北海道ツーリング30日前|まえがき
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「そうだ、北海道に行こう」と、北海道行きのフェリーをネットで予約した。2年ぶり8度目。高校野球の常連校みたいな言い方になってしまったが、期間は7月13日の大洗出港から7月26日の同港着までの14日間で渡道することが決定した。
普段ならあとは出港日までのあいだ「うふふ」と北海道のルートを思い描くだけでよかったのだが、今回は事情が違った。
これまでホンダのCBR600RR(PC37)というバイクに5年ほど乗っていた。過去形なのはすでに無いからだが、このバイクで北海道に4度、西日本に2度、そのほか東北や北陸などツーリングで遊んだバイクである。
中型免許を取得して初めてのバイク歴はCBR250RR、大型二輪の免許を取得して初めて買った大型バイクはCBR954RRと、熱烈にファンというわけではないのだけれど、気がつけば節目節目のバイクはCBRであった。(間にはアプリリアRS250、ゼファーχ400、セロー250というバイク歴)
※16分47秒あたりでバイクの紹介をしています。
CBR600RRは、2006年式という15年以上昔のバイクながらトラブルなしでこれまで乗ってきたが、2017年に北海道ツーリングで右手首を骨折して(温泉のロビーで転んで)以来、SS(スーパースポーツ)の前傾姿勢は1日10時間ほど乗っていると古傷の右手首がかなり苦しく、運転がかなり辛くなっていた。
骨折した時の記事↓
あとお腹も出てきたし、いい年でSSもアレでアレだし、そろそろもっとのんびり走れるバイクで遊ぶのもいいのではないか?ということが頭をよぎり、ふと「売りに出したらいくらになるんだろう」とネットで適当に“5分で査定”なんてところに情報を入力したところ、どうやら買取業者の5社同時に査定依頼が飛んで行ったらしく「送信」をクリックしたら秒速で数社から電話がかかってきた。
バイク買取A社からの電話は今ちょうど隣の県にいるので本日うかがえるとのことだった。
早い。早すぎる。
というかネットで買取価格の相場感くらいがわかればよかったのだが直接自宅に査定に来るである。もちろんその場で買取価格に納得すればあっという間に現金を握らされCBR600RRがドナドナドーナードーナーと荷馬車を揺らして売り渡すことになる。ちなみにCBR954RRのときは26万円でドナドナした。
しかし北海道のフェリーもこのバイクで予約しちゃったし、次のバイクもまったく決めてないのである。そして5年も乗った愛着あるバイクを手放すという心の準備が…。
との戸惑いもあったが、こういうのはきっかけ次第なので査定に来てもらうことにした。電話を切るとまた別のバイク買取業者から電話がかかってきたので、翌日に査定に来てもらうことになった。ほか一社は店舗に直接伺う査定、もう一社は3日後、そしてもう一社は連絡はなかった。
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さて、定刻通りに仮にA社とする買取査定の業者が自宅に到着した。
型通りの挨拶をして、業者はバイクを簡単にチェックし始めた。
「綺麗に乗られてますね~」などバイクを褒める褒める褒める。
「御幾らくらいなら売ってもいいかなぁとかあります?」といきなり核心を突いてくるが、相場がわからないので「いやあ、買取の相場が知りたいだけなのでいくらかとか考えてないんですよ」とすっとぼけてみる。すると業者は「ちなみに、」と言って妙な間をあけて「もし50なら今日売ってもいいかなって“感じ”じゃないですか?」と大きく開いた手のひらをこちらに向けて「50万円」をイメージさせてきた。
「まあ、どうかなぁ、次のバイクも決まってないし、このバイク気に入ってるからなぁ」とすっとぼけてみるが、内心は“売ってもいい感じ”どころではなく、“50なら秒で売ります”と思っていた。
結局、50000kmの走行ということもあり、「下取りで乗り換えなら頑張って45で、買取なら38です」ということだった。
「これは次の業者に吹っ掛けたら買い取り額を釣りあげられるのでは?」と$マークが頭の上でチャリーンと音を鳴らし、一軒目の業者の買取は見送った。
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翌日、査定2社目のB社が来た。若いスタッフで、やたらと身の上話をしてくる人だったが、渡された名刺に印刷された顔写真はどう見ても別人だった。
「すでに別の会社さんで査定とかされましたか?」と聞かれたのでうなずくと「幾らくらい提示されましたか」というので「即決なら50万」と言ってみた。
すると彼は「50万はかなりいいですね!ぜったいそこがいいですよ」とすでに白旗を上げてきた。
結局、30万円の査定と前職は料理人だったという話と合わせて、「これ、だれにも言わないでくださいよ?」といってバイク買取事情を教えてくれた。
バイクの買取価格というのは、そもそもがオークションの価格相場が業者間共有されていて、その範囲内で決まる。走行距離、年式、モデルなどの相場の履歴がネットで見られるために、買取金額の差は業者間で数万円ほどの差でしかなく、そこから大きく逸脱した買取価格というのはそもそもあり得ないという。そんなこんなで買取価格からオークションでの販売価格の差額が利益となるため、B社の彼も僕が「50万」と言った価格は相場からすると有り得ない金額であったために「こいつ吹っかけてるな」と思ったに違いない。もちろん吹っかけたのだが。ただ、買い取ったバイクにすでに買い手が付いている時は相場よりも高値で買い取る場合があるという。前日のA社はそういうのが強いらしい。
そして、いまバイクの中古業界自体が異常な状態であると彼は続けて話し始めた。
今、コロナ禍によって中古二輪市場の販売価格がアホみたいに高騰しているというのだ。コロナ禍による密をさける個人レジャーとしてのバイク人気、免許取得費用に給付金が使用されたことでバイク需要が膨らんだものの、世界的に海運のコンテナ不足(バイクの生産はほとんどが海外)や、半導体不足によるバイクの生産の遅れでディーラーへ新車が入荷しない状況が続いているという。しかし新規ライダーが増えたのに新車のバイクが買えないということで、中古バイクの需要が増え、当然中古価格は高騰していた。生産終了したYAMAHAのセロー250は、中古なのに70万から90万の値がついて新車価格以上の値段が付いている。とくに250cc〜400ccの中排気量は新規普通二輪免許の取得者が増えたために価格相場の上がりがハンパなく、2年前に30万円で売られていたバイクが今では新車とほとんど変わらない60万円近くで値付けされており、2019年からなんと1.5倍から2倍くらいになっているという。同じ価格ならもちろん中古よりも新車を買えばいいが、その新車がお金を出しても買えないんだもん。そりゃあすぐ乗れる中古でもよいという感じだ。
と、結構楽しそうにB社の彼は話していたが「で、これは誰にも言わないでくださいよ」と念押しをしてまだまだ話す話す。
実は現在の中古車販売価格の高騰は一昨年からの借金みたいなもので、昨年まで高額で買取って仕入れてしまったものが市場で余っているためらしい。つまり、高く仕入れたバイクに値付けしているものの、売れなくなってきているという。そして、新車の納入こそまだまだ遅れるだろうが、ウクライナへのロシアの侵攻で、それまで高値で日本のオークションから購入していたロシアのバイヤーたちが一斉にいなくなったので、仕入れた中古車を出品したオークションで、それまで上得意だったロシア勢の買手が付かなくなってしまった。
ということで、中古バイク業界はコロナ禍で売れると見込んで高額で買い取った中古バイクをそのまま抱えた状態で、損切りを決断して誰が先に販売価格を下げ出すか?というチキンレースの状態だという。バイクだけに。
どうやらバイクの買取価格もいまがピーク、というか下がり始めているので、今がバイクを高値で売る最後の時期だという。
そう言い残して、B社のかれは手ぶらのまま去っていった。
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結局、持ち込みで査定してくれた近所のバイク販売店が妥当な金額(あえて金額は伏せるが満足できる額だった)を提示してきたので、そこでの売却となった。
さて、バイクを手放したものの、フェリーは予約済み。出港までの一ヶ月の間に次のバイクを買わなければならなくなった。
賢明な読者諸君なら今はバイクを売るのは最適な時期だが、買うには最悪の時期だとお気づきだろう。
しかし、だ。
もうすでにフェリーは予約済みなのである。
ここは新車価格に近くとも中古で買うっきゃない。
だって新車を買おうものなら半年待ちなのである。
ということで、連日CBR600RRを売却した軍資金を握り締め次なるバイクを探すネットサーフィン(死語)に勤しむことになるのであった。
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