文楽『奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)』
2022年9月、東京の国立劇場、文楽公演。
同年同月18日、第三部で鑑賞。
文楽の作品は、「時代物」「世話物」「景事(けいごと・けいじ)」に分けられるそうですが、この作品は時代物でしょうか。
奥州で起こった「前九年の役」後の話です。
作者は近松半二。全五段。今回は、平傔仗(たいらのけんじょう)一家の悲劇を描く三段目と四段目口が上演されました。
今回の上演部分で、軸となるのは「袖萩(そではぎ)」という女性です。平傔仗の娘(長女)、安倍貞任の妻という設定です。
盲目の身ですが、父の身を案じて、娘のお君に引かれながら、朱雀堤(しゅしゃかづつみ)を出立します。
御殿の門(鉄の門)の外から中を覗き込もうとする場面、震える場面など、人形の動きがとても細やかでした。
プログラムをみると、人形遣いは桐竹勘十郎さん。人形遣いの名跡で、人間国宝の方でした。袖萩の役どころにもよるのでしょうが、やはり遣い方の巧みさを見たようで、(素人の私ですが)、大変感動しました。
袖萩と傔仗・浜夕(傔仗の妻で、袖萩の母)のやり取りは、江戸時代の武家のしきたりを反映しており、当時(江戸時代)の時代背景等を知ることが出来ます。袖萩と娘お君のやり取りは、親子の情愛が伝わって来ます。(「親なればこそ子なればこそ」)
そして、後半は、源義家の人形を挟んで、安倍貞任・安倍宗任の人形が登場します。
女性や義家の人形よりも一回り大きく勇壮です。「時代物」の凄さや面白さを感じました。(効果音については、時間がある時に調べたいです。)
最後は、四段目口の「道行千里の岩田帯」でした。春の景色を背景に、生駒之助と恋絹が奥州を目指します。若い二人の仲睦まじい姿が描かれ、ほのぼのとした気持ちになりました。
この段の口を最後に入れることで、凄まじかった前段からの切り替えと、今後の話への期待が繋げられるように思いました。
夢と現実が入り混じった感覚にもなりました。
以上です。