
サポートの解像度を上げる
はじめに
今回の記事のテーマは「サポートの解像度を上げる」だ。
まずは皆様に、20秒ほどの映像を見て頂きたい。映像の中で青くマーキングされた選手が、
“なぜ、ボールを失ってしまったのか?”
その原因を考えて頂きたい。実際にこの選手にアドバイスを送るとしたら、どのようなものになるだろうか?
一見、単なるパスミスである。つまり、ミスしたのは彼の技術不足が原因であるように思える。指導者である私も、選手がこのようなミスをしたのに対して
“もっとパスの精度を上げろ!”
そういったコーチングをよくしてしまうものだ。しかし、ここで視点を変えてみる。
ボールを受ける前のサポートはどうだっただろうか?
もう一度、先ほどと同じ映像を流す。今度は、このシーンの中で「適切なサポートを行えていない選手」に赤くマーキングをしている。ミスしているポイントはどこなのか?映像を見ながら皆様にも考えて頂きたい。
ここで言う「ミスかどうか」はあくまで私の主観であり、別の人が見たら「ミスではない」と判断するかもしれない。ただ、重要なことは
“ミスの原因は、本当にボールを持った選手だけにあるのか?”
この視点を持つことであると私は考えている。ミスをした本人、のボールを受ける前の準備はもちろんのこと、もしかすると周囲の選手が適切なサポートを行えていなかったことが原因かもしれない。
本記事では、ボールを受ける前のサポートにフォーカスする。試合中によく起こる状況において「どのようなサポートが適切なのか?」を理解し、即実践できるようになることを目的とする。このことを「サポートの解像度を上げる」と表現し、本記事のメインテーマとしよう。
この記事を読めば…
【選手の方】
・状況に応じた適切なサポートを行えるようになる
・ボールを失う回数が減り、プレーの精度が上がる
・チームの攻撃の起点となって、活躍できるようになる
【指導者の方】
・試合や練習で攻撃が上手くいかないとき、その原因を的確に分析することができるようになる
・ボールを受ける前のアクションを改善するためのアドバイスを送ることができるようになる
・プレーの「目的」を理解することで、より選手の意図を尊重したコーチングができるようになる
本記事は、選手・指導者の両方に向けて執筆したものである。
選手の方であれば、サポートについて理解を深めることで、ボールを失わず・より精度の高いプレーが可能になるだろう。ボールを受ける前に何をすべきか、どのようなことを意識してサポートをするべきかが明確になり、プレーが良い方向へ変わっていくはずだ。
また、指導者の方であれば、ミスが起こる原因をより的確に分析することが可能になるだろう。今まで指摘していた「ボールを失ってしまう」原因、あるいは「前進できない」原因が、実はボールを受ける前のアクションに潜んでいるかもしれない。そういった細かい部分まで分析できるようになれば、おのずとプレーを改善できる回数も増えていくはずだ。
本記事の構成は以下の通りである。
各章の内容としては、下記のようになっている。
序章~第6章:文章と図をメインとした解説
第7章:全体のまとめ・映像を用いた解説
まずは、サッカーにおけるサポートを6種類に分類し、それぞれのパートで詳しく解説していく。さらに、それらを実際の試合と結び付けて理解を深めていただくために、第7章では映像を用いた解説を行う。
じっくり理解を深めたい方は、序章~第6章の中で、興味のあるパートから読んでいくことをおすすめする。本記事の文字数は1万2000字を超えているが、全て通しで読む必要は全く無い。目次を参考に、読みたいところから読んで頂ければ、必要な知識が得られるはずだ。
また、今すぐに練習や試合で使えるサポートのイメージをつけたいという方は、第7章だけでも十分に理解できる。もし、映像だけでは分からない部分があれば、前に戻って解説を読んで頂ければ補填できるだろう。
なお、本記事は一度ご購入いただいた後でも、返金が可能となっている。
現時点でご購入を躊躇されている方も、試しに一度、読んで頂いて、もしも内容がご期待に沿えなければすぐさま返品可能だ。
ただし、本記事は、私がこれまでかなりの時間をかけて整理した言わば「サポートの辞書」のようなものであり、必要に応じていつでも、気になるところを見返していただき、すぐに現場で実践することができる。
ぜひ、この先を読み進めて頂き、皆様の成長・新たな気づきに役立てていただければ幸いである。
まずは本題に入る前に、改めて「サポート」というワードを明確に定義することから始めよう。
序章 サポートの解像度を上げる3つの視点
私は、「サポート」を下記のように定義している。
ボール状況に応じて、ボールホルダーに対する「縦の距離」と「横の距離」を調節すること
そして下記の図のように、ボールホルダーに対する「縦の距離」を「深さ」、「横の距離」を「幅」と定義する。

つまり、サポートとは「ボール状況に応じて、適切に幅と深さを調節すること」ということだ。
さらに、攻撃時における「プレーの目的」を意味する「戦術意図」を下記の6種類で整理する。
①前進する(Progresar)
②分断する(Dividir)
③固定する(Fijar)
④保持する(Conserver)
⑤突破する(Romper)
⑥フィニッシュする(Finalizar)
これらは「なぜ、そのプレーを行うのか?」の「なぜ」に当たる部分である。各意図の詳細は、後の章で詳しく解説するのでここでは割愛する。
適切なサポートを行うためには、状況に応じて「適切な戦術意図」を選択し、それに応じて「適切な幅と深さの調節」を行うことが必要である。では、具体的に「どのようなサポートが適切なのか?」を、状況ごとに詳しく見ていこう。
ここから先は
¥ 700

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?