ビデオの世代 2023/09/05
日記
・今日なんかやったけな。夕食後に梨を食べた記憶しかない。
・梨食べたりぶどう食べたり、秋って気分はないのに秋を接種してる。
・『マイク・ザ・ウィザード』という映画を観た。
・映画監督を目指すSFXオタクのマイク。ある日、彼はハリウッドのプロデューサーのもとでテレビ映画を作る機会を得る。しかし、彼の映画作りが失敗することに賭けたプロデューサーに横槍を入れられ、超低予算と短納期の中での制作を強いられることに。それでもマイクは挫けず、仲間たちとともにストップモーションやロトスコープなど自前の特殊効果で撮影を進めていく……というおはなし。
・私が好きな「映画を作る映画」だ。数多の名作に漏れず、これも映画への愛や"創る喜び"に溢れている。それだけでグッときて胸が熱くなるのだけど、この作品の最大の特徴はマイクが手掛けるストップモーションの数々。1秒24コマの世界を仲間たちと一緒に試行錯誤しながら、雨が降っても風が吹いても少しずつ地道に作り上げていく。魔法使いになったマイクが撮影道具に命を吹き込んでいく様は、彼が愛する映画と戯れているようで心の底から楽しそうに見えた。ストップモーションで映像を作る過程を「苦労」ではなく「楽しみ」で描くのが良い……。
・マイクの作品だけでなく、この『マイク・ザ・ウィザード』という映画自体にもストップモーションやロトスコープがふんだんに使用されているのも面白かった。ただ移動するだけのシーンでも、マイクは飾り付けられたスペシャル自転車で稲妻のように街を駆ける。常に登場人物たちがチャキチャキと動いていたり、1コマ単位で観客を楽しませようという気概が嬉しい。なんてことないシーンに異常な手間がかけられている。
・ひたすらに楽しい映画ではあるのだけど、終盤のマイクのセリフで「誰にも観られることのない映画を作り続けて何になるんだろう」と、創作の孤独にも触れらていて胸が締め付けられる。ハチャメチャなコメディでありながらも、創ることに誠実だった。
・めちゃくちゃ面白いのだけど、未だDVD化すらされていなくて観る手段が限られているのが本当に惜しい。私は渋谷TSUTAYAのVHSコーナーでレンタルした。
・久しぶりにVHSを扱った上に借り物だったから、ビデオデッキに差し込む手が震えた。三色コードを挿すのも云十年ぶりだった。
・たぶん、私あたりが日常的にVHSを触っていた最後の世代なんじゃないかと思う。だから何だよという話ではあるのだけど。
・あ、そうだ。マイクの自転車の後ろカゴに仮面ライダースーパー1の変身ベルト「サイクロード」らしき何かがついていた。なぜスーパー1。
・『時計じかけのオレンジ』を観た。名作を観るんすキャンペーンは続く。
・観終わって一番に「ちゃんと"わかる"ストーリーで良かった〜」とバカみたいなことを思った。なんか難しそうだな……と避けていた映画なので、まずはそこに安堵した。ちゃんとわかるし、ちゃんと面白い。そういう映画だったのね!と急に親近感すら湧いてくる。無口なクラスメイトと話してみたら、意外と打ち解けられたみたいな気分だ。
・映画の中身のことは置いておいて、何より気になったのはアレックスがルドヴィコ治療を受ける場面での目薬の多さだ。3秒に1回のペースで目薬を差されていて、治療に支障が出るんじゃないかと心配した。あんなハイペースでやられたら絶対映画に集中できない。近未来なんだから、もっと別の乾燥対策を考えるべきだ。
・あと、作家の老人がアレックスの素性に気づき、怒りに打ち震えるシーンがすごかった。ちょっとふざけてないと、あんな撮り方はできないと思う。脳裏に焼き付いて一生忘れられない気がする。キューブリックってすごい。