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【文楽】傾城恋飛脚、壇浦兜軍記(阿古屋琴責の段)

2023年1月8日(日)、大阪の国立文楽劇場で、初春文楽公演を観ました。
第2部の次に、第3部で傾城恋飛脚の新口村(にのくちむら)の段と、壇浦兜軍記の阿古屋琴責の段を観ました。
以下、それぞれメモと感想を書いてみようと思います。

■傾城恋飛脚、新口村の段
・近松門左衛門の『冥途の飛脚』を改作し、安永2年(1773年)に、大阪で初演された、菅専助・若竹笛躬の作品です。この点、『冥途の飛脚』はあまりヒットしなかったのか、冥途の飛脚との関係は後で調べておこうと思います。
・三百両を横領した忠兵衛と、ともに逃げる遊女梅川、そして、やっとの思いで辿り着いた忠兵衛の故郷・新口村で遭遇する実父、孫右衛門という、3人の気持ちが交錯します。
・心中物を私は遠い目で見てしまう部分があるのですが、本作は、3人の気持ちを身近に感じることが出来たように思います。雪降る情景で、しんみりとした気持ちになりました。

■壇浦兜軍記、阿古屋琴責の段
(1)あらすじなど
・作者は文耕堂ほか。全五段のうち三段目鯉の段の導入部(口)になります。
・あらすじを少し書くと、潜伏中の景清の居場所を探るため、四相を悟ると言われる秩父庄司(畠山)重忠と、景清を恨む岩永左衛門という対照的な武士2人が、阿古屋を拷問にかけて取り調べます。

(2)阿古屋について
・まず、阿古屋の人形が豪華でした。購入したプログラムに見開きで「阿古屋の魅力」という特集が組まれていました。かしらと鬘(かつら)、胴抜と打掛、俎板(まないた)帯、重量も相当あるのではないかと思いました。今回使用する打掛と俎板帯は、平成26年に新調し、1年がかりで仕上げたものだそうです。そして、楽器を演奏する際は、特殊な「三曲の手」が使われていました。
・阿古屋の動きもきれいでした。ゆっくり堂々と登場し、型(ポーズ)を決める場面が何度かありました。私としては、特に、脱いだ打掛を景清に見立てる場面が印象に残りました。
・阿古屋の演奏は、琴(『蕗』)・三味線(『班女』)・胡弓(『相の山』)の3種類。一番の見どころです。個人的には、胡弓の演奏が最も印象に残りました。

(3)取り調べを行う重忠について
・演奏を行う阿古屋のバックで、阿古屋に心の乱れがないか伺うのですが、動かずにその様子を表現する人形遣いの難しさを感じました。
・阿古屋の台詞にもありますが、肉体的な拷問より理詰めでの詮議の方が身に応えるようです。
・最後に、四相を悟るということに関連し、今回の出だしの部分を記載しておきます。
「鳬(かも)の脛(はぎ)短しといへども、これをつがば憂ひなん。鶴の脛長しといへどもこれを断たば悲しみなん。民を制することこの理に等し」

以上です。

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