この日常にできたわずかな傷口から妄想や陰謀が侵食していく/【書評】『サブリナ』ニック・ドルナソ 藤井光・訳 早川書房
『サブリナ』は、サブリナという女性の失踪事件を発端として関わる人間が徐々に追い詰められ、社会もSNSを通じて陰謀と妄想の不穏な空気が膨らみ主人公たちに追い討ちをかける。この日常にできたわずかな傷口から妄想や陰謀が侵食していく感じがグラフィックノベルでありながらとてもアメリカ文学的だ。
帯にはエイドリアン・トミネが絶賛との惹句が踊るが、まさしく初期のトミネの『スリープウォーク・アンド・アザー・ストーリーズ』のような渇いた気怠さを彷彿とさせ、絵柄は『キリング・アンド・ダイング