軽剥

薄く,軽やかに。私から剥がれていく。
それは、爪痕を残すための白い爪とか。
または、自分を守っていた卵の殻とか。
時の流れに振り落とされた、幼さとか。
心の中で細々と輝いていた、未来とか。
大人になれなかった僕が、剥がれたか。
はたまた大人になる私が、剥いだのか。
考えている間に、それは白く色褪せる。
前は何色だったのか、分からなくなる。
色を探して、考えていた意味を失くす。
何をきっかけに考えたのかも、忘れる。
そうしてまた一つずつ、剥がれていく。
白い何かと私だけが、ただ残っている。
剥がれたそれを重んじて、かき集める。
忘れてしまった事を,忘れないように。

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