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【美術館】芳幾・芳年 - 国芳門下の2大ライバル
2023年3月31日(金)、東京丸の内の三菱一号館美術館に『芳幾・芳年 - 国芳門下の2大ライバル』を観に行きました。東京では4月9日(日)まででしたが、北九州会場で7月~8月に開催されるようです。
■はじめに、観に行ったきっかけなど
フォローさせて頂いている海人さんのつぶやきを観て、「これは面白そうな展覧会だ!」と思い、行って来ました。
前回、出光美術館に『江戸絵画の華』の展示を観に行きましたが、今回は落合芳幾(1833~1904)・月岡芳年(1839~1892)を通して幕末から明治にかけての流れを追うことが出来ました。二人の師匠である歌川国芳(1798~1861)については、奇想な浮世絵師というイメージがあるのですが、私はまだ展覧会で観たことはありません。先に芳幾・芳年の展示を観ることになりました。
■芳幾・芳年と初期の作品
(1)師匠・国芳による二人の評価
展示会場の解説にありましたが、師匠が二人を評して述べたコメント部分をここで記載しておきます。展示や二人の年表を振り返ると、言わんとしていることが分かるような気がしました。
-嘗て国芳言へることあり、芳幾は器用に任せて筆を走らせば、画に覇気なく熱血なし、芳年は覇気に富めども不器用なり、芳幾にして芳年の半分覇気あらんか、今の浮世絵師中その右に出る者なからんと、
(2)「英名二十八衆句」について
「英名二十八衆句」は、慶応2~3年(1866~67)に、二人が半数づつ手がけた28枚の揃物です。殊に江戸後期に登場する歌舞伎や講談で知られた刃傷沙汰、殺戮シーンのみを集めた作品集で、「血みどろ絵」「無惨絵」の代名詞となった作品だと、図録に記載されていました。
師匠亡き後、競作して力をつけていこうとする二人の姿が見受けられます。このコーナーの展示以降にも言えるのですが、シリーズ作品というか、揃物を描き上げることに、ものすごいエネルギーを感じました。
■武者絵
(1)芳幾の「太平記英勇伝」
「太平記」とありますが、『絵本太閤記』の登場人物を描いた武者絵です。豊臣人気(江戸幕府批判)が起こるのを防ぐために、時代や名前を変えて描かれています。
師匠の国芳の武者絵が50点であるのに対し、芳幾の武者絵は100点で、師匠と同じテーマでありつつ、師匠を超えようとする意気込みが感じられました。
(2)芳年の「芳年武者无類」
33点の揃物で、「無類」と「武者震い」を掛けていると展示にありました。写真を1枚アップしてみます。武者の構えとは違い、ポーズを取り、動きが感じられます。少し怪しげな感じもしました。
芳幾・芳年、それぞれ武者絵の揃物を描き、お互いが意識し合い、影響を与え合ったのだろうと思いました。
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■明治の新聞錦絵
展示コーナーとしては、かなり飛びますが、後半の新聞錦絵について記載します。
明治5年(1872)、芳幾は、戯作者や好事家との交流から「東京日日新聞」の創刊に参画し、記事を錦絵にしたり、挿絵を書いたりします。この「好事家」という言葉は、辞書を引くと「珍しいことや変わったことに興味を持つこと。物好き。」という意味でした。確かに図録によると「新聞から美談・奇譚あるいは煽情的・猟奇的な記事を選び、振り仮名付きのテキストに芳幾が錦絵を描いた」とありました。
展示された記事が、変わった話や面白い話が多く、楽しく観ることが出来ました。
他方、こうした錦絵のヒットは多くの追随者を生み、明治7年(1875)には「郵便報知新聞」の新聞錦絵に芳年が起用されています。こちらも展示されていました。
■芳年の月百姿
最後に展示されていたのは、芳年の「月百姿」でした。8年の歳月をかけて、「月」をテーマに取り組んだ100枚の揃物です。
新月から満月まで、月の形は様々です。芳年が最後に到達した境地のように思われ、静かな雰囲気で「静謐」という言葉がぴったりでした。どちらかというと、私は芳年の絵が好きなようです。
2枚写真をアップします。(写真が歪んでいてすみません。)
1枚目は、卒塔婆小町が描かれた「卒塔婆の月」です。個人的には一番印象に残りました。2枚目は「千代能」です。鎌倉時代の武士、安達泰盛の娘だそうです。「千代能がいただく桶の底ぬけて 水たまらねば月もやどらず」という歌が記されていました。千代能が悟りを開くきっかけとなった出来事を詠んだ歌だそうです。
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■さいごに・番外編
江戸時代後期に生まれ、明治という時代に適合していった芳幾・芳年の一生を追っていったような感覚になり、よい展示だったと思います。
番外の展示コーナーで、『警視庁草子』という漫画が紹介されていました。その中で、外伝として芳幾・芳年が描かれている部分があるそうです。いつか読んでみたいなぁ、と思いました。
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長くなりましたが、ここら辺で終わりにしようと思います。