いした。推定58歳の運転手美智子さん(たぶん美智子皇后のご成婚の年に産まれ名付けられたからと推測)が連れてってくれたのがこのお寿司屋さんである。右手を骨折していたものの、お寿司なら左手で食べられるというのもあった。
そうした傷心の思い出がいまでも強く残っており、北海道最後の最後はこのお寿司屋さんで締めるのがあれから4回の北海道ツーリングの通例となっているのである。
🏍
結局1時間遅れの17:00にフェリーターミナルに到着。乗船は最後尾であった。行きも最後尾、帰りも最後尾である。ちなみに2020年の帰りも最後尾である(お土産買ってたらすでに乗船が始まっていた)。バイクの乗船は待つだけ待たせておいて、いきなり乗船が開始になるので油断できない。
と、いうことで2022年の北海道ツーリングはこうして終わった。
根室、稚内、帯広、そして室蘭、そのほか道道106号線やオロロンライン。
これらは今回のツーリングで二度訪れた地である。
来た道を戻る。
引き返す。
再び訪れる。
僕のこれまでツーリングのルート選びは一度通った場所はなるべく重ならないように選択していた。新しい景色、新しい道、未知を既知に塗り替えていくという行為、考えであった。
しかし今回、そんな考えに囚われず、来た道を戻る、引き返すことで、根室ではシカたちに見つめられながら神秘的な落石灯台に訪れることができた。また一度はあきらめた礼文島に渡ることができ、最終日には再びの室蘭で絶景のチキウ岬を目にすることができた。まあナイタイ高原牧場は失敗だったが。
僕は基本ソロでツーリングすることがほとんどである。この先もきっと独りで走り回ることだろう。しかしこの独り旅というのは、憂いなく自己中心になれるということで僕にとってはとても居心地が良いのである。自らの判断がすべて正しいのである。なぜなら間違いを指摘する人間はほかにいないからだ。この、結果が必ず正しくなると思いこめる行動原理は、そのまま意志決定の柔軟さにつながる。不快や嫌なことだけを避け、自分が楽しいことだけを追求する。これほどまでに開放的な行動はソロでないと不可能なのである。
しかし帰りのフェリーではちょっぴり寂しくなるものである。
同じような気持ちのライダーとのつかの間の出会いもまた、お互い独りであるからこそ気兼ねなく親しくなれることもある。
ということで、帰りのフェリーでは向かいの寝台にいた還暦間近の同じくソロツーリングの男性と意気投合。
仲良く夕食を共にした。
やっぱり人との出会いもいいものである。
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本日のルート
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