農業ベンチャーでのお話【4】:選果作業とパッキング
出勤前
モコモコに厚着させられ、ぬいぐるみのような子どもたち。
たくさんの荷物と一緒に、ベビーシッターのN先生宅へ向かう。
※4月までは保育園へ預けられなかったので
ハンドルを握る手がかじかむ。
八ヶ岳の冬は、雪もないのに、ただただ寒い。
N先生は、定年まで東京の保育園で園長先生をされていた女性。
自分の母親よりも少し年上の小柄な方で、いつも満面の笑顔で迎えてくださる。
N先生:『いらっしゃ~い!』
『お母さん、今日も素晴らしいわ!』
『こちらは大丈夫だから、頑張ってらっしゃいね~。』
去り際に、一瞬だけ下の子は泣くものの、さすがベテラン。
こちらが少し寂しくなるくらい、上手に子供たちをあやしてくれる。
N先生がいなければ、私はこの仕事を続けていられなかった。
育児しながら働くことの大変さを受け止め、誰より勇気づけてくれた第二の母。
私は良い縁に恵まれている。
選果とパッキング
週5日、9:00~17:00までの勤務。
出勤後はまず収獲作業を行い、終わり次第【選果とパッキング】作業。
2週間ほど経つと、収獲作業はずいぶん慣れてきた。
でも、選果とパッキングはなかなかコツがつかめなかった。。
【選果】とは、出荷基準に見合う果実を選別すること。
ワレていたり、大きすぎ・小さすぎる果実は【B品(訳アリ)】として、
ジュースに加工したり、特価で社内販売、もしくは廃棄していた。
大手の農場や農協などでは、自動選果機なる高額な機械で行うのだが、、
個人農家ではわりと手作業で選果している。
選果で選ばれしA品(良品)の果実は、出荷先に合わせた資材へパック詰めする。
これがパッキング。
社長:【大きな隙間を作らず、詰める重さのズレは±10gに抑えるようにしてください】
正八角形の底が細まった透明な筒状の容器に、ピンポン玉大の果実を詰める。
これが難題である。。
化学で習った、六方最密構造の充填率!
まさか、ここで活きてくるなんて。。。
中央に選果済みのコンテナをおき、その周りに立ちながらパックへ詰める。
トマトを数個詰めて、
横から見て隙間の具合を見て、
別なトマトに入れ替えて、
重さを測って、、、
効率的に進むはずがなかった。
社長:【高級そうに見えるし、オシャレじゃん】
このご時世、映えは必要なのだろうが、、
結局、この容器はあまりに作業効率が悪く、後に詰めやすく廉価な四角パックや、ZIP付きの袋に置き換えられていった。
訳アリ商品
トマトの選果現場では、栽培管理者の腕にもよりますが、どうしてもワレてしまったり、いびつな形になったり、ヘタが取れてしまったりといった、B品、一般的な訳アリ商品が出てしまいます。
本当の初期は、これらの多くを廃棄していました。
もったいないようですが、、
スタッフだけで食べるには多すぎますし、大型の冷蔵・冷凍設備がなければ、すぐに腐ってしまいます。
しかも訳アリ品は、正規品の価格の半分以下での取引となるので、加工に人件費や設備費をかけてしまうコストの方が、農家としてはもったいないのです。
ワレてしまっているものは衛生上の問題があるので、仕方ないですが、、
見た目だけで訳アリになってしまう現状のやり方自体が、なんかなぁって感じです。。
栽培にかかった費用は同じですし、味もかわらないのにね、、
パッケージ選び
私の働いていた会社では、収穫物を自社ブランドとしてスーパーや道の駅、インターネットでの販売を行っていました。
自社ブランドで販売するとなると、少しでもお客様の手に取ってもらえるよう、見栄えのよいパッケージに入れたり、食べ方のレシピを入れて出荷することになります。
お客様は、たぶん中身の青果物を取り出したら、すぐにパッケージは捨ててしまうのでしょうが、、、
このパッケージ自体も費用が掛かっていますし、オシャレなパックほど、前述のように詰めづらく、パートさん達の陰ながらの努力も詰まっています。。
まして、パッケージにシールが貼ってあろうものならば、、、
実は内職さんまで陰で作業をしていたりするのです。