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理想の老後 トーヤ&ロバート・フリップ

一昨日、キング・クリムゾンの「レッド」発売50周年に触れ、「レッド」にまつわる50年前の私の思い出を書いた。


「がきデカ」50周年と、キングクリムゾン「RED」50周年が、同時に来て引き裂かれる自己
(10/27)


ついでに、その50年後のキング・クリムゾン、ロバート・フリップの現在の姿に触れておこう。

愛妻トーヤとの最新映像がこれだ。(ハロウィーンにちなんでデヴィッド・ボウイの「スケアリー・モンスター」を歌う二人)

Toyah & Robert's Sunday Lunch - SCARY MONSTERS (AND SUPER CREEPS)(2024/10/27)


動画を告知するロバート・フリップのツイート↓


ハロウィーン仮装でギターをひくロバート・フリップの画像は、一瞬「人間椅子」かと思った。

あの、哲学的で、衒学的で、求道的で、修行僧のようだったロバート・フリップの、この変わりようーー


スカしていた頃のロバート・フリップ ソロアルバム「エクスポージャー」(1979)


世界のプログレファンを脱力させている、トーヤとの定期的はっちゃけパフォーマンスは、コロナ期から始まって、もう4年続いている。

かなり見慣れてきたとはいえ、いまだ違和感が拭えない。

その「婦唱夫随」ぶりは、出たがりの若い奥さん(66歳)に、元音楽家のダンナ(78歳)が引きずられているようにも見えたし、イギリス版「加藤茶&綾菜」とかも言われた。


かつて、「思想家」ロバート・フリップの影響で、グルジェフとかの神秘主義にかぶれたことがある古いファンには、「なんだこれは」と目を覆いたくなる惨状かもしれない。

わたしのように、ジョン・ウェットンがフロントマンだった頃の、70年代の一番「男っぽい」クリムゾンのファンから見ても、信じられない光景だ。


たしかに、キング・クリムゾンは絶えず変貌し、ファンを裏切り続けるバンドだった。

ビートルズの「アビー・ロード」をヒットチャート1位から蹴落とした(と当時言われた)、ハードなデビューアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」の後、2枚目の「ポセイドンのめざめ」で急に抒情的に変貌し、早くも論争になっていた。

わたしは80年代以降のことはあまり知らないが、エイドリアン・ブリューがフロントマンで、ポップグループみたいになった時も、びっくりした。


でも、クリムゾン時代のどんな変わりようより、老後のフリップは変わっている。


最近も、こんなことがあった。

イギリスの社交ダンス番組で、トーヤがダンスを披露した。

審査員が彼女のダンスに「どんくさい」と厳しい評価を下したら、会場で立ち上がって盛んにブーを飛ばす男がいた。

審査員が「そこの若いの、座んなさい」と叱ったら、ブーイングしていたのはダンナのロバート・フリップだった、というのがニュースになっていた。


英ダンス番組で厳しい評価を下す審査員に、ひときわ大きな声でブーイングを送る男性 ロバート・フリップだった 出演者は彼の妻(AMASS  2024/10/6)


トーヤ&ロバートは、「バカップル」として、今やイギリスでも好意的に受け入れられているようだ。

何より、二人の幸せそうな姿には、誰も文句が言えない。


フリップは、あるインタビューで、

「クリムゾン時代の自分は、つねに戦っており、幸福ではなかった。今は幸福だ」

というようなことを言っていた。


トーヤの愛で、トロトロに「武装解除」され、幸せいっぱい、元気いっぱいのフリップ爺い。

戦っていた彼の姿が好きだった私は、一抹の寂しさを覚えるが、仕方ない。


こだわりから解放され、孤独とは無縁の、毎日パーティーのような楽しい老後を送っている二人。理想の老後に思えるし、うらやましいと思う。


わたしの世代の人なら、オノ・ヨーコの愛でメロメロになったジョン・レノンの姿が重なるかもしれない。

救いは、トーヤのパフォーマンスは、ヨーコほどひどくないことである。


トーヤ&ロバート・フリップの来歴については、noteにも詳しい記事がありますので、知りたい方はそちらをご参照ください。



<参考>


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