【文楽】『国性爺合戦』(鑑賞)
2023年2月5日(日)、前日に引き続き、国立劇場に文楽『国性爺合戦』を観に行きました。作者は近松門左衛門です。
中国と日本を舞台にした壮大なストーリーで、今回上演部分のクライマックスでは涙が出ました。本や映画、舞台などで涙を流すのは久しぶりです。
以下、記録します。
■概要
(1)私と『国性爺合戦』
同作の題名は、歴史や日本文学史の教科書で知っていましたが、肝心かなめのストーリーは、全く知りませんでした。「鄭成功」の名前と、虎を組み伏している絵だけが印象に残っていました。
私は、こうした題名だけ知っている物語や、有名な場面のみを知っている物語も多く、こつこつ押さえて行きたいと、最近思っています。
(2)簡単なあらすじ
江戸時代初期(17世紀半ば)、中国人の父と日本人の母を持ち、長崎で生まれた和藤内(鄭成功)が中国に渡り、明王朝再興に奮闘していく物語です。全五段。今回は、二段目の一部「虎狩りの段」、三段目の「楼門~獅子が城の段」が上演されました。よく上演される段のようです。
(3)歴史上の鄭成功について
長崎県の松浦史料博物館のリンクを貼っておきます。→ リンク
「国性爺」の由来や、鄭氏台湾の祖となったことも分かります。
なお、人形の鄭成功は「大団七」というかしらでした。鄭成功は、実際にも、血気盛んな性格だったようです。
■「千里が竹虎狩りの段」
中国に渡った和藤内は、義姉・錦祥女の夫・甘輝を味方につけようと、甘輝の居城・獅子が城を目指します。道中、竹藪の中で、虎に遭遇し虎狩りを行ないます。
冒頭に記載した鄭成功が虎を屈服させる絵は、この場面でした。虎は人形ではないのですが、ここの記載は伏せます。怖い虎というより、ユニークでコミカルな虎で、楽しむことが出来ました。
■「楼門の段」「甘輝館の段」「紅流しより獅子が城の段」
(1)恥の文化
和藤内と甘輝が、同盟を結ぶことが出来るかは、二人の女性に託されることになります。錦祥女(和藤内から見ると義姉、甘輝から見ると妻)と和藤内の母の二人です。
二人のやり取りの中に「恥」という言葉が何回か出て来ました。一か所だけ引用してみます。大義を果たさずして、他の人から誹りを受けることに対し、「恥」という概念が根底にあることを感じました。
(2)日本と中国の比較
日本と中国が舞台となっていることから、中国との比較のような形で、日本ついて記載されているところもあり、ここもいくつか引用してみます。
こうした点も、江戸時代に『国姓爺合戦』がブームとなった背景にあったのかもしれません。また、中国と日本の関係・とらえ方も、現代と江戸時代では異なったのではないでしょうか。ここはもう少し勉強したいです。
※他の部分でもあったので、後で床本をゆっくり読んで追記します。
(3)「紅流しより獅子が城の段」
太夫は竹本織太夫さん、三味線は鶴澤藤蔵さんでした。
あらすじの詳細は伏せますが、血気盛んな和藤内が獅子が城に乗り込み、最高に盛り上がります。これまで私はどちらかというと、詞章と人形に目が向くことが多かったのですが、今回は、太夫と三味線の力を感じました。
犠牲になる人、立ち上がる人、様々ですが、この部分で涙が出ました。
■最後に
長年謎だった『国性爺合戦』のストーリーを、本日知ることが出来てとても良かったです。現在、文楽でよく上演される部分は限られているようですが、図書館などで本を探し、全体をもっと知りたいと思いました。
以上です。