S / I K
呼吸の合間に、自分の心臓の音が相手に聞こえてしまうのではないかと思った
鼻がくっつくか、くっつかないか
どちらが息を吐くのか、吸うのか
密接された中にもお互いが鬩ぎ合い、
数秒後には勝負事とは全く関係が無くなる
嗚呼、なんだ、こういう感じか、
と 窓に反射して映る客観的な自分と目が合う
軽く会釈をするようなノリでもなく、
なるべく見ぬよう 違う事を考える
集中すればいいものの出来ず、
「あの頃」
「あの時」
「この間まで」
ネガティヴな過去形が頭を廻る。
個人ではなく複数になってしまったからには
揺るがない想いを貫くしか
真っ向から戦えなさそう?
さっきまで勝負事とは無縁だと思っていたのに
嗚呼、なぜだろう、
自分で自分を正さなければ
柔らかい場所まで相手のものになってしまう
そう、あっと言う間に
温かさが冷静な心を包み込む
気持ちの良くない 勝手な方法で
そう、あっと言う間に
いつの間に、
動き慣れた雰囲気が胸に突き刺さる
結露した窓に肌色が近付き
外の気温が分かる
たくさん着込んで 飛び立とう
ここではない 知らない何処かへ