【Netflix】「ブレイクスルー」未解決事件を一気に解決した「遺伝子系譜学」とは?
<概要>
ブレイクスルー
The Breakthrough(2025)
リミテッドシリーズ
13+
ヒューマンドラマ
2人の命を奪った衝撃的な殺人事件。16年もの間未解決のこの事件に挑むのは捜査官と系譜学者のコンビ。このまま迷宮入りする前に、犯人を突き止めることはできるのか。
出演: Peter Eggers、マティアス・ノルドクヴィスト、Jessica Liedberg
(Netflix公式サイトより)
予告編(英語) *以下のような会話をしている。捜査官「通常おこなわれる捜査は全部試した。6千人から聴取したが犯人がわからない。助けてもらえないか」、系譜学者「犯人のDNAはあるのか?」、捜査官「ある」、系譜学者「それなら必ず解決できる」
<評価>
1月7日に世界公開された、スウェーデン製のNetflixオリジナル犯罪ドラマ。
約40分×4回のミニシリーズ。
地味ながら、各国の視聴率ベスト10に入ってきているようです。
スウェーデンの南部、リンシェーピングで2004年に起こった殺人事件。
路上で、8歳の男の子と56歳の女性が刺殺されました。
ナイフなど犯人の遺留品があり、目撃者もいたので、すぐに解決すると思われていたが、捜査は難航する。
16年後、捜査が打ち切られる直前に、捜査官は、ニュースで知ったある方法を試してみることにするーー
その方法が「ブレイクスルー」(突破口)になるわけで、それを書くとネタバレになるから書かないつもりだったけど、Netflixが公式サイトでネタバレしているから、ここでも書いちゃう。
遺伝子系譜学(genetic genealogy)、というものですね。
地味だけどユニークで興味深く、繊細なドラマ。100点満点で75点。
実話をもとにしているが、かなり創作も含むらしい。
最初は、なんか盛り上がらないドラマだなあ、スウェーデンは退屈な国だなあ、と思って見ていましたが、2話の終わりで「系譜学者」が出てきてから、俄然面白くなる。
遺伝子系譜学について、詳しく書くとそれこそネタバレだし、私は素人で正しく解説できる自信がないので、実際にドラマを見ていただくか、ネットで調べてちょーだい。
遺伝子系譜学は、30年以上未解決だったカリフォルニア州の連続強姦・殺人犯「黄金州の殺人鬼 golden state killer」を、この手法で2018年に逮捕にいたったことで注目されました。
ドラマの中では、家系図を作るために、教会の名簿を使っていました。日本には戸籍があるから、もっと容易ではないでしょうか(ただし教会の記録は戸籍より古い)。
このドラマでは、遺伝子系譜学を使った捜査は、個人情報保護の観点から違法では、と追求するジャーナリストが介入してきて、ドラマに知的な深みと緊張感をくわえています。
ただ、このドラマは、犯罪ドラマのバイオレンスやハラハラドキドキを期待すると、やや肩透かしになる。
監督のリサ・シーヴェが、「ダイレクト」誌のインタビューで、
「これは、恐ろしい出来事が起こったとき、前に進むために必要なお互いへの同情とケアについての物語です(It's a story about the compassion and care for one another that is needed to move on when terrible things happen.)」
と語っているとおり、いま流行りの「ケア」の思想による、お気持ち寄り添い型の、なんか「心優しい」ドラマになっています。
そこが、スウェーデンらしく、いかにも人権先進国づらして、スカしてるな、と思うか、心地よく思うかは、人それぞれでしょう。
でも、被害者や遺族の気持ちに寄り添うというドラマ、最近多いですね。「お気持ち」を押し付けられている感じがないではない。(同情するかどうかは、こっちが決めるんで、押し付けられるとウザい)
このドラマでは、演出と演技の繊細なさじ加減で、過度に重苦しくなることはなかったと思います。
とくに私は、「系譜学者」を演じたマティアス・ノルドクヴィスト(Mattias Nordkvist)の自然な演技がよかったと思いました。