【舞台】金閣炎上
2023年5月17日(水)、新宿の紀伊國屋ホールで、劇団青年座の舞台『金閣炎上』を観て来ました。作=水上勉、演出=宮田慶子でした。メモを残します。5月21日(日)まで、上演しています。
■金閣寺の放火事件
金閣寺は室町幕府の三代将軍足利義満によって建立されました。時は飛びますが、1950年(昭和25年)7月2日未明、同寺の見習い僧侶であった林養賢によって放火され、消失したことがあります。
この昭和の事件を題材に書かれたのが、有名な三島由紀夫の小説『金閣寺』です。そして、水上勉も1979年にノンフィクション『金閣炎上』を著しています。(Wikipediaによると、水上勉の『五番町夕霧楼』も同事件を題材としているようです。)今回の舞台は、この水上勉のノンフィクションを、同氏が戯曲化したものです。
■舞台を観た感想
今回の舞台でも、終盤、主人公の養賢が金閣寺に火を放ちます。なぜ放火に至ったのか、放火に至る「動機」と、金閣というきらびやかな寺院が火に包まれるという「狂気」の二つが、大きなテーマのように私は個人的に思いました。
しかしながら、私は三島由紀夫の小説も途中までしか読んだことがなく、水上勉のノンフィクションに至ってはまだ手に取ったことがありません。そもそも、三島由紀夫の小説は『金閣寺』に限らず、「ここまで書くんだ」と思うことが多く、ドキドキしたり恥ずかしくなったりして、最後まで読み切れないことが多いのです。私は、もう少しテキストとの距離感の取り方を覚えた方が良いように思います。
今回の舞台では、(「金閣寺」が火に包まれるという)「美」に魅せられたというよりは、放火に至るまでの人生の記録(生育史)や、参拝でお金を取る「拝金主義」への批判など、事実を積み重ねた客観的な要素が多く盛り込まれていました。(特に、犯罪の)「動機」を考える場合、当人の突発的な感情と、客観的な状況を織り交ぜていくことが重要なのかもしれません。水上勉の原作にいつか当たってみたいと思うようになりました。
といいつつ、金閣寺が炎上する最後の場面が、どんな演出になるのか、私はクライマックスを楽しみにしていました。懲りていません。結論から述べますと、大変良かったです。
金閣寺の大掛かりなセットが出て来るのではなく、金色のパネル?に当たった光が、暗い会場に反射します。しばらくこの乱反射が続きましたが、とても幸せな時間でした。演出の素晴らしさを感じました。
■最後に
私はいつも、本を読むときは勿論ですが、舞台を観に行くときも一人が多いです。でも、今回の舞台は誰かと共有出来れば良かったなぁ、と思いました。
また、今回は仕事帰りの夜の部を鑑賞したのですが、私は仕事との気持ちの切り替えがあまり上手くないところがあり、意識が朦朧とした箇所もあって、もう一度落ち着いて鑑賞したいなぁ、と思いました。今回は日程的に難しそうですが、同作の上演があったら、また観てみたいです。
そして、三島の小説や水上のノンフィクションも手に取ってみなければ、と思います。
本日は以上です。