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能『錦木』(鑑賞)

2022年10月21日(金)、渋谷で能の『錦木』を鑑賞しました。
喜多流で、シテは友枝雄人さん、ツレは佐藤寛泰さんでした。四番目物、執心男物です。鄙(ひな)の男女の物語です。
開演前の20分間、金子直樹先生の解説がありました。
以下、メモと個人的感想です・

■メモ(金子先生の解説などより)
1.素材
・源俊頼の歌論。

2.詞章に出てくる歌
①胸合ひがたき恋とも詠みて
②錦木は立てながらこそ朽ちにけれ狭布(きょう)の細布胸合はじとや
③錦木は千束(ちづか)になりぬ今こそは人に知られぬ閨(ねや)の内見め
④陸奥の忍ぶもぢ摺り誰ゆゑに乱れそめにしわれからと(われならなくに)(源融)
※「狭布の細布」は、幅が狭く不足するところから、「胸合はず」「逢はず」などの序詞に用いる。胸合は、お互いの思いが合わないこと。

3.その他のメモ
・前シテは直面(ひためん)でした。霊ではなく、化身だからでしょうか?直面のときも、能は無表情で演じるそうです。
・後シテの面は、怪士(あやかし)系の「三日月」という面だそうです。
・黒頭(くろがしら)。
・鬼には2種類、「力動風」と「砕動風」がある。
・終盤の舞について、喜多流では男舞でした。cf.黄鐘早舞(おうしきはやまい)
・錦木を男が立て続けたのは1000日(千束・ちづか)。cf.通小町は100日。
・後場で、ツレが「作り物の中に入り細布を織る」という場面があることから、機織り機の写真にしてみました。

4.(自分で)調べた言葉
・「きりはたちょう」とは、機(はた)を織る音を表わす語。また、ハタオリムシなどの声を表わす。(インターネットより)
・「妹背(いもせ)」とは、親しい間柄の男女。
・「鄙(ひな)」とは、都から離れた土地、田舎。
・「閨(ねや)」とは、夜寝るための部屋。

■感想
・現実の世界では錦木を立てた男の思いは叶わず、僧侶による弔いの後、男の願いが叶い、歓喜の舞が再現されます。私は、詞章の最後が「覚めなば錦木も細布も夢も破れて 松風颯颯(さっさつ)たる朝の原 野中の塚とぞなりにける」となっていることと、能面が怪士系であったこともあり、夢の中で現実化されただけで、喜びというより儚さを感じました。
・ツレの佐藤さんの声が、まるで楽器のように響き、とても美しく感じました。終盤、友枝さんや地謡の声と重なり、盛り上がりを感じました。
・脇正面の一列目で鑑賞しましたが、中入の間狂言のあいだ、塚の中で着替えをされているのが、横からみれて参考になりました。後見の人の手助けに、最近気が向くようになりました。
・9月に鑑賞した『松虫』は、宝生流で、「中の舞」でした。「黄鐘早舞」というのを、一度は観てみたいです。
・金子先生の話に出て来た能の『融』や『通小町』も、いつか観てみたいと思います。

以上です。


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